市民が刑事裁判に加わる裁判員制度が来年5月から始まるのに向けて、裁判員の候補者に選ばれた約29万5千人に対する通知が29日、届き始めた。最高裁が東京・赤坂に設けたコールセンターには、通知を受け取った候補者から約870件の電話が寄せられた。「どんな場合に裁判員を辞退できるか」という問い合わせが多かった。
1年間を通じての裁判員候補者はその前の年の後半に一度に選ばれる。来年分の通知は東京都心から28日に一斉発送されたため、大半の候補者には29日か、週明けの12月1日に届く予定だ。12月上旬を過ぎても自宅に通知が届かなかった人は、09年は裁判員に選ばれることはない。
コールセンターには通知到着初日の29日だけで約870件の電話があり、約830件が質問や相談だった。このうち、半数は辞退が認められる条件についての内容。通知に明記された「70歳以上」「重い病気・けが」といった辞退事由について、「いつの時点の年齢か」「どの程度の重さか」といった問い合わせもあった。また、同封された調査票への答え方、裁判員制度の趣旨、裁判員の選ばれ方に関する質問も多かった。
残りの約40件は「やりたくないから、名簿から名前を消して欲しい」といった苦情だった。
コールセンターの電話番号は一般に公表しておらず、通知に同封された案内に記しているだけだ。
最高裁によると、首都圏からの問い合わせが多かったが、最初の電話は北九州市の女性から午前10時20分ごろにかかってきた。裁判員制度の趣旨に関する質問だった。北海道からも電話があった。
コールセンターはこの日、約50人のオペレーターで対応したが、通知到着のピークを迎える週明けには、人数を約150人に増やす予定。最高裁の担当者は「市民が安心して裁判員として参加するために、一つひとつの不安や疑問に丁寧に答える必要がある。29日の段階では想定の範囲内の問い合わせで、大きな混乱はない」と話している。(中井大助)