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2008-11-28 20:18:41 stanford2008の投稿

桜井淳所長から京大原子炉実験所のH先生への手紙-原発設置県は現実的災害評価と退避訓練を実施せよ-

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H先生



私は、主に、炉物理の研究と原子力発電所の事故・故障分析の研究を実施してきましたので、原子力発電所の災害評価については、必要最小限の知識、すなわち、著書『原発システム安全論』をまとめるために、歴史的な研究報告書であるWASH-1400(1975)とNUREG-1150(1990)を熟読・吟味し、その他、水戸に在住している関係から、茨城県が実施した東海第二原子力発電所の災害評価の報告書に目をとおした程度です。


東海第二原子力発電所の災害評価の報告書(茨城県原子力防災対策検討委員会「原子力防災対策等にの充実強化について」、平成10年8月)を読み(委員会構成員は学識経験者8名(知っている研究者は青地哲男・近藤駿介・能澤正雄・吉田芳和の各氏)・防災機関6名・行政機関4名)、感じたことをまとめてみます。


(1)事故想定が甘く、災害評価になっていないこと、

(2)WASH-1400(1975)やNUREG-1150(1990)と同程度の事故想定をした災害評価をすること、

(3)すべての原発設置県は、WASH-1400(1975)やNUREG-1150(1990)と同程度の事故想定をした災害評価をすること、そして、その結果に則り、現実的な退避訓練を実施すること、

(4)退避に必要な公共施設(道路等)を充実させること、

(5)原発災害評価の研究・実施は、原子力機構が国の予算で、各発電所の設置条件ごとに、WASH-1400(1975)とNUREG-1150(1990)並みの想定事故で評価すること、


等です。


東海第二原子力発電所の災害評価の場合、想定事故は、「多種多様な安全機能等が働かず、原子炉冷却材の喪失、燃料被覆管の破裂により、大量の希ガス、ヨウ素が格納容器内に放出され、排気筒から環境に放出」、放出放射性物質量は、「希ガス7600万Ci、ヨウ素6756万Ci」(報告書ではBq単位でしたが、分かりやすくするために、Ci単位に直しました)で、前者はスリーマイル島2号機炉心溶融事故の30倍、後者は450倍になっています。気象条件は、「周辺住民の線量が大きくなるような厳しいものとして、安全審査で用いられている条件を使用」しています。しかし、希ガスは、相互作用が少なく、比較的少ない外部被ばくへの影響しかなく、ヨウ素は、小児甲状腺ガンの原因になる。格納容器が健全であると想定し、いずれも排気筒から放出されると想定しているため、大気拡散により、影響が緩和されるようなシナリオになっています。WASH-1400(1975)とNUREG-1150(1990)では、格納容器の破損も想定し、被ばくに致命的な影響を与えるセシウム137とストロンチウム90等の放出も想定しています。東海第二原子力発電所の災害評価の条件がいかに甘いか、よく分かると思います。


周辺住民が受ける被ばく量は、大人全身線量として、「550m(敷地境界)-1.5mSv、1km-1.5mSv、2km-1.2mSv、5km-0.6mSv、8km-0.4mSv」、となっています。対応策としては、「具体的な対応は必要ない」となっています。それでは災害評価にはなっておらず、防災対策にもなっていません。現実的な想定事故で、現実的な評価をしたら、どうしようもない結果になるため、想定条件を調整したものと推察されます。よって、東海第二原子力発電所の災害評価の報告書(茨城県原子力防災対策検討委員会「原子力防災対策等にの充実強化について」、平成10年8月)は、災害評価としては、不合格です。



桜井淳

2008-11-28 17:55:49 stanford2008の投稿

桜井淳所長から京大原子炉実験所のT先生への手紙-AZ-5スクラムボタンを押した理由が分からない-

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T先生



私は、いつも、いくつもの研究テーマを抱えているため、チェルノブイリ4号機の反応度事故の発生メカニズムや被ばくの影響について、考えることもなく、残念なことに、記憶から少しずつ消えつつありました。しかし、いただいた最近の文献を吟味してみて、いくつもの疑問が浮かび上がり、時間をかけて継続的に検討してみたいと考えています。


【なぜAZ-5スクラムボタンを押したのか】

日本のタービン・発電機の回転数は、1500rpmですが、チェルノブイリ原子力発電所のものは、いただいた文献に拠れば、3000rpmとなっています。それは旧ソ連型に共通しているものと思います。私は、1993年にロシアのクルスク原子力発電所、1994年にカリーニン原子力発電所を訪問し、タービン・発電機から1mのところまで近づきましたが、日本で聞く回転音と同じように聞こえ、倍の回転数で回転しているようには、感じませんでした。普通、産業機器は、遠心力等の設計条件から、特別の機器、たとえば、ウラン濃縮遠心分離器等を除き、1500rpm程度です。そのため、3000rpmというのは、信じがたい数値です。いただいた文献に記されているため、確実な数値なのでしょうが、私の方でも調べてみましょう。


チェルノブイリ4号機では、事故直前、タービン・発電機の慣性運転を利用して、定められた"電力供給試験"を実施するために、タービンバイパス弁開にして、その試験を実施し、そのために、タービン・発電機の回転数が2500rpm(このことは、これまで、公表されておらず、T先生からの情報です)まで下がってしまい(1986.4.26の1:23:4にタービンバイパス弁開にし、1:23:40にAZ-5スクラムボタンを押していますが、慣性回転のために、わずか36秒間で3000rpmから2500rpmまで、500rpmも下がるでしょうか、この点は疑問です)、そのために、AZ-5スクラムボタン押し、その結果、"ポジティブスクラム"に起因する反応度事故に陥ったと推定されています。しかし、それでも、なぜAZ-5スクラムボタンを押したのか、分かりません。


試験が終了したのであれば、普通、スクラムせず、手動停止操作するものです。歴史に"もし"と問わない方がよいのでしょうが、もし、定められた制御棒挿入パターンによる手動停止操作であれば、事故は、起こらなかったことでしょう(本欄バックナンバー参照)。(全引き抜き時のスクラムでも、"ポジティブスクラム"という技術欠陥がなければ、事故になりませんでした。)


すべての制御棒を引き抜き状態にし(各制御棒の下に黒鉛棒がぶらさがっており、制御棒を引き抜き過ぎたために、炉心下端附近の上部に黒鉛棒の届いていない水で満たされた空間があり)、スクラムしたため、水が黒鉛に変わり、その結果、中性子吸収が少なくなり、プラスの反応度が印加され、すべての制御棒で、そのようなことになったため、大きな印加反応度となり、反応度事故になりました(本欄バックナンバー参照)。なぜAZ-5スクラムボタンを押したのか分かりませんが、考えられることは、(1)さまざまな不祥事によって、試験が大幅に遅れてしまい、時間的に、翌日の作業等に影響するため、やむを得ずにスクラムさせた、(2)(制御室の記録計に記録表示されていれば)、主循環ポンプ流量がいくぶん減少傾向にあったため(Martinez-Val et al., Nucl.Technol., Vol.90, pp.371-388(1990)のp.375のFig.3)、各圧力管内の流量低下によって温度が上がり、その結果、ボイドが増加することによって、プラスの反応度が入ることを防ぐため、くらいです。この事故を考える上で、「なぜAZ-5スクラムボタンを押したのか」が、本質的なキーワードになりそうです。


【被ばく死亡予測数】

『科学』Vol.76,No.5, pp.538-540(2006)を読むと、「フォーラム報告」に記された被ばく死亡予測数(今後の晩発性まですべて含めて4000名)が、いかに、過小評価かが、よく分かります。実際には、すくなくとも、その数倍、多い場合には、一桁高いでしょう。人口密度が低い地域であったため、予想より低かったわけですが、日本のように人口密度が高い場合には、さらに、一桁から二桁くらい高くなるでしょう。



桜井淳

2008-11-28 16:14:09 stanford2008の投稿

桜井淳所長より東京電力への施設見学にそなえての質問内容-原子力発電所のオペレータの訓練について-

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【質問内容】

新潟県中越沖地震における柏崎刈羽原子力発電所の震災時対応との関係で、改めてBWR訓練シミュレータによる事故対応のオペレータ訓練の現場を見学させてください(四半世紀前、短時間でしたが、三菱重工業神戸造船所で、完成間際の北海道電力泊原子力発電所の制御室を模擬したシミュレータによるデモンストレーションを見学したことがあります)。事前に、次のような質問をお送りします。


(1)基礎理論研修(原子炉物理・熱水力等)の内容と時間割はどのようになっていますか、

(2)シミュレータ訓練において、初級・中級・上級の訓練の内容と時間割は、どのようになっていますか、

(3)シミュレータでの訓練では、具体的に、どのような種類の事故に対応できますか、

(4)シミュレータの構成、すなわち、どのような種類・性能のコンピュータが採用され、どのようなシステム構成とソフト(具体的なコンピュータ・プログラム、たとえば、核熱流動計算の場合、計算コードRELAP5/Mod2やRETRAN02等)で核熱流動等の各種事故をシミュレーションしているのですか(特に、信号のやり取り、リアルタイム計算か、それとも、標準ケースの計算結果をコンピュータ・メモリーに記憶させておき、オペレータの操作に対応するようにしているのか、また、地震の場合、震度ごとに、影響を受ける機器と程度を評価しておき、"警報"や"スクラム"を発するようにしているのか)、

(5)シミュレータの全体を詳細に把握できる技術文献はありませんか、

(6)実施されている上級シミュレータ訓練の現場に立ち会うことはできないでしょうか、


以上。


2008-11-28 15:59:23 stanford2008の投稿

桜井淳所長より東京電力への質問内容及び回答-原子力発電所のタービン・発電機の異常対応策について-

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【質問内容】負荷喪失等によりタービン・発電機が異常回転する場合、スクラムを優先しますか、それとも、タービンバイパス弁開を優先しますか。

【回答】
状況により異なります。(1)発電所内の設備に異常がない状態で、送電系統において、大きな停電により電力需要が少なくなり、周波数が高くなるような場合には、タービンバイパス弁により主蒸気の調整を行うことになります。ただし、タービンバイパス弁の容量を超えるような場合にはスクラムとなります。(2)また、タービン・発電機自体が何らかの影響で故障し、タービン・発電機が停止するような状況に至った場合には、タービン・発電機がトリップし、スクラムとなります。この時はタービンバイパス弁による調整はありません。


【質問】タービン・発電機回転数異常でスクラムする場合には、回転数は、正常の1500rpmに対して、どのくらいの回転数に設定されていますか。

【回答】タービン・発電機が異常回転する場合のスクラム設定値は、プラントにより異なりますが、1500rpmの111%程度となっています(これは特に機微情報ではありません)。


2008-11-26 16:58:30 stanford2008の投稿

桜井淳所長の最近の講演内容-現代の理論的諸問題、特に、不確実性の大きな原発災害評価の難しさ-

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【講演要旨】原子力発電所の安全審査では、冷却材喪失事故(Loss of Coolant Accident ; LOCA)時に緊急炉心冷却装置(Emergency Core Cooling System ; ECCS)の的確な作動等により、炉心溶融は、防止できるとの考え方、すなわち、炉心は、溶融しないことを前提にしていますが(スリーマイル島原子力発電所2号機の炉心溶融事故は想定外事故と位置付けています、佐藤一男『原子力安全の論理』参照)、ただし、環境被ばく評価のためには、機械的に、ある量の放射性物質の放出を想定しているとしており(伊方原発行政訴訟における内田秀雄原子力安全委員会委員長の証言、「伊方行政訴訟ニュース」参照)、もし、炉心溶融を想定したならば、軽水炉技術は、成立せず、立地が困難になるために、この条件は、軽水炉による原子力発電を推進する原子力界にとっては、生命線となりますが、反面、矛盾する事項、すなわち、


(1)炉心溶融しなければ、放射能放出がないために、建設コスト増につながる原子炉格納容器の設置の必要性はなくなりますが、そうしていない、

(2)炉心溶融しなければ、原発災害は、考えなくても良いのですが、実際には、原発災害の発生への備えとして、電力会社の負担を軽減するための措置として原子力損害賠償法制度を設けています、


を抱えており、何が実で何が虚か、分からない世界ですが、本音は、発生確率は、低いかもしれませんが、炉心溶融は、起こりえるため、原子炉格納容器を設置し、原子力損害賠償法も設け、万一のための"保険"としており、実際に、巨大な原子力発電所の炉心溶融のシーケンスの摘出と発生確率の算出は、簡単なことではなく、米原子力委員会が実施した「原子炉安全性研究」(WASH-1400(1975)、WASHとは、原子力委員会本部の設置されていたwashingtonの略)において、米原子力委員会は、世界で初めて、NASAで開発された"事象の樹"(event tree)と"失敗の樹"(fault tree)という分析手法の組み合わせにより、炉心溶融に結び付く代表的なシーケンスを洗い出し、その発生確率を算出し、その後も、原子力規制委員会が引き継ぎ、米国の代表的なPWRとBWRの炉心溶融確率と影響を評価しましたが(NUREG-1150(1990)、NUREGは、原子力規制委員会の英語名のNuclear Reguratory Commissionの略)、災害評価の結果は、いずれも検討途中にあって改善の余地のある適用された手法・モデル・採用された定量評価数値により、非常に甘い条件と非常にきびしい条件の間には、数桁の差も存在しており、まだ、最適条件とか最適推定結果・影響は、分かっていませんが、巨大な原子力発電所の安全性を科学的な手法と数値で示せるようにしたのは、その信頼性にかかわらず、手法の進展という意味では、「原子炉安全性研究」は、歴史的出来事であり、それを批判的に再検討した米国物理学会報告(Report to the APS by the study group on light water reactor safety, Rev. Mod. Phys., Vol.47, Suppl. No.1, Summer(1975))も参考になり、そこに記された公式を利用すれば、たとえ、専門的な知識がなくても、原子力発電所・核燃料再処理工場・原子力空母の想定事故によって放出される放射性物質による災害結果を計算することは、簡単にできますが、放出量・天候・風速・人口密度等の計算条件によっては、数桁も結果が異なり、形式的に数字は、算出できるものの、結果の評価は、誰にも的確にできないというのが現状であって、WASH-1400(1975)・NUREG-1150(1990)・瀬尾評価(その後継者の結果も含む)が、過大評価とも過小評価とも断定できず、いまのところ、手法の開発中であって、改良すべき点を摘出し、特に、瀬尾評価では、不確定因子をパラメータにした感度解析や発生確率を組み合わせた最適評価の可能性を模索するしかなく(先端の確率論的安全評価によれば、炉心溶融発生確率は、年間平均マイナス6乗以下であり、原子炉格納容器が破損するのは、それより一桁低いと推定されており、よって、放射性物質大量放出の発生確率は、年間平均マイナス7乗以下となり、工学では、そのオーダーの現象は、実際には起こらないとして、工学的安全対策を施さない方針ですが、そのことは、絶対に起こらないということではなく、過去の例からして、たとえ、それ以下の発生確率の事象でも発生していますので、単純な議論は、できませんので、注意してください)、瀬尾コードがWASH-1400(1975)に先駆けて作成されたことを考慮すれば、歴史的位置と学術的評価は、たとえ、両者に部分的修正を必要とする箇所があったとしても、評価し過ぎてし過ぎることは、ないように思えます(原子力産業界の一部の人達は、瀬尾評価が桁外れの過大評価になっていると批判していますが、それ以上に、炉心溶融しないとして今日まで軽水炉の災害評価を怠ってきた関係省庁・原子力研究機関・原子力界の人たちこそ、批判されるべきです)。



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