厚生年金の標準報酬月額や加入期間の記録改ざん問題で、舛添要一厚生労働相直属の調査委員会(委員長・野村修也中央大法科大学院教授)は28日、社会保険事務所の徴収課長を中心とした現場レベルの組織的な関与を認める調査報告書をまとめ、舛添氏に提出した。
厚生労働省や社会保険庁による組織的な関与は確認できなかったが、適切な指導や監督をできなかったことや保険料納付率が低下しないよう現場にプレッシャーを強めたことなどが「不正の助長を招いた」と指摘。関与した現場職員だけでなく両省庁幹部の処分も求めた。現役、OB職員の証言から、改ざん発覚につながる書類を破棄するなど悪質な手口も浮かび上がった。
野村委員長は記者会見で「社保庁はこの調査で幕引きを図るのではなく、自身で本格的な調査と被害救済を行うべきだ」と強くけん制した。
報告書は、改ざんの疑いが濃厚な年金記録6万9000件の都道府県別内訳も公表。東京都が最も多く、3万5310件と全体の半分を占めた。社保事務所別では、渋谷事務所が最多の4991件だった。
改ざんは、経営が苦しい零細事業主の求めに応じて滞納保険料を帳消しにするために一部の社会保険事務所で始まり、その後、従業員の記録改ざんが広がったと分析。
社保事務所職員らは、事業主に白紙の書類を提出させて代筆したり、控えをシュレッダーで破棄するなどの具体的な手口について証言した。職員ら153人がアンケートに対し「不適正な処理に関与した」と答えた。
虚偽公文書作成罪や背任罪などに相当する改ざん例も3件見つかったが、いずれも時効が成立しており刑事告発できるものはなかった。
調査委は6万9000件について分析、厚労省や社会保険庁、社会保険事務所それぞれの職員からの聞き取り調査やアンケートを実施。情報提供を受けるためのホットラインも開設した。