東京・秋葉原の17人殺傷事件で、負傷の程度で治療の優先順位を判断するトリアージを巡り、亡くなった東京芸大4年、武藤舞さん(21)が最優先の搬送対象の「赤タグ」を付けられながら、搬送開始まで38分かかっていたことが分かった。指揮命令系統が混乱して搬送先の選択に手間取ったり、消防無線に他の現場のやり取りが混在したことなどで、迅速な搬送ができなかったとみられる。
「都メディカルコントロール協議会」の事後検証委員会(委員長・山本保博東京臨海病院院長)が報告書をまとめ28日、公表した。
報告書によると、事件のあった6月8日は午後0時36分に最初の119番があり、現場近くの19の救急隊が出動した。負傷者17人のうち15人がトリアージの対象になり、「赤タグ」が7人、負傷が致命的で搬送を先送りする「黒タグ」が5人、軽傷の「緑タグ」が3人につけられた。
武藤さんには0時44分に赤タグがつけられ、止血処置などが施された。しかし他の赤タグ対象者に比べ、対応した救急隊の到着が遅れたうえに情報伝達が混乱、38分後の同1時22分に現場を出た。赤タグの中では最後の搬送だったが、報告書は「早期に搬送されても救命できたとは考えにくい」と結論づけた。
報告書は「トリアージは有効に機能した」と総括したが、情報伝達の不備や、約150メートルにわたる現場の広さから被害の全体像を把握できなかったことは認め、「すべてが効率的かつ円滑に実施されたとは言い難い」とも指摘した。【古関俊樹】
毎日新聞 2008年11月28日 21時27分(最終更新 11月28日 22時35分)
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