50.000種の産業利用ができる究極のバイオマス・エネルギー「麻」

麻の実が食料となる!?
共生の時代へ ―大麻 Part 2―
究極のバイオ・マスエネルギー
産業を活性化させるカギとなる

  麻の実
対談:弁護士 丸井英弘& 本誌主幹 江本勝

大麻のことを知れば知るほど、麻薬としてしか認識されていない現状を憂る。
戦前はその栽培が奨励され絵や文献にその様子が残されている。
神社の神事に便われ、麻の葉文様は浴衣の柄としても一般的に使われてきた。
庶民の生活に溶け込んでいた大麻が戦後規制されたわけ、 そして、食糧としての可能性についておよんだ前回に引き続き、 大麻復興をライフワークとする弁護士の丸井英弘氏にお話をうかがいます。
※文中で、麻、麻の実とあるのは大麻、大麻の実のことです。


明治政府によって奨励された大麻栽培と北海道の野生大麻
江本:東京にも麻布という地名がありますが、麻とつく土地は多いですね。

丸井:ええ、多摩川でも麻が伝統的に栽培されていました。「摩」というのは大麻のことです。私が事務所を多摩川の近くの国分寺に移したのも、大麻のエネルギーに導かれたのではないかと思います。そして、この近くの調布では麻布が織られていたと思われます。

江本:麻を植えて育てるのは難しくはないのですか?

丸井:麻は非常に強い植物でして、ちょっとした手入れはいりますが、普通のハーブと同じように考えれば、難しくはないようです。

江本:背丈は何メートルくらいになるんでしょう?

丸井:根がどれだけ張れるかで、背丈も決まりますが、よく育ったものでは3メートルにもなります。それも半年でですよ。幹もとても太くなって、親指の3、4本分になります。 実は、明治政府は大麻の栽培を奨励していたことが分かっています、北海道では特に奨励されていました。戦後栽培が前面禁止になりましたが、大麻は生命力が強いので、今でも、北海道では野生大麻か毎年、約130万本出てくるといわれています。栽培しなくても野生で生えてくるんですから、これ明治政府というか、先人のお蔭だと思います。

ところがもったいないことに、毎年、自衛隊が火炎放射器で焼き払っているようです。そうやって税金を使って、石油を使って、大気汚染の原因をつくっている。悪いことだらけでしょ。種と茎だけは法律上も認められているわけですから、有効利用すべきだと思いますね。これを1つの政策として、北海道庁に提案したいと思っています。


エネルギー源としての可能性を秘めた大麻
丸井:大麻の茎の繊維からは紙や服ができます。それから、バイオ・プラスチック(植物を精製したプラスチック)としての可能性も広がりそうです。大麻は7割がセルロース(繊維)ですから、これを抽出すればプラスチック製品ができるわけです。さらに、それを発酵させれば、メタノールなどの燃料が取れます。これが燃料電池(注1)の原料になります。

それから、種(実)は食料になります。種と茎だけでも100万本以上を集めたらかなりの量になります。あらためて栽培する必要がないんです。これを有効利用するのが一番手っ取り早い。野生で出くるのですから、まさに白然の恵みです。

江本:寒い北海道で野生化しているのでしたら、暖かい土地では……。

丸井:年に2回出てきますよ。沖縄の経済を活性化させるために、大麻の栽培を復活させたらいいと思っています。米軍基地を撤去して、そこを麻産業の基地にするんです。広大な面積です。麻を2期作で作り、バイオ・プラスチックなどの燃料を取れば、沖縄の経済は充実します。 沖縄と北海道でそれを実行して、同時に日本から独立したらいいと思います。それくらいの経済力が持てるようになります。

江本:なるほどね。北海道か沖縄か、どちらかに移住して大統領でもやろうかな(笑)。

丸井:それはいい。ですからね、知事選でそのような政策が出てきたら、画期的だと思いますね。

江本:そうなってきますと、圧力を掛けてくるところが……。

丸井:既存の石油産業から、バイオマス・エネルギー(注2)を中心とした産業に切り替えられるかどうかですが、石油産業の技術を麻産業に生かせばいいと思います。軍需産業の技術を環境修復産業に生かしていく。一時的な混乱はあるかもしれませんが技術の使い方しだいでしょう。

江本:たとえば、パルプ産業なら、原料を木材から麻に替えればいいと?

丸井:ええ。アメリカでは、大麻の規制は石油産業やパルプ産業がバックにあるといわれていますが、製品化へ向けて原料を替えるだけですから、矛盾するとは思えないんですけれどね。

注1)燃料電池:水素と酸素を反応させて電気エネルギーを取り出し、 水を排出するという超クリーンな発電装置のこと。この燃料電池は、自動車、住宅、オフィスビルの熱電供給システムとして導入され、21世紀を担うエネルギー源として見込まれている。
注2)バイオマス:生物資源のことで、太陽エネルギーが光合成により化学的エネルギーに変換されて、さまざまな生物体に蓄えられたものをいう。 バイオマスには、木材、竹、 麻、農業・林業廃棄物、下水汚泥や食品廃棄物、漁業廃棄物などがある。これらの資源を有効活用することが、環境・資源間題の解決策の一つとして考えられている。
「ヘンプがわかる55の質問」(バイオマス産業社会ネットワーク)より



市民運動になりにくい大麻復活運動とマスコミ報道の現状
江本:説得力のあるお話だと思いますが、マスコミではまったく取り上げられていないですよね。

丸井:ええ、そういった有効活用の記事はなかなか載りません。私が携わってきた刑事弁護で一番問題だと感じるのは、大麻取締法という法律は、犯罪とは無関係な大麻の取り扱いを、犯罪として罰することで、人に罪悪感と恐怖感を与えるということです。これが、波動上はもっとも良くないと思います。

江本:おっしゃる通りですね。恐怖感が良くない現象を引き起こしますし、病の原因ともなりますからね。 先生は日本における麻の復活運動の先陣を切っていらっしゃいますよね?

丸井:いや、実はですね、大麻の問題は市民運動にはなりにくいんです、と言いますのは、大麻を実際に使っている人たちは「大麻を使っているけれど、別に悪くないんじゃないか」と言い出せないわけです。すぐに逮捕されます。

江本:吸引している人たちですか?

丸井:栽培している人もです。大麻取締法の基本は栽培の規制にあります。無許可栽培は非常に厳しく罰せられます。大麻に接している人たちは、大麻のすばらしさを良く知っていますが、声を大にしては言えないという状況です。そうなると、いわゆる市民運動は起こしにくい。

江本:マスコミにも市民の中にも、偏見を持っている人たちがいっぱいいるということですね。

丸井:壁は厚いですね。私は、大麻取締法の刑事弁護を一つひとつキチッとすることで、真実を伝えていこうと思っています。
欧米では市民団体によって、人権問題として大麻の規制を緩和すべきだという動きがあります。日本はそういった運動は弱いですね。これをどうしたらいいか、というのが私の課題でもあります。 実は、5年くらい前に大麻についてNHKから取材を受けまして、私の見解を述べました。その時の担当者は好意的に受け取ってくれましたし、これで少しでも大麻にそそがれた汚名を拭えるのでは、と思ったのですが、放送された番組のタイトルは「若者に広がる大麻汚染」。一貫して大麻は麻薬だ、との見解に立った内容でした。これに対して仲間を募り、放送法や憲法の条項に反するとして裁判を起こしました。 その内容を大麻のホームページで皆さんにご紹介してきました。
現在、水麻に関する資料集をCD販にして出版しています。(販売元:麻の実普及協会)

江本:
ちゃんとおやりになっていらっしゃいますね。

丸井:私は弁護士としての立場から、自分の意見を言うことができます。それが私の役割だとも思っています。 最近は、若手俳優のいしだ壱成くんの大麻不法所持事件がありましたから、若い人たちのアクセス件数がすごく増えています。

江本:私もヨーロッパで講演した際に、大麻の話をさせていただくのですが、皆さんたいへん興味を持たれます。先生の集められた大麻の資料集の翻訳版を作って、ぜひあちら(海外)の方たちにも「聖なる植物―大麻」について知らせていきたいと思います。ありがとうございました。

丸井 英弘 弁護士
1944年愛知県名古屋市生まれ。国際キリスト教大学および、東京教育大学卒業。人権の保障と環境問題に対して、法的側面から貢献したいという思いから弁護士となる。75年から現在まで多くの大麻取締法違反事件を担当し、一貫して、大麻を刑事罰で規制することの不合理性を訴えてきた。自然生態系に沿った自給自足型の社会が本来の日本社会であり、伝統的な麻産業を現代的に復活させることにより、石油や木材を輸入する必要性もなくなり、自然環境も急速に回復するとの考えから、大麻取締法の廃止が弁護士としての基本的な任務だと確信するに至る。大麻についての誤解や偏見をあたえる情報を是正し、大麻すなわち麻の有効利用を促進するための正確な情報提供を行なうために精力的に活動している。また、尺八と弓道を嗜み、伝統文化のすばらしさを再認識している。
連絡先:武蔵野共同法律事務所 Tel.042-325-1224

大麻についてのインフォメーション
●麻の実普及協会(武蔵野共同法律事務所内)
〒185−0021 東京都国分寺市南町3−26−10−503
TEL. 042−325−1224 FAX. 042−325−1271 E-mail:hempseed@mac.com

●大麻のホームページ http://www.asahi-net.or.jp/~is2h-mri/
*竹の家さんは現在移転計画中のため、連絡先はあらためてお知らせします。
*ホームページ内の絵は、丸井英弘氏監修のCD-ROM「大麻とは何か?大麻取締法を問う」より転載させていただきました。