「詩のボクシング」をご存じだろうか。リングに見立てたステージ上で、交互に自作の詩を朗読し、ジャッジの判定で勝敗を決める。
朗読者の声と言葉のパンチが、どれだけ聴き手の心を打ったかを競う「言葉の格闘技」である。一度審査員を務めたことがあるが、鋭く突き刺さる生身の言葉、即興の力に圧倒されたのを思い出す。
昨日、「国会」のリングに上がったのは、麻生太郎首相と民主党の小沢一郎代表だ。初顔合わせの党首討論は、さしずめ「政治のボクシング」といえようか。
小沢氏は麻生首相が第二次補正予算案の今国会提出見送りを決めた問題を核に、「国民に対する背信行為」と追及。麻生批判のボルテージを上げた。さらに衆院解散の断行を迫る攻勢に、「話術」を売り物とする麻生氏は防戦一方。
このところ、失言や迷走発言などの“舌禍”で窮地に立つ麻生氏。失地回復のチャンスと意気込んだものの、小沢氏からは「綸言(りんげん)汗のごとし。首相の言葉は重い。発言に責任をもつべき」とくぎを刺される場面も。
政策論争を展開するには時間が短すぎ、双方の主張は最後まで相いれなかった。小沢氏はパンチ力にやや欠けたが、麻生氏の言葉には心に響くものが感じられなかった。審査員の国民は果たしてどちらに軍配を上げただろうか。