NHKが1日からテレビ番組をネット配信する「NHKオンデマンド」を始める。見逃した番組を後で見たり、過去の番組を自由に選んで見られるという。テレビはこれまで番組表に従って見るしかなかった。テレビの新しい視聴スタイルを提供する試みとして歓迎したい。
オンデマンドで見られるのは大河ドラマなど過去1週間の番組、ニュース、それにNHKアーカイブスと呼ばれる過去の放送作品だ。料金は単品とセットの値段があり、1作品の単価は税別で100―300円。月額1400円払えば、過去1週間分の番組を好きな時に見られるという。
番組を視聴するには光回線などの高速回線とパソコンもしくは通信のできるデジタルテレビが要る。従来のパソコン向けの動画配信と異なり、映像をハイビジョンのテレビ画面で見られるのが特徴だ。政府も新サービスを後押ししており、今年4月の放送法改正で実現した。
NHKが新サービスを始めるのは、放送のデジタル化で先行した欧米やアジアの国では見逃し番組の視聴が一般的となっているためだ。さらにNHKの膨大な映像資産をネットに流すことで、国民が作品を見られる機会を増やし、新たな収入源にもしていこうという考えだ。
課題は受信料で成り立つ公共放送として番組の二次利用に伴うコストをどう賄っていくかである。有料にしたのは、ネット配信に必要なシステムの費用や実演家など権利者への支払いが新たに発生するためだ。視聴者間の公平性を保つ意味でもあえて有料で始めることにした。
NHKの新サービスは3年前に話題となった「通信と放送の融合」を促す試みともいえる。フジテレビジョンも11月から一部番組のネット配信を始めた。最近は自分で内容を選べる動画共有サイトの人気が高い。放送局もよい番組を視聴者が時間にとらわれずに選択できる仕組みを提供していくことができる。
さらに番組のネット配信は高速通信インフラの普及にも役立つ。光回線の契約数は1300万件を超えたが、さらに拡大するには起爆剤が要る。その意味で新サービスはテレビに関心の高い高齢者世帯へのネットの普及を促すことにもなろう。