kajougenron : hiroki azuma blog
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日本SF大賞予備選考
投稿日時:2005年10月03日03:12
こんばんは。原稿そのほかでぎりぎりまで来ている東です。
さて、あまり知られていませんが、僕は昨年より日本SF大賞の予備選考委員なるものを拝命しています。最終選考の候補作を絞り込むために、推薦作を探してきて日本SF作家クラブ事務局に報告する役割です。
今年は僕は以下の4作を推しました。作家クラブ会長より許可が得られましたので、公開します。みなさんも、よかったら読んでみてください。
それにしても、山田正紀氏より委員就任の打診を受けたときには、「ライトノベルやアニメやゲームから過激に作品を選んできていい」と言われてすいぶん勢い込んだものですが、結果として今年はえらく穏当なものになっています。というより、いつのまにか新城カズマや桜坂洋の名前が普通に選考対象になるような時代になってしまって、僕の選考基準が追い越されているのですね。来年こそは、あっと驚くような作品を「SF」だと言い張ってみたいものです。
なお、以下に記された推薦理由は一部ネタバレを含んでいます。未読のみなさんはお気をつけください。
■
(以下日本SF作家クラブに提出した原稿)
推薦作は4つです。
推薦の優先度が高い順に並べています。
・『サマー/タイム/トラベラー』新城カズマ
・ハヤカワ文庫JA
青春小説、あるいはタイムパラドックスSFのかたちをとって記された、「大きな物語の喪失」についての物語。ヒロインの悠有は、現代社会における「失われた未来」を象徴する存在(というのが評者の解釈)。随所に挿入される先行SFへの言及や社会学的、経済学的なペダントリーも気が効いている。小品ではあるが、作者の旧作および今後の可能性にかけて、ここはぜひ受賞を検討したい。
・『象られた力』飛浩隆
・ハヤカワ文庫JA
独特の言語感覚と数学的とも言える美学が生み出した傑作群。情報がそのまま物理的世界を変容させていく感覚は、イーガンにも通じる。短編集ではあるが、『グラン・ヴァカンス』のヴィジョンと併せ大賞受賞に値する。
・『All you need is kill』桜坂洋
・集英社スーパーダッシュ文庫
リセットが効かない人生=物語と、リセットが効くゲームの関係をミリタリーSFに仕上げた実験的で思弁的な(と評者は感じた)作品。アイデアと物語展開の鋭さはすばらしい。作者はほかにもゲーム的感性を導入した作品をいくつか発表している。短い作品なので大賞受賞には無理があるかもしれないが、候補作として検討したい。
・『デカルトの密室』瀬名秀明
・新潮社
ロボットSFのかたちをとって記された、意識の本性についての思弁小説。ネットワークに拡散した思考が、「自意識」になるため殺人という特異点を必要とするという中核的なアイデアは、評者が専門としているフランス現代思想とも近いものを覚え興味深い。新本格の作風が取り込まれており、ハイブリッドなエンターテインメントになっている点も評価できる。作者はすでにいちどSF大賞を受賞しているが、候補作には残したい。
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