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Contre Champ

おしらせ

「テルテルポーズ」第二号に映画日記を寄稿しました(約二万字の書き下ろし)。吉祥寺のブックストア「百年」、下北沢の古本屋ほん吉、HEADZオンラインショップでも購入できます(B5サイズのクリアホルダー入り。500円)。増刷はされませんので、欲しい方はお早めに!

渋谷BRAINZで赤坂大輔さんの講義が月イチで行われています!タイトルは「超現代映画論」。蓮實以後の世代で最も重要な映画批評家の講義ゆえ、とても中身の濃ゆーいものが聴けます。映画を見る(撮る/書く)ことに関心のある方は要チェック!

「映画芸術425号 特集・土本典昭の映画史」(責任編集:土田環、中村大吾)は「一家に一冊」の大充実の内容です。皆さん買いましょう。

「月刊ヤマガタ」がUPLINK FACTORYで始まりました。皆さんぜひ足をお運び下さい。

『コロッサル・ユース』のパンフにペドロ・コスタ全作品解説を寄稿しました。ご鑑賞のお供にどうぞ。

愛育社から発売中の『間章クロニクル』は、『AA』(青山真治)鑑賞の手引きとして最適な好著です。予習・復習にどうぞ。

「flowerwild」では随時、新作評が更新されています。

2008-11-29 連戦連敗

a)『愛の記念に』(モーリス・ピアラ)◎

どうも最近、ここ数年間の腹立たしい記憶を反芻しては、さらに腹を立てている始末なので、この際、ここにぶちまけてすっきりすることにする(A型なもんで)。

拙作『吉野葛』は映画美学校映画祭2003@アテネフランセにて初上映されたが、その時、賛辞を送ってくれたのは友人の赤尾くん(彼の撮った『マッチ売りの少女』は素晴らしい小品)だけで、彼とはその時、初対面だったのだが、そこから交友が始まった。それはさておき、拙作の上映のすぐ後に高橋洋と村上賢司のトークショーがあったのだが、その時二人はつい今しがた見たばかりのこの作品について「ストローブ=ユイレって見たことないんだけど、こんな感じなんでしょ?」とか「『路地へ』(青山真治)みたいに、じーっと何かを見つめていればいいことがあると思っているような作品」とか「これ見れば、もう吉野に行かなくていいよね(笑)」とかホントにふざけたことを抜かしてくれた(高橋さんとは今でも個人的に交流があるし、「脚本家」としても認めているが*1、村上さんとは付き合いもないし、作家としても認めていない)。これが『路地へ』の亜流ではなく、明確に反『路地へ』として撮られた作品であることは一目瞭然だと思っていたのだが、どうやらそうではなかったようだ。審査員全員がストローブ=ユイレの作品を一本も見たことがないという「恐るべき野蛮状態」の中で審査が行われ(もちろん拙作はストローブ=ユイレに影響を受けたものだが、コスタの作品がそうであるように単なる模倣ではない)、彼らは愚にもつかない作品にスカラシップを与えた(この中で私が唯一認めているのは、瀬田なつきと遠山智子の二本だけ)。この辺りの事情は以下に詳しい(またここでのやりとりは当時見た観客の大方の反応として平均的なものだと思われる)。

http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/3113/1060167837/l50

日本最高の知性と感性の持ち主であるお二方に救われたからよいようなものの、危うく潰されかけるところであった。この時受けた屈辱はもう時効なので許すけど忘れません。ここに両氏の文章を全文引用したいところだが、私信なので止めておく。なお要求があればいつでも試写をする用意があるので、緊急講師会議でも開いて反省して下さい(笑)。

そんな私がこれまで励みにしてきたのは、ゴダールやストローブ=ユイレの例を引き合いに出すまでもなく「映画史とは映画学校の落ちこぼれと不合格者によって作られてきた」という事実である(このことについてはダニエル・シュミットの感動的な証言を参考にされたし。なおMOMAのファスビンダー展のカタログにはその時のファスビンダーの答案が収められている)*2。だからもし映画学校に在籍していて、周囲から理解されない人がいたら、自分は才能がないと諦めずに頑張ってほしい(もっともそのためには古今東西の傑作を浴びるほど見て審美眼を磨き、その基準を自分の作品にも厳しく適用するというのが必要最低条件だが)。ついでにいうとB学校はこの十年間にごく少数の例外(歴代ベストはid:hj3s-kzu:20051003を参照のこと)を除くと愚にもつかない作品を毎年数多く生産しているが(特にここ数年の質の凋落ぶりは激しい)*3、このことから鑑みるに、やはり作品選定の過程でジャッジする側に問題があるのではなかろうかと思う(他の映画学校に比べて相対的にマシだと思われるB学校ですらこうである)。この点については危惧を感じているので、リクエストがあれば「映画を見る」(これが全ての基礎)ことについて映画批評家としての立場から講義してもよい(これも母校愛)。

まあ私のことなんかホントどうでもいいのだが、私なぞより遥かに才能において上回る瀬田なつきの『彼方からの手紙』(id:hj3s-kzu:20080330id:hj3s-kzu:20080526)が今に到るまで不当に無視されつづけているという事実には「映画批評家」として憤りを覚えずにはいられない。*4この作品を正当に評価したのは、私の知る限り、映画批評家から足を洗って今は音楽批評家として活躍されている佐々木敦ただ一人である*5。先に東京フィルメックスで上映された『PASSION』(濱口竜介)も決して悪い作品ではないし、むしろかなり水準の高い作品だとは思うのだが(この作品についての私の意見はid:hj3s-kzu:20080529に述べた)、『彼方からの手紙』とは比較にならない(そのことは当人たちが一番よく分かっているはず)。なので『PASSION』を「傑作」とか言って持ち上げている「映画批評家」たちに対しては「お前ら、『彼方からの手紙』を見た上で本気でそんなこと言っているの?」と問いただしたい。もし見た上でそんなことを言っているなら見識がなさすぎだし、見ていないなら怠惰すぎる。いずれにしても批評家失格。こういう狭いセクト政治でしか発言できない馬鹿どもは映画についてものを書く資格を欠いているので、今すぐ筆を折って廃業するべきだと言っておく。

さて言いたいことも書いてすっきりしたことだし、『吉野葛』再上映に向けてまずは活動しようと思う。そして愛する『彼方からの手紙』の再評価のための戦いを!同志諸君、ご協力よろしく。

(追伸)来たるべき有事の際、国外逃亡を図るべく(笑)、英語学習を最近再開したのだが、主に通勤電車の中で児童文学を辞書なしに原書で読むということをしている。ここ二、三ヶ月はロアルド・ダールばかり読んでいるのだが、『チャーリー』二部作(ティム・バートンの作品の原作もいいが、続編はもっと面白い)や『マチルダ』がよかった。特に『マチルダ』は素晴らしく(ああ、ミス・ハニーの魅力的なことといったら!)、最後の方は読んでいて大泣きしそうになった(電車の中だったので我慢したけど)。これは「教育」に携わる人間全てが読むべき作品だと思う(翻訳も出ている)。そして自分の教えている生徒の潜在的な能力を自分はキチンと評価できているだろうかと反省してみて欲しい。

(追記)「さすがに書き過ぎでは?業界から干されますよ」と友人に心配されたが、もともと「業界人」じゃないし、根がパンクスなもんで。

(とはいえ読み返してみたら結構アレなんで一部修正・笑)

夕映え少女 デラックス版

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快読100万語!ペーパーバックへの道 (ちくま学芸文庫)

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Matilda

Matilda

*1:映画作家としては『夜は千の目を持つ』など自主時代の作品は素晴らしいと思うが、『ソドムの市』、『狂気の海』は駄目だと思う。ただし『アメリカ刑事』は素晴らしい。

*2http://www.flowerwild.net/2006/08/2006-08-08_120128.php

*3:例えばid:hj3s-kzu:20060909id:hj3s-kzu:20070913id:hj3s-kzu:20080913を参照のこと。

*4:『夕映え少女』の中で瀬田なつきが監督した「むすめごころ」(id:hj3s-kzu:20080208)を見た堀禎一が電話をかけてきて「ワンショット見れば彼女が天才だって分かるし、シャッポを脱ぐしかないだろ!」と興奮して私に伝えてくれた。全く同感。

*5:あとチェルフィッチュの岡田利規も褒めていた。http://chelfitsch.exblog.jp/9072720/