“不気味”鮮明に記憶　小泉容疑者給油のGS店長

　テレビニュースでその男、小泉毅容疑者の顔を見て、ガソリンスタンドの男性店長は「あの男」を思い出した。一度しか来なかった給油客だったが、強烈で不気味な印象を残していた。

　国道１７号に面した店に、男がバイクの給油に立ち寄ったのは今年の九月末。平日の昼に近い午前中だった。

　「一カ月に九千から一万件のお客がある店。それだけなら記憶に残らなかったでしょうね。あの時、三、四十分もめたから覚えていた」

　たしか五、六百円だった。給油の代金を支払う時、男は市販のクオカードを出した。

　「うちは使えません」と店長。男は「使えねえってのはおかしいだろう」。関西なまりでどすの利いた低い声だった。

　「申し訳ありません。使えるのはカードの加盟店だけなので」という店長に、男は「じゃあ払うよ」と現金を出した。

　しかしそれで終わらなかった。「カードを使える店を教えてくれ」「お客様相談センターの電話を教えろ」などと言い、店長が電話で石油会社に問い合わせると、「ちょっと代われ」と受話器を握った。

　「全国でスタンドは何軒あるんだ。そのうちカードを使えるのは？　何だ、使えねえ方が多いじゃねえか」

　男はいつの間にか怒鳴っていた。五分刈りの髪に立派な体格。「暴力団のような威圧感を感じた」という。

　古く汚れたバイクにまたがった男は「右へ行くから車を止めろ」と、車の客にやるような送り出しの案内を要求し、リュックを背負って走り去った。

　バイクには十年ほど前に出回った若者に人気の限定仕様のステッカーが張ってあった。