オープンソースを中心としたWebインテグレーション事業などを展開する株式会社ワイズノット。今回は人材派遣会社の営業職、ITベンチャー企業を経て、2000年に同社を設立した嵐保憲さんに、インターネット業界で求められるエンジニア像をお聞きしました。 |
―― 御社の概要を簡単にご説明ください。 |
インターネットに事業領域を特化し、Webインテグレーション事業、自社ASP・ネットワーク事業、ビジネスコンサルティング事業の3つを主に展開しています。2000年12月に設立した若い会社です。 |
―― それぞれの事業の内容を教えてください。 |
Webインテグレーション事業は、インターネットの中でも、いわゆるオープンソースと言われている技術、例えばLinux、PHP、Java、PostgreSQLといったベンダーに依存しないソフトウェアを用いたシステムを開発しています。基幹系システムやEコマースのような大規模なものから、メール配信システムのような小規模なものまで、お客様のニーズに即したソリューションを提供しています。 |
―― 自社ASP・ネットワーク事業とビジネスコンサルティング事業は、具体的にはどのような内容ですか? |
自社ASP・ネットワーク事業は、自社で開発したソフトウェアのASP方式での提供と、いわゆるレンタルサーバー事業が主な内容です。この事業では2003年6月からイスラエルのゼンド・オープンソースシステムズ社と業務提携し、日本で独占的にPHPを用いたソリューションを展開しています。
またビジネスコンサルティング事業は、お客様と共同事業を立ち上げ、コンサルティングに対する対価を回収させていただくというものです。最近ではNTT情報開発さんと共同で、生協さん向けにECのシステムを企画・開発しました。また現在は、リコーさんと共同で、画像で画像を検索する「イメージ画像検索システム」をWebベースで展開するプロジェクトなどを進めています。 |
―― 会社設立までの経緯を教えてください。 |
実は私は中学生のころから、会社をつくりたいと思っていました。その後、インターネットの分野で事業を起こしたいと考えるようになり大学を中退、大手人材派遣会社で営業の仕事に5年ほど従事しました。私は社長になるために必要なのは「ヒト」と「お金」と「営業力」の3つだと思います。人材派遣会社の営業の仕事なら、そのうち「ヒト」と「営業」の二つの分野で、経験を積めると思ったのです。
派遣会社退職後は、IT系のベンチャー企業で1年間、お金まわりの仕事を経験してから、現在の会社を設立しました。 |
―― 御社は技術系の会社ですが、嵐さんご自身がエンジニアだったわけではないんですね。 |
はい。技術者ではありませんでした。ですからこの会社も、技術者と一緒に立ち上げたんです。彼が会社設立にノーと言えば、起業はやめようという計画で……。彼が技術面をカバーして、私が営業をやるという役割分担ですね。 |
―― 現在は従業員は何人ですか? |
20人くらいです。 |
―― どのような資質を持つ人材を採用しているのでしょうか? |
技術の会社ですから、当然、技術的にできる人材が必要です。それに加えて、向上心があり、自分から何かを仕事を創り上げていける人材を求めています。また最近では会社が組織化してきたこともあり、コミュニケーション能力が豊かで、組織での縦の連携、横の連携が上手にできるという資質も欠かせません。ただ、経営サイドから言えば、設立当初と今とでは、「採れる人材」が違いますね。 |
―― 「採れる人材」というのは? |
設立間もない企業の採用に応募するのは、たいていは若くて、自ら積極的にリスクテイクをしてくる人材です。組織内の連携とかコミュニケーションとかは関係なく、「とにかく技術だけをやりたい」という人が多いんです。逆に言うとベンチャーに飛び込んでくる人材は、そういう層しかいない。組織には馴染めないけど腕は立つとか……。設立当初は、何かととんがった人材を採用していたと思います。 |
―― どんな技術を持っている方を採用しているのでしょうか。 |
JavaやPHP、Linuxに精通していてる人材ですね。ただ技術力だけで採用することは、今はありません。実は先ほどもお話しましたが、設立当初は技術的にすごく自信や思い込みがあって、検証が済んでいないような先端技術を使いたがる人も多かったんです。すると当然アルファ版やベータ版を元に開発することになるので、あとでたくさんのバグが出たりする(笑)。そういうことには今までとても苦労しました。 |
―― 採用時にどんなところを見て、技術レベルを判断しているのですか。 |
とにかく技術の話を深く聞いていくのが基本です。本人は知っていると思っていても、突っ込んでいくとアラが出てくるんですね。その辺りを見て、どのレベルまで技術を知っているのかを判断しています。
もちろん実務経験も重視します。よく、小さなプロジェクトでHTMLから設計、プログラミング、データベースまで全部やったという人がいますが、全部をやっていると逆に、一つひとつの知識が浅くなる傾向があります。ですから設立当初は中途半端に幅広い知識を持っているよりは、一つの技術を深く知っている人材を採用していました。ただ現在は、すべての技術レベルが、バランスよく高い人を採用するようにしています。もちろん、そうした人材はなかなか見つかりませんが……。 |
―― 向上心やコミュニケーション能力といったヒューマンスキルは、どのようなところを見て判断しているのでしょうか。 |
まず向上心は、受身でなく、自分で考えて行動しているかどうかですね。「私はこの仕事がやりたいんです。本気なんです」と言う人が結構います。じゃあ「勉強してるの?」と聞くと、「これからです」と。そうじゃなくて、やりたいんだったらもう勉強を始めていてほしいんです。そういう話をして、気づいてくれる人だったら、再度応募してきたときにもう一度会うなり、チャンスを与えるようにしています。
インターネットはどんどん技術が新しくなるので、自分で常に勉強していかなければならないわけです。受身の姿勢で勉強して何とかなる業界ではありません。新しい技術の動向を見ながら、今自分が持っている技術も高めていかなければならないわけですから。それができないと、入社したとしても、2年後3年後に、仕事についていけなくなってしまうと思います。 |
―― コミュニケーション能力に関してはいかがですか? |
これまでに経験したプロジェクトで、自分がどんなポジションにいて、どう貢献して、どう助けてもらったのかを話してもらいます。圧迫面接ではありませんが、かなり細かく突っ込んで質問をしていくんです。「これはなに? これはどういうこと?」と……。コミュニケーション能力を発揮するには、話に矛盾がないことが大事です。逆に言えば、自分が思ったことを自分の口で矛盾なく伝えられるスキルがコミュニケーション能力だと思います。相手に同調して「こうですよ」という話し方をしている人は、まず矛盾が出てきます。 |
―― エンジニアにとって、コミュニケーション能力が大切なのは、なぜでしょうか? |
こういう言い方は悪いかもしれませんが、お客さんの要求するレベルがどんどん上がってきているんです。それをきちんと聞き取って、仕事で応えていくにはコミュニケーション能力の基礎がないと難しい。プロジェクトの失敗は、えてしてコミュニケーションの失敗に起因します。たとえばお客さんの要求した仕様をお互いによく理解していなかったとか、そういうコミュニケーション不足が失敗を招くのです。 |
―― 採用の際に、必ず聞く質問はありますか? |
ウチに来て何をやりたいのかは必ず聞きますね。答えは何でもいいんです。こういうシステムを作りたいって言う人もいれば、こういう事業を立ち上げたいと言う人もいます。要はどこに価値観を置いて仕事をしたいのかを見たいんですね。そこが会社と共通していれば、一緒にがんばれると思います。ただ、自分の技術を高めたいだけという価値観の人は、採用していません。自分中心主義で、技術先行の姿勢で働くと、お客様や一緒に働くメンバーと摩擦がおきてしまう。技術というのはあくまで手段ですから、技術を高めることだけが目的になっている人は採用しません。 |
―― エンジニアに対する教育はどのように実施していますか? |
基本的にはOJTです。「気付き」がないと人は成長できないんで、会社としてはその「気付き」の場をなるべく多くするようにしています。口で教えれば早いんですけど、あえて指摘はしない。我慢比べだと私は思っています。 |
―― 「気づき」の場とは、具体的にどんな機会なのでしょうか? |
プログラムを組んだときに、周りから見たらできていないのに、本人はできていると思っていることがあります。本当はその「できている」の度合い、つまり品質が問題なんですね。でもそれを口で指摘しても、本人はできていると思い込んでいるので、難しい。そこで納品後のバグとかを、自分自身で修正してもらうようにする。そうすることによって、本当はできていなかったことに気付いてくれると思っています。 |
―― エンジニアの仕事に対する評価は、どのような考え方で行っていますか? |
まずはお客様が一番最初に評価をして、次に一緒に働いているみんなが評価する。で、最後に私たち経営サイドが評価するという考え方です。品質を第一にして、私や上司ではなくお客さんの方を向いて仕事をしてほしいと思います。ウチの会社は品質については、一切妥協しないんです。バグはなくて当然という姿勢で仕事をする。だからすごく大変です。でも、業界全体の評価を高めていくためにも、品質重視の姿勢で商品を提供していかなければいけないと思っています。 |
―― 今後の採用計画はありますか? |
技術系の人は絶えず募集しています。この人なら、という人材がいれば常に採用するというスタンスですね。 |
―― 会社としての目標を教えてください。 |
設立からほぼ3年が経ち、ようやくスタートラインにたどりつけたと思っています。これからインターネットが、今以上に当たり前になっていく中で、品質を第一にできちんとした商品を提供していきたいですね。その上で、自分たちしかできないこと、他社のやらないことをやっていきたいと思います。 |
―― 最後にキャリアアップを目指すエンジニアに、アドバイスをお願いします。 |
20代では、経験が何より大切です。人がやらないこと、やりたがらないことを自ら進んでやるなど、苦労は買ってでもしてほしいですね。また若い技術者は仕事の表面しか見ない傾向があります。なぜ自分がこの仕事をやるのかを、きちんと考えた上で仕事に取り組んでください。その上で、これだけは他人に負けないという分野をつくっていくといいと思います。
30代ではバランス感覚やマネジメントの手法が大切になってきます。技術的な部分はできて当たり前になるので、数ある技術の中からどれを選択して、極めていくのか明確にしてほしいですね。
それと周囲の人間と自分を比較して、自分は「できる」と思うのは意味がありません。周囲との比較で満足するのではなく、もっともっと自分のやりたいことを突き詰めてほしい。自分だけが周囲から飛び抜けても、全然かまわないんです。周りに合わせれば自分も生きると考えるのではなく、自分が生きてこそ、周りが生きるという考えで、スキルアップに励んでほしいですね。 |
―― 本日はありがとうございました。 |
ありがとうございました。 |
 |
 |
株式会社ワイズノット
http://www.wiseknot.co.jp/ |
コミュニケーション・エンジニアリング・カンパニーとしてインターネットの事業領域に経営資源を特化、オープンソースを中心としたWEBインテグレーション事業を基軸として、自社ASP・ネットワーク事業の展開、及びコラボレーションによる企業価値増大の相乗効果が期待できる企業と成果報酬型(利益シェア)のインターネットに関する共同事業開発などを行っております。 |
|
|
 |