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【コラム】2008年型「金集め運動」

 1997年のある日、ソウル地検の李鍾旺(イ・ジョンワン)部長検事は「検察ファミリー金(きん)集め運動」を始める理由として、「金を集め、ドルに換えるのはドルを集めるのと同じ効果を生む」と説明した。数日後、同地検の検事や捜査官、女子職員らは自分や家族が保有していた金の指輪や金のネックレスを持ち寄った。庁舎1階の朝興銀行(現新韓銀行)で金をドルに換金したところ、金額は数億ウォン(数千万円)に達した。これは当時、一部メディアが短いニュースとして報じている。

 ソウル地検(現ソウル中央地検)の金集め運動はその後、全国の検察庁に広がり、ひいては海外同胞を含む全国民へと拡大した。1997年12月から翌年の2月までに349万人が参加し、金226トンが集まった。金は換金され、その額は21億2300万ドル(現在のレートで約2020億円、以下同じ)に達した。ちなみに97年末の韓国の外貨準備高は39億ドル(約3700億円)だった。

 その後、大検察庁捜査企画官やサムスン・グループの法務室長などを務めた李鍾旺弁護士は、「記者らの前で力説した当時、あのような大変な結果が生まれるとは思わなかった」と振り返った。

 ウォンの対ドル相場が10年8カ月ぶりの安値を更新した最近、香港の同胞向け情報誌に2週連続で掲載された韓国系銀行香港支店の広告が目を引いた。

 「10年前の金集め運動を覚えていますか。今もう一度立ち上がる時です」

 この銀行が示した「金融危機克服」の対策は二つ。一つは韓国への外貨送金だ。相場が下落した際に外貨を送金すると、韓国が外貨を調達し相場を高める効果がある。つまり、国家への貢献と同時に金も稼げるというわけ。もっともこれは、相場が下落するたびに世界各地の同胞たちが行っていることで、特に目新しいことではない。

 もう一つは、アイデアが奇抜だ。海外の同胞らが韓国系銀行に預金や口座を開設すること。韓国系銀行に外貨を預金すると、金利も優遇されるという。現在も韓国系銀行は、外資系銀行に比べ金利が高いが、さらに高くしてくれるということだ。当然ではあるが、香港のほかの韓国系銀行から預金を移し変える場合は、外貨調達効果が全くないため金利の優遇措置はない。

 この広告を出した後、同銀行の支店は外貨による預金額が43%増加した。一日平均3500万ドル(約33億円)から5000万ドル(約47億円)に増加したのだ。同銀行ばかりでなく、香港のほかの韓国系銀行も外貨による預金が急増し、送金や預金の問い合わせが大幅に増えている。

 「当支店に外貨を預金すると、ドル不足の際に韓国の本店にドルを送金する必要がなく、当支店のドルが余ったらソウルに送金すればよいのです。結局、韓国に外貨を送金するのと同じ効果があります」といった説明をすると、その場で口座を開設する同胞らも多い。外資系銀行に預けられた1万ドル(約95万円)は韓国とは何のかかわりもないが、その1万ドルを韓国系銀行に預け入れると韓国の助けになり、個人的に利子も高く付くため参加率が高くなるということ。国家への貢献と同時に金も稼げるわけだ。

 現在、世界に散らばる韓国人は約700万人。もし同胞一人当たり1000ドル(約9万5000円)を韓国系銀行に預け入れると、70億ドル(約6700億円)の外貨調達効果がある。世界各地の同胞や企業家が力を合わせれば、10年前の金集め運動よりも大きな効果を挙げることができる。

香港=李恒洙(イ・ハンス)特派員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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