東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

党首討論 首相の答弁は不満だ

2008年11月29日

 党首討論で麻生首相は多弁だった。その割に中身は薄かった。第二次補正予算案の処理先送りは、正確な景況認識に基づいてのことなのか、疑問だ。はたして国民に安心感を与えられたかどうか。

 「中小企業対策としての九兆円の保証枠、貸出枠は順調にはけている。第一次の補正予算で年内は対応できる」。麻生太郎首相は小沢一郎民主党代表に、第二次補正予算案の今国会提出を見送った理由を、こう繰り返した。

 米国発金融危機が日本経済を急激なスピードでむしばみ、中小企業の倒産や非正規社員らの解雇が続出する非常事態である。新たな手だてを講じなくても乗り切れると本気で考えているのだろうか。国民の不安に鈍感すぎないか。「景気は気分の問題も大きい」と語っていたのは、首相本人ではなかったか。

 小沢氏は首相がとるべき道筋を説いた。政局より景気対策だと明言した以上は、二次補正を今国会に提出すべきだ、そうしないなら衆院解散・総選挙に踏み切り、民意の支持を背景に強力な政策を実行すべきだ、と。

 首相は一次補正で中小零細企業への対策は整っているとして、金融機関の強化に公的資金を随時投入するための法改正に民主党が協力するよう重ねて主張した。

 衆院解散については首相就任当初に考えてはいたが、予期せぬ金融危機の影響に対処するため、政治空白をつくるべきでないと判断した旨を述べた。事前に用意された答弁内容だったらしいが、小沢氏のストレートな切り込みをひたすらかわした印象は否めず、聞く側にはもどかしさが募った。

 首相は党首討論での小沢氏との対決を求め続けていた。相次ぐ失言や重要政策の迷走で首相への求心力は著しく低下している。この日の討論で小沢氏を言い負かすことができれば、巻き返すきっかけになると周囲も期待していた。

 しかし、国会会期を大幅に延長しながら、それでも二次補正提出を年明け国会に先送りする理屈は私たちにもわからない。国民の目に小沢質問にまともに答えず、逃げ腰に映ったとすれば、逆効果だったのではないか。

 討論終了後、与党の幹部たちからは、失言が出なかったことに安堵(あんど)の声すら漏れた。政権そのものに緊張感が乏しすぎる。

 危機の接近をみんなが感じている。そんなときに政治の最高責任者から力強い発言を聞くことができなかったのは、遺憾である。

 

この記事を印刷する