20世紀初めの新型インフルエンザ「スペイン風邪」の時と違うのは、今はワクチンやタミフルがあることだ。前小樽市保健所長で、海外情報に詳しい外岡立人(とのおか・たつひと)さんは「普通のインフルエンザワクチンはもっと評価されていい。新型インフルエンザに対しても一定の効果が期待されることが最近いくつかの研究で示されている」と指摘する。H5N1型の鳥インフルエンザウイルスをマウスに感染させると皆死ぬが、既存のワクチンを接種しておくと半数は生き残ったとの実験もあるという。
専門家の多くはワクチンを勧めるが、副作用や効果をめぐり様々な考え方がある。主治医と相談し、自ら決めるしかない。本当に効果があるかどうかは、実のところ、「新型」が来ないとわからない。
国は2週間分の食料や日用品の備蓄を勧めている。
甲南女子大の奥田和子名誉教授は「米かめん類に魚か肉の缶詰、汁物で一食とし、家族分をそろえる。感染した場合も考え、果物の缶詰やレトルトおかゆ、スポーツ飲料なども用意する」という。古いものから食べ、買い足す。調味料に常備薬やゴミ袋、トイレットペーパーなども必要だ。保管場所から考えよう。
また大人が倒れた時に備えて、子どもにも電子レンジや炊飯器、ポットなどの使い方を教え、練習させておこう。
奥田さんが勧める非常食は、新潟県魚沼市のホリカフーズが製造する「レスキューフーズ」だ。阪神大震災の際、地元の消防士らが満足に食事をとれなかったと知り、同社と共同開発した。主食と副食で千円前後。発熱剤がセットされ、どこでも温めて食べられる。賞味期限は2年半以上。04年の新潟県中越地震でも重宝されたという。
なお、アスピリン系解熱剤は、子どもにインフルエンザ脳症の一種を起こす恐れがある。「アセトアミノフェン」にしよう。「小児用バファリン」などで市販されている。
「新型」対策は、個人では限界がある。安心して暮らすためにも、国をあげて早急に対策を整えることを強く求めたい。(斎藤智子)