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2008年12月1日

 同時テロが起きたとき、インドの商都ムンバイとはどこだろう、と戸惑い、長い間、「ボンベイ」と呼ばれていた都市だと聞いて合点した

英国統治時代の名を、前世紀末になって現地語の呼称に変えたという経緯があった。「カルカッタ」という名で知られた都市も、同じ理由でコルカタに改められている

旧町名復活のように、改称で土地に対する誇りと愛着が強まり、住む人が仲良くなるのなら、結構な話である。だが、現地からの報道によると、ムンバイでのテロの背景には、極端な民族主義の台頭や宗派対立の激化があるという。せっかくの改称もむなしく思える惨劇である

教科書で習った名が変わったのは、インドの都市だけではない。ビルマの国も軍事政権の誕生でミャンマーに名が変わり、首都だったラングーンもヤンゴンに改まった。変動著しいアジアである。融和や繁栄を願って名を改めるのだろうが、逆に政情不安を招くことも少なくない

ムンバイは、人々の信仰を集める神の名に由来する、とも言われる。おぞましい流血が起きて、そんなことも知る。つらい「学習」である。


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