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国立病院機構・南横浜病院が廃止

 独立行政法人国立病院機構・南横浜病院(横浜市)が12月1日、廃止された。2004年に全国の国立病院・療養所が同機構に移行してから、赤字を理由に同機構の病院が廃止されるのは今回が初めて。新型インフルエンザへの対策が急がれる中、感染症の病原体を院外に拡散させない「陰圧病床」を持つ同病院の廃止について、全日本国立医療労働組合(全医労)は同日、「医療の継続を求める地元住民の声を無視し、廃止を強行したことは断じて容認できない」との声明を発表した。

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 同病院は、戦前の1937年に神奈川県立結核療養所として開院し、結核をはじめとする呼吸器疾患の治療や地域医療を担ってきた。同機構に移行した2004年には、結核病床147床と一般病床138床の6病棟285床で運営。その後、経営改善の一環として同機構が毎年1病棟ずつ閉鎖し、今年3月には結核病床49床と一般病床42床の2病棟91床にまで縮小していた。

 独立採算制の同機構では、「経営効率」を最優先した病院運営を展開。過去の債務が返済できない、または単独で運営費を確保できないなど、早急な経営改善が必要な病院に対し、病床規模や人員配置などを見直す「再生プラン」(経営改善計画)を策定するよう求めている。南横浜病院は今年3月にこれを提出したが、「経営改善を行うとしても、収支改善の見通しが立たない」と同機構が「達成不能」と判断し、4月に廃止を決めた。

 同病院の廃止について、全医労は「国民の医療に責任を持つべき同機構が経営責任を放棄し、地域医療から撤退することは認められない。医療崩壊が社会問題化している中、廃止を強行せず、国民医療の充実・強化に向けて役割を発揮すべき」と反対を表明。地元住民らが医療の継続を求める署名活動を展開し、8000人を超える署名を同機構へ提出したほか、神奈川県や横浜市も地域の医療提供体制に支障を来さないよう同機構に要請していた。
 同病院の職員全員の雇用は確保されたものの、医療の継続については病院の跡地利用を含め何も決まっていない。

新型インフル対策など課題
 結核医療の拠点となってきた同病院の廃止で、神奈川県内の結核医療の基準病床が不足する。県内の結核医療について、同機構は「県単位で神奈川病院(秦野市)に効率的に集約する」との方針を表明。しかし、全医労では、「日本の結核罹患率は諸外国と比べ依然として高い。強力な耐性菌の出現とともに、都市部の若年層の間で新たな広がりを見せる中、県都市部における結核など呼吸器疾患の治療に基幹的な役割を果たしてきた南横浜病院の廃止は深刻な影響を及ぼす」と指摘している。
 また、新型インフルなどの新たな感染症対策が求められる中、「陰圧病床」を持つ同病院の廃止について、国会議員も「南横浜病院の結核病床はすべて『陰圧病床』で、(新型インフルが世界的に大流行している)パンデミック時の医療体制を想定すると、国家的戦略に位置付けて維持すべき。廃止は、感染症対策に逆行する」(小池晃・共産党参院議員)、「今後、いろいろな感染症が発症するかもしれず、同病院を再建・強化して不測の事態に備えるべき」(福島みずほ・社民党参院議員)などと指摘している。しかし、同機構では、「厚生労働省の『新型インフルエンザ対策行動計画』を踏まえて対応する」などと述べるにとどまっており、今後、新型インフルなど感染症に対する具体的な対応が問われそうだ。


更新:2008/12/01 18:32   キャリアブレイン

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