トップ>国会報告>165/衆/文部科学委員会/2006年11月15日

衆院 文部科学委員会 会議録第5号 2006年11月15日

   委員長 桝屋 敬悟君
   理事 鈴木 恒夫君 理事 田野瀬良太君君
   理事 西村 明宏君 理事 平田 耕一君
   理事 藤村  修君 理事 笠  浩史君
   理事 遠藤 乙彦君
      井脇ノブ子君    飯島 夕雁君
      江崎 鐵磨君    小川 友一君
      小野寺五典君    小渕 優子君
      上川 陽子君    川条 志嘉君
      佐藤  錬君    柴山 昌彦君
      杉村 太蔵君    鈴木 俊一君
      田中 良生君    冨岡  勉君
      西本 勝子君    馳   浩君
      早川 忠孝君    福田 峰之君
      藤田 幹雄君    馬渡 龍治君
      盛山 正仁君   山本ともひろ君
      奥村 展三君    郡  和子君
      田名部匡代君    高井 美穂君
      野田 佳彦君    松本 大輔君
      松本 剛明君    横山 北斗君
      丸谷 佳織君    石井 郁子君
      保坂 展人君
    …………………………………
   文部科学大臣       伊吹 文明君
   内閣官房副長官      下村 博文君
   文部科学大臣政務官    小渕 優子君
   政府参考人
   (内閣府大臣官房長)   山本信一郎君
   政府参考人
   (内閣府大臣官房タウンミーティング担当室長)   谷口 隆司君
   政府参考人
   (文部科学省大臣官房長) 玉井日出夫君
   政府参考人
   (文部科学省生涯学習政策局長)          田中壮一郎君
   政府参考人
   (文部科学省初等中等教育局長)          銭谷 眞美君
   政府参考人
   (文部科学省高等教育局長)            清水  潔君
   文部科学委員会専門員   井上 茂男君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 文部科学行政の基本施策に関する件(児童生徒のいじめ・自殺問題及び高等学校における科目未履修問題)
     ――――◇―――――

○石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。
 きょう、私はいじめへの対応についてお聞きをしたいと思っております。
 本当に深刻な問題でございますが、十月十九日に、いじめ対策の全国的な緊急連絡会議を文科省として開かれたと思います。その中で、いじめ問題に対する基本的認識と取り組みのポイントということが配付されたと思うんですが、その「いじめ問題に関する基本的認識」という部分は、平成八年ですから一九九六年七月、これは文科省が児童生徒の問題行動等に関する調査研究会議報告を出されておりますけれども、そこからの抜粋だというふうに思います。今回の報告もその報告を踏襲しているというふうに見ていいかと思うんですね。
 この九六年の報告というのは、一九九四年、その前々年に愛知の中学二年生の大河内清輝君がいじめで自殺という、本当に社会的に大きなショッキングな事件がありました。それを受けて出された報告でございます。
 私、きょうまず一つ問題にさせていただきたいのは、この十年前の報告文書はそれなりによく分析をされている、大変今日でも納得できる点が少なからずあるわけであります。例えば、その中には、何げない教員の言葉が子供を傷つける、相談内容を安易に周りの子供には言わないものだ、被害を受けている児童の身になって問題をとらえるなどなどが書かれているわけであります。
 しかしながら、これを見ますと、今日起きている、今回いじめ問題を議論する、ある面できっかけともなっている福岡筑前町の事件、北海道滝川での事件等々を見まして、また、そのほかのケースでも、この十年前の報告というのが生かされていないんじゃないか、ある面で驚くほど生かされていないんじゃないかというふうに思わざるを得ないわけでございます。
 それで、まず一点、なぜそういうことになっているのか、生かされていないのかということについて、大臣の御見解を伺います。

○銭谷政府参考人 お話ございましたように、去る十月十九日の緊急の課長会議の際に、「学校におけるいじめ問題に関する基本的認識と取組のポイント」という机上配付資料を用意いたしました。これは、今先生からお話のございましたように、平成八年七月の調査研究会議報告を踏まえて作成したものでございます。この「いじめの問題に関する総合的な取組について」と題されました平成八年の報告書では、いじめについて五点、今お話のあったことも含めて、基本的な認識を示してございます。
 文部科学省としては、例えば、弱い者をいじめることは絶対に許されない、あるいはいじめられている子供の立場に立った指導を行う、いじめは家庭教育とも大きなかかわりを有している、いじめの問題は教師の児童生徒観や指導のあり方が問われる問題であること、家庭、学校、地域社会が一体となって取り組む、この五つの基本認識については、その後も、生徒指導の担当者の会議等を通じまして、教育委員会には指導をしてきたところでございます。
 ただ、最近の一連の事件を見るに、子供を守り育てるべき学校関係者にこの点が十分に行き渡っていたということはやはり言えない面があるわけでございまして、私ども、この報告書につきましては一生懸命その趣旨の理解と普及に努めてまいったわけでございますけれども、反省すべき点が多いと考えております。
 このため、先ほど申し上げましたように、先般の緊急会議では、この八年の報告書の内容も踏まえまして、これまでのいじめ対策のポイントを再整理しまして、各教育委員会や学校の取り組みの総点検を依頼しているところでございます。基本的に、私ども、この平成八年の考え方を現在も踏まえて、しっかり取り組んでいきたいと思っているところでございます。

○伊吹国務大臣 事実関係は今政府参考人がお答えしたとおりだと思いますが、今先生がお挙げになった福岡の事案は、やはり教師そのものの言動が大変子供を傷つけ、追い込んでいったという側面がございます。それから、北海道の事案は、これは、実はいじめによる自殺をされた後の子供さんが残した手紙というか遺書というか、これの扱いについて、学校当局と教育委員会と道の教育委員会とが、まことに自分たちをよく見せたい、飾りたいというために不適切な対応をずっとしてきたということのあらわれなんですね。
 今、うまくやった成功事例等は、表に出ませんから、かえってこれは無視されがちですが、うまくやった成功事例こそみんなに知らせて、そしてそれをみんなでなぞりながら子供を守っていくということをやらねばならないと思います。
 先ほど来、遠藤先生ですか、御質問の中にあったように、やはり市町村の教育委員会や県の教育委員会の教員や学校の評価が、いじめがないのがいい学校だ、それは事実そのとおりなんですが、いじめを表に出さないのがいい学校だとなっちゃったら、これは困るわけですから、むしろ積極的にそれを出して、だけれども、うまく処理をした学校を高く評価してあげる、こういう方針をやはり文部科学省としても徹底しなければならないと思っております。

○石井(郁)委員 この件だけでもいろいろと申し上げたいことがあるんですが、大臣のその御答弁がありましたので、早速、学校を評価する、教員を評価するという問題との関係で、私は、一つ、さらに伺っておきたいと思うんです。
 いじめを、あってもいい、あってもいいというのはおかしいんですけれども、あることを隠しちゃいけないという点をもっと徹底しなきゃいけないというお話かと思うんですが、しかし、現実にはそうならないでしょう。なっていない。そこの問題だと思うんですが、それは十年前も、いじめの多寡で学校の評価について取りざたしてはいけないと。非難をする傾向も見られることがあるので、学校がこれに気をとられて、いじめの実態把握に慎重になったり不十分となることがあると十年前にも書かれているんですよ。しかし、なぜそれが違っていくのか。
 福岡も滝川の事件でもそうですが、今問題になっているのは、まさに教員の問題、学校の問題であって、そのいじめをきちんと報告していないとかの問題であったり、教育委員会の問題であったりしているわけですから、そこがなぜそういうことになるのかという点では、もう少し突っ込んだ分析と御答弁をいただかなくちゃいけないんです。
 この点でいいますと、実際、その評価を気にするなと言いますが、現実には今評価は進んでいるんですよ。校長に対しても教員に対しても、人事評価制度、かなりいろいろ行き渡っております、進んでおります。そういう評価をすればするほど、逆に校長も追い詰められていっているということもあるんじゃないでしょうか。私は、それは福岡県の実態で一つは出てきたように思うんですね。
 これは、福岡県北九州市の校長の自殺でございましたけれども、いじめが金銭トラブルだというふうに報告したことがうそだった、いじめ隠しだったということで、教育委員会から非常に厳しく指摘されて、そのことが原因かどうかわかりませんけれども、しかし、現実に校長先生が自殺されるということまで起きているわけですね。
 しかし、福岡ではどういうことがあったかといいますと、これは、私は校長の業績評価というのを見て驚きました。十三項目にわたって評価されていますよ。その評価をする方は教育長の評価です。SABCDとありますから、スペシャルなんでしょうか、五段階評価ですよね。ここを見ますと、能力、意欲、実績、項目評価、四分野で、先ほど言った、Sというのは極めてすぐれている、Aはすぐれている、Bが一般的な水準、Cは水準を満たさず、努力が必要だ、Dは水準を満たさず、かなりの努力が必要だ、こういうふうになっているんですね。その評価項目というのはずっと学校運営、学校管理運営、教職員人事管理というふうにありますし、例えば、ここでは、危機管理の意識を持っているか、事件事故等に対しては適切に判断し、対処しているかということもあります。
 項目は極めて抽象的ではございますけれども、こういう評価をされていて、どうしてこういういじめが見つけられないのかという問題なんですよね。子供にとって、まさに命を預けている学校じゃないですか。一人一人の子供を本当にどう育てるかというのが学校の仕事じゃないですか。そういう子供たちが苦しんでいるという、それとこの評価とは全然合わないじゃないですか、この点はいかがですか。

○伊吹国務大臣 それは、先生、少し違うんじゃないでしょうか。教員を評価するということはやらなければなりませんよ、これは。国民の税金で学校を設置し、教員の給与を払っているわけですから。
 ですから、評定が嫌だということは、これは困ります、責任者としては。しかし、その評定の仕方の中に、遠藤先生がおっしゃったような評定の仕方を入れていくべきなのであって、いじめがあったから評定を下げるという評定はしちゃいかぬということは、我々が責任を持って各教育委員会に通知をいたしますが、だからといって、こんなSだとかどうだとかあるのはけしからぬという話には、先生、それはちょっと私は承服しかねますね。
 そして、教育長が叱責をされたと。何もいじめがあったから叱責をされたわけじゃないんですよ。学校にいじめがあるじゃないか、どうだということを父兄が言っているにもかかわらず、その校長先生なのかは、教員を指導できなかったのかどうか知らないけれども、これは児童間の個人的な金銭トラブルだと言って児童に救いの手を差し伸べなかったのは問題があるんじゃないかということを言われているんじゃないんですか。
 だから、このことと評定の仕方には問題が大いにあると私は思います。それは先生に私は同意しますが、評定があるからいじめを隠そうということではないと思いますよ。

○石井(郁)委員 伊吹大臣はいつでも、評定、評価、一般は認められるんだということで、一般論の方に行かれるわけですけれども、今大事なことは、本当に現場がそういう子供のサインが見られるようなことになっているのかということだと思うんですね。そして、私、最初に申し上げましたように、十年前の報告、そして、先ほど五つの観点ということも出されているけれども、何でそれが生かされないのか。そこをしっかり、今その問題点を探らなければ、これはずっと続きますよ、変わらないんだと。
 私は、十二年前の大河内君の事件のとき、大河内君のお宅にも伺いまして、御両親にもお悔やみ申し上げたんですけれども、最近、大河内君のお父様も新聞に登場されまして、息子の死が全然生かされていない、学校は変わっていないじゃないかというふうなお話をされていたと思うんです。
 ですから、亡くなった子供、そしてその親からすると、こんな悲惨なことをもう本当に一つも起こしたくないという思いなんですから、そのために、文科省が徹底した原因の究明と、そしてまた対策を立てなきゃいけないということなんですね。だから、学校はいろいろ取り組んでいるはずだとは思うんですが、私に言わせればどこか違っている、そういう気がしてならないわけであります。
 それで、現実に、非常に学校自身が閉塞感に襲われていたり、やはりなかなかいじめをきちんと見ようというふうになっていないところがあると思っております。
 それで、きょうは、この評価だけでも議論はあるわけですけれども、そこはおいておきまして、もう一点、報告書に述べられているいじめの基本的認識という問題で、いじめられる子供にそれなりの理由や原因があるという考えは徹底して一掃しなければならないと書かれていることなんですね。このことは私、今大変大事だと思っているんですね。
 やはり、いじめられる子にも原因があるというのは根深く広がっているんですよ。これを徹底して一掃するというふうに十年前文科省は言われているわけですが、どうやって一掃するのか、できていないという問題だと思うんですよ。その点で、十一月四日、NHKの教育テレビの特集番組がありましたけれども、十年前に比べても、いじめられる子にも理由や原因があるという考えは深まっている気がするんです。深刻だというふうに思っているんです。
 それで、初等中等局長に伺いますけれども、この考えというのは、教育現場、教職員や臨床心理士などにはきちっとそういう立場に立つということが求められていると思いますが、その点ではいかがですか。

○銭谷政府参考人 今のことの前で、一点だけ申し上げたいんですけれども、去る十月十九日の会議でも、いじめの問題については、件数が多いか少ないかの問題以上に、これが生じた際に、いかに迅速に対応して、その悪化を防止して、解決に結びつけるかということが重要であって、件数に関しては、取り組めば取り組むほどいじめを把握して、件数はふえてしまうということだってあるんだ、そのことは構わないんだということは、むしろ、当日の私どもの最重点指導内容として徹底をしているということをまず申し上げさせていただきたいと思います。
 それから、平成八年の問題行動に関する調査研究協力者会議の報告の中で、いじめの問題に関する基本的な認識として、弱い者をいじめることは人間として絶対に許されないという強い認識に立った上で、いじめられている子供にもそれなりの理由や原因があるという考え方を徹底して一掃しなければならないということを言っているわけでございまして、だれよりもいじめる子が悪いのであって、いじめられる子供の責めに帰することは断じてならないということは、私どもかねてずっと指導してきたところでございます。
 特に、いじめの問題というのが、いじめられている子供を徹底して守り抜くというその姿勢のもとに必要なケアを行うとともに、いじめる子供に対して毅然とした指導を行う必要があるということは、私どもも会議等におきまして繰り返し言っているところでございます。今回もまた申し上げております。
 ただ、残念ながら、各学校あるいは教職員の意識の中でそのことが十分徹底されているかどうかということについては、反省をしつつ、私どもさらにこういう考え方を徹底していきたいというふうに思っております。

○石井(郁)委員 私は、たびたびというかこの十年間、本当にどうだったのかということを問題にしているわけですが、それなりに文科省としては、いろいろ通達も出されているし、会議もあっただろうし、いろいろそういう立場は伝えてきたというふうには思うんですよ。しかし、なかなかそれが現場のものになり切っていない。そこには何があるのかということについてもっと考えたいと思うんです。
 きょうは、最後に、今、私、いじめられる子供にもそれなりの理由や原因があるという考え方のことについて質問いたしましたのは、実は、これは伊吹大臣にぜひ確認をさせていただきたいのでございますけれども、十一月九日に参議院でやはりいじめの集中審議的なことがございまして、我が党の井上哲士議員の質問に対して、伊吹大臣がこのように答えられていらっしゃいます。いじめられる側にも、やはりみんなの中に入っていかないというようなケースがあった場合には、これは一端の責任があるという答弁。また、九五%はいじめる方に問題があるでしょう、だけれども、残りの、なぜいじめがそこの子供へ来たのかというときに、その子供の性格だとか何かに起因は全くないということは言えないと。私は、この御発言は驚きまして、これは報告が今、一掃しなければならないと言ったこととはちょっと違うんじゃないでしょうかということがあります。
 しかも、さらに大臣はこのようにもおっしゃっていまして、行政の指導としては、いじめられた方に原因があるということは払拭してやってくださいと言うけれども、現場の教師だとかケースワーカーの立場からすると、私が言ったこと、つまりいじめられる側にも一端の責任というか、考えながら慎重に対応してもらわないと困るという形で述べられているんです。
 私は、最初に確認しましたように、このいじめ問題でやはり現場で絶対にとってはならない、基本的な認識として一掃しなきゃいけないということを第一義的に強調していることを、文科大臣はひっくり返したような答弁になっているということが大変問題だというふうに私は感じました。しかも、これはやはり最高責任者の文科大臣の御発言でございますので、どうですか、これは発言を撤回される気はございませんか。

○伊吹国務大臣 今先生がおっしゃったところのことは、翌日の赤旗にも批判を持って書かれております。
 これは、しかし、赤旗も正確に書いていただいているのは、行政としては、つまり教育委員会、学校現場その他の指導としては、いじめを受けている方に責任があるという態度じゃなくてやってもらわないと困る。しかし、臨床心理士その他、心のケアをする人は、どちらにどういう原因があって、いじめている子供はどうでという心のケアというのかアフターケアは、両方の子供のケアが必要な場合はそれはしてやらなければいけないというのは当然じゃないでしょうか。

○石井(郁)委員 もう時間が来ました。これはまた、引き続いて時間をとって議論させていただきたいということを申し上げて、きょうは終わりにしたいと思います。


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