政府税制調査会が28日、09年度の税制改正に関する答申を麻生太郎首相に提出した。基幹税といわれる個人所得税や法人税、消費税には全く言及していない。政府・与党が策定を進めている税財政の中期プログラムやこれからの与党税調に期待するというのだ。
政府税調は昨年11月、「抜本的な税制改革に向けた基本的考え方」と題する答申をまとめた。中期を見据えたものだ。09年度改正でも、そこでの提言事項を、大きな流れの中で実施していくことが重要との判断だという。
それでいいのか。
基幹税改正への取り組みは毎回必要不可欠だ。それに加えて、問題含みの定額給付金や住宅ローン減税拡大の評価も避けている。これでは、与党の政策を全面的に追認したうえで、税制の制度設計は丸投げということだ。税制のあるべき姿を議論する審議会として、役割を果たしていないと言わざるを得ない。
毎年度の税制改正は政府・与党が最終的に決定していることは事実だ。それに対して、大所高所からの厳しい提言や意見を申し述べるのが政府税調である。首相の諮問機関と財政制度等審議会などよりも高い位置付けを与えられているのもそのためだ。
米国のサブプライム住宅ローンの焦げ付き問題などから始まった世界的な金融・経済危機は日本の経済にも重大な影響を及ぼしつつある。税財政面でも08年度で6兆円を超す税収減が避けられそうにないなど、大きな転機を迎えている。
税制改正という以上、こうした厳しさの増している現状を踏まえ、財政再建のみならず、国民の安心にもかなう意見具申を行わなければならない。時代状況を的確に認識することが求められているのだ。
もちろん、政府・与党は中期プログラムを国民が十分納得できるものにしなければならない。そこでは消費税率の引き上げ幅や引き上げ時期が焦点になる。
この点は国民の最大関心事である。基本的な考え方は昨年度の答申で明らかにしているとはいえ、中期的な視点から消費税や所得税をどう位置付けるのか、今回も国民にわかりやすく示すべきだろう。
定額給付金は一般会計からの歳出行為として設計されているものの、昨年度の税調で議論された給付つき税額控除(税制を活用した給付措置)に似たものだ。税制による所得再分配機能を高めることや低所得者支援を考えるためにも、税調として評価しておくべきテーマである。
安定財源確保が求められている基礎年金の国庫負担比率引き上げでも、明確な物言いをしていない。財政投融資特別会計の準備金流用という小手先の操作が行われようとしている時に、傍観は許されない。
物言わぬ政府税調ならいらない。
毎日新聞 2008年12月1日 東京朝刊