名古屋市緑区で1988年、仲間とデート中の男女2人を襲い殺害するなどして無期懲役が確定した男性受刑者(40)=事件当時(19)=と女性被害者の父親(73)=愛知県=が3年以上にわたり、文通を続けていることが29日、関係者の話で分かった。謝罪を繰り返す受刑者に対し、父は「決して許さないが1人の人間として接している」と話している。
殺人事件の被害者と加害者の文通は極めて異例で、交流を通してそれぞれダメージ回復と更生を目指す「修復的司法」の試みといえそうだ。
受刑者は89年の名古屋地裁判決で、事件当時少年としては永山則夫元死刑囚=97年執行=以来の死刑を言い渡されたが、96年の名古屋高裁判決は「矯正可能性がある」として無期懲役に減刑し、確定した。
関係者によると、受刑者が被害者2人の遺族に謝罪の手紙を書き始めたのは、地裁判決の後。岡山刑務所に収監された97年以降は、作業賞与金(刑務作業に支払う恩恵的な給与で時給10-数十円程度)も添えて謝罪文を送り続けた。
女性被害者の父親が初めて返事を出したのは05年3月で、作業賞与金送付への礼状だった。受刑者は当時の心境について「とても驚き、ありがたく思いました。命ある限り、おわびし続けたいと思います」と関係者への手紙に書いている。