「久米宏」ってヤツは！？

【PJ　2008年11月30日】− 先日亡くなった筑紫哲也氏は、新聞記者、雑誌編集、テレビのニュースキャスターとメディアの道を歩いて来た人だった。それぞれのエポックメーキングをマークした人でもあった。一方、その筑紫氏と対抗していた男が、久米宏氏である。アナウンサー出身で、ラジオ、テレビの司会者、そして、ニュースキャスターとして、2004年、テレビ朝日の「NEWS STATION」を18年半務めて止める。そして、ラジオで「久米宏ラジオなんですけど」とテレビで「久米宏テレビってヤツは」で復活している。

　ニュースキャスターの久米氏は、テクニカルにはアナウンサー出身であり、そのややハイトーンの声、やや早口であるが、ハッキリとした口調、興奮するとマシンガンの如く言葉が飛び出して来る。しかし結構ストラテジックに計算した上で言葉をつなぐ、そのシャベリには、久米宏ならではのリズムがある。それが、視聴者にとっては、小気味よく響くのである。

　しかし、物事に興味好きな事が、軽々しいミーハーさがあるのも事実で、これが親しみやすさを醸し出している。人間的には、あまり浮き沈みのある人生ではない、マジメな青年タイプだ。だから、こと許せないニュースに関しては、突っ込み過ぎてラインオーバーした事もしばしばだ。

　そんな久米宏は「NEWS STATION」でその抜群のリズム感で、その個性的な話術を完成させていた。特に、大物政治家とか、スポーツ選手を呼んだ時にその手腕が発揮される、相手の何か違う面を、自分をぶつける事で引き出すのだ。しかしキャスターを演じてる本人、久米宏は、日々にそのネタ切れ状況を呈し始めていた。これ以上新しい自分、視聴率を毎日意識する事に疲れてしまったのだ。

　筑紫哲也とは人間的にも対局にあるユニークなニュースキャスターだったと言える。ほんとうは、せっかちで気が小さいのかもしれないがだからこそ、計算したり、とぼけたり、冗談言ったり、マジになったりするのが、テレビというメディアは隠しなく全部見えてしまうのだ。それを居直ってやっている久米宏でもあった。

　テレビというメディアは、そのカメラのレンズを通して、久米宏のストリップショーを見るわけだ。今現在、10月22日からTBS系列で毎週水曜日「久米宏テレビってヤツは」が始まった。八木亜希子をフォローに押さえて、報道トーク番組で、毎回、ジャンルの違うゲストコメンテーターを入れ替えたり、なにやら、ゴチャゴチャ番組の様相はあるが、目玉に大物ゲストを出演させ、そのリアルな個性を引き出そうとしている。

　「こんな時代だから忘れてはいけないもの」「粗末に扱ってはいけないもの」をこの高速で動く消費者社会に「失ってはならない真実」を見つけたいと、氾濫（はんらん）する「情報」に独自の視点を見つけたいと、久米宏は意気込んでいる。

　今まで、目玉で市川海老蔵、綾戸智恵、東国原英夫、堀江貴文そして現役キャバクラ嬢、次回は、田中眞紀子（予定）が登場する。常連として、姜尚中、上杉隆、森永卓郎、杉田かおる等の個性派コメンテーターが並ぶ。おしゃべり仲間である。そのトークの絡みは今ひとつスムーズとは言えないが、キャスター時代のように突っ込んで行かない、大人になった久米宏がいる。しかしそれがいまいち、個性が発揮出来ずに中途半端の感じもする。

　番組の終わった後に、ネットメディアのサイト「テレヤツ.jp」での動画に番組終了直後に登場して「久米宏のつぶやき」をしゃべっている。裏話みたいなものだが、双方向性を取り入れ、「みんなの書き込みレポート」もやっている。もう一人の久米宏を期待したいのだが、今しばらくはの感もある。もっとテレビに登場していない、久米宏をオタオタさせるゲストが登場してくる事を期待したい。テレビのフレームをぶち破るプログラムを見たいものだ。

「ヒッコミの久米宏より、デシャバリの久米宏」

【了】

■関連資料
●「テレヤツ.jp」
http://www.mbs.jp/tele-yatsu/

ＰＪニュース.net
http://blog.livedoor.jp/stone999/
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パブリック・ジャーナリスト　池野 徹【 千葉県 】
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