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海賊:ソマリア周辺、巨大タンカーも被害 手焼く国際社会 高収益に「志願者」絶えず

 【カイロ高橋宗男】米海軍第5艦隊報道官は17日、アフリカ東部ケニア沖で、サウジアラビア国営石油会社サウジ・アラムコの大型タンカーが15日に海賊に乗っ取られたことを明らかにした。周辺海域では海賊被害が頻発しているが、同タンカーは最大規模。北大西洋条約機構(NATO)や米露、欧州連合(EU)はソマリア周辺海域の海賊対策に本腰を入れ始めたが、海賊の勢いは衰えていない。

 AP通信によると、襲撃されたタンカーは「シリウス・スター号」(リベリア船籍)。全長約330メートルと空母並みだ。大型タンカーの海賊被害は極めてまれ。乗員は既に解放されたとの報道もある。

 ケニア沖を含むソマリア周辺海域では14、15の両日、日本人船長の中国マグロ漁船や日本企業が管理する貨物船も相次いで乗っ取られた。国際海事局によると今年に入りソマリア沖で発生した海賊行為は88件(16日現在)で、既に昨年(31件)の2・8倍に上る。英王立国際問題研究所は、今年だけで総額3000万ドル(約29億円)以上の身代金が海賊にわたったとみている。

 海賊らは自らの違法行為を「外国漁船の違法操業」に対する自衛と主張するが、実際には無政府状態のソマリア情勢を逆手に取った「ローリスク、ハイリターンの有力ビジネス」と化しているのが実情だ。米紙ロサンゼルス・タイムズ(10月31日付)は、タイの船を乗っ取った海賊の分け前は、実行部隊1人3万ドル(約290万円)、陸の警備部隊1人2万ドル(約190万円)と伝えた。高級車を乗り回し、複数の妻を持つ海賊に貧しい若者たちがあこがれ、志願者が後を絶たないという。

 海賊行為は元漁師らの「零細経営」だったが、この数年で分業化。周辺海域を熟知する元漁師らを「頭脳」役に、武装勢力が幅を利かすようになった。

 海賊は衛星携帯電話やGPS(全地球測位システム)を駆使して小型船数隻で出撃し、摘発に遭うと複雑な環礁地帯へ逃げ込む手口で追跡をかわしている。拠点はソマリア内の自治州プントランドの沿岸一帯に散在している。被害はイエメンとソマリアの間にあるアデン湾に集中しているが、ケニア沖などにも拡大している。

毎日新聞 2008年11月18日 東京朝刊

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