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【主張】被害者参加制度 課題克服し公正な裁判に
事件の被害者・遺族が刑事裁判で直接、被告に質問したり、検察官の求刑に意見を述べたりできる「被害者参加制度」が12月から始まる。
半年後に迫った「裁判員制度」とともに、日本の刑事裁判を大きく変える制度だけに、どう定着していくかを見守りたい。
これまでの刑事裁判では、被害者・遺族は原則として裁判には参加できず、傍聴人席で裁判官や検察官、弁護士の3者のやりとりを黙って聞くだけだった。
しかし、犯罪被害者の権利拡充を求める遺族らの要望で、政府は平成17年に犯罪被害者を支援する「基本計画」を決定し、これにともなって刑事訴訟法などを改正、被害者・遺族が裁判に直接関与できるようにした。少年法も少年審判の傍聴を認めるよう改正された(12月15日施行)。
遺族らの立場にすれば当然で、司法改革の面で大きな前進だ。
参加制度の対象となるのは、殺人や傷害致死、誘拐、強姦(ごうかん)、交通死傷事故など重罰をともなう事件で、ほぼ裁判員制度の対象と同一である。
被害者・遺族が希望し、裁判所が認めれば検察官の隣に座って被告に直接質問することが可能となり、検察官の求刑に対して「もっと重くすべきだ」などと意見も述べられる。また、弁護士を付けることも認められている。
この制度は、12月1日以降に起訴された事件に適用される。起訴後、公判開始まで準備が必要なことから、実際に制度が動き出すのは早くても年明けになる。
最大の課題は被害者・遺族の参加が冷静かつ公平であるべき審理へ及ぼす影響だ。被害者は被告に激しい憎悪などを抱いている。興奮して感情的な意見を述べたり、法廷が“報復の場”になったりすることを懸念する声もある。
来年5月21日からは裁判員制度がスタートする。この制度に犯罪被害者・遺族が加わるケースも多々あろう。被害者の感情的な意見などが裁判員の量刑判断にどう影響するのか。量刑を大きく左右するようだと、公正な裁判といえなくなる恐れもある。
そのためにも裁判長は厳格で的確な訴訟指揮を行い、検察官や被害者の弁護士、被害者自身も公正な裁判実現に向け、互いに協力し合うことが肝要だ。問題点や課題が出てきた場合は、迅速に対応することも求めたい。