麻の実が食料となる!?
共生の時代へ ―大麻―
生活習慣病を予防し、食糧不足を補い、農業活性化に貢献する
対談:弁護士 丸井英弘& 本誌主幹 江本勝
大麻収穫 清水登之(1887〜1945年) 産経新聞大阪本社第80回記念二科回顧展より |
1999年4月号から3回にわたって特集した「共生の時代へ―大麻」。古くから宗教儀式に使われ、また、繊維や油としても私たちの生活に欠かせない植物として、認識を新たにされた方も多かったのではないでしょうか。
今回から始まるPart 2 では、環境保護や代替エネルギーを考える中で、その有効利用への見直しが叫ばれる大麻復活のムーブメントについて、弁護士の丸井英弘先生におうかがいします。
なお、文中で麻、麻の実とあるのは大麻、大麻の実のことです。
食べておいしく身体にもいい麻の実
江本:本日は、東京・国分寺の「竹の家や」さんという、うどん屋さんに来ています。大麻についてお詳しい弁護士の丸井英弘先生にお話をうかがいたいと思います。よろしくお願いします。
丸井:こちらこそ、よろしくお願いします。
江本:このお店は、麻の実を練りこんだうどんを出していらっしゃるそうですので、さっそく、「麻の実うどん」をいただきながら、お話を始めましょう。
(うどんを食べながら)ああ、これはうまい! コクのある味わいですね。
しかも、とてもコシがあるなあ。ところで、どうして、うどんに麻の実を練りこむようになったのですか?ご亭主の安達さんにうかがいましょう。
安達:数カ月前まで定食屋をしていまして、何か変わったものを出したいと思っていたところ、ご近所にお住まいの丸井先生が食事に見えて、「麻の実を練りこんだうどんを出したらどうか」と言われたんです。実は、小さいころからうどん屋をやってみたいと思っていましたので、さっそく、いろいろ試しに作ってみることにしました。
1カ月くらいかかりましたね。毎回、先生に試食していただいて、「これでいい」となってお客さまに出せるようになったのも、つい最近のことです。
丸井::「竹の家」では、捏こねたうどんを青竹で打っていますから、手で打つのとは違ってコシが強いんですよ。手がかかる高級麺です。
麻の実じたいは、殻を破砕した、つまり芽の出ない麻の実でして、中国から輸入されているものを使っています。(厨房に向かって)うどん湯をいただけますか?
麻は油が出ますから、そば湯みたいに茹で湯を飲めるんです。麻の実の特徴は、料理に入れると味がまろやかになってコクが出ることでしょうね。繊維質が膨らみますから腹持ちもよくなります。
ドイツに知り合いがいるんですが、麻の実の入ったうどんやパスタをつくったらおもしろいよ、と言っているんです。餅に入れてもいいかもしれない。あわ餅、きび餅みたいにね。
麻の実うどん手打ち風景麻の実を練り込んだたねを青竹で打つ安達さんご夫妻。手間のかかる仕事だ。こうしてコシの強い麻の実うどんができあがる。 |
弁護士として大麻取締法に取り組む中で見えてきた真実
江本:ああ、おいしかった。ごちそうさまでした。ところで、先生は大麻事件の弁護をされてこられたわけですが、いつ頃からですか?
丸井:弁護士になって2 年目の1975 年からで、アメリカ青年が大麻所持で逮捕された件の弁護でした。
江本:その頃からですか? マスコミで報道されるようになったのは。
丸井:77年に、フォーク系の人気ミュージシャンの大麻事件がマスコミで大きく取り上げられました。新聞でも論争になり、「たかが大麻で目くじらたてて」と書かれたんですが、その論調は今とはだいぶ様相が違います。
今のマスコミでの取り上げられ方は、麻薬という位置づけで、覚醒剤などと同じような扱われ方になっています。
これが一番の問題です。カナダでは本年の7 月30日から医療目的の大麻の栽培や使用が正式に認められていますし、そもそも、2000 年来、大麻は漢方薬として使われてきたんです。
江本:それで、75年の裁判のほうはどうなったのですか?
丸井:本人はMP (米軍)が勝手に置いたものだと主張しまして、不起訴となりました。当時、私も大麻にどういう作用があるのかを知りませんでした。本人に聞いてみると、酒、たばこより害がないと言っていました。 人に害を与えなければ、酒でもたばこでも、それは本人の自由です。人に害を与えた場合に、刑事罰はあり得るけれど、自分の判断で選択したものに関しては本人の自己責任だ、というのが私の考えです。 その頃、※カウンターカルチャーが専門だった東京大学文学部の教授からも相談を受けました。その教授も大麻については害がないというお考えで、大麻取締法で捕まる人の弁護をしたらどうか、とアドバイスされたのです。以後、その方面の相談を受けるようになったというわけです。
※体制的価値基準や慣習などに反抗する、特に若者文化
江本:今の日本の法律や国家体制からすると、弁護してもなかなか勝ち目はないのでしょうか?
丸井:無罪まではいきませんね。しかし、理解のある裁判官はいますから、刑を軽くすることはできます。
江本:大麻事件を担当される一方、大麻の勉強をされたんですね。
丸井:弁護をするには「大麻とは何か」を自分で研究しなくてはなりませんでしたから。
江本:事件との関わりで調べていくうちに、魅入られてしまった、ということですか?
丸井:ええ、歴史を調べていくと、大麻はまさに縄文時代から親しまれてきた伝統的な日本の植物でした。それが、なぜ取り締まられるようになったか? 結局、大麻取締法とは戦後の占領立法だと分かってきたわけです。
江本:GHQによってつくられたということですか?
丸井:そういうことです。当時、日本にマリファナ問題などなかったのに、何でそんな法律がつくられたのかということになります。
この件に関するGHQの対応はとても迅速でした。45年の8 月15日に日本を占領して、その年の11のポツダム命令で、大麻栽培を全面禁止しています。
江本:神道の規制と同時ですね。
丸井:ええ、同じく剣道、柔道、弓道などの武道も禁止しています。大麻栽培の全面禁止によって、日本は大混乱に陥りました。それまで、栽培は奨励されていましたから、農家の人たちにとっては何が起こったか分からない。それで、日本の政府が交渉して、栽培は免許制にしようということになりました。そして、種と繊維だけは、その利用が認められるようになったんです。それが、今の大麻取締法です。これは取り締まる法律でもあるけれど、栽培免許を与える法律でもあるんです。
江本:神道や武道と同じく日本人の精神性に通じる麻の文化は、畏れるに足るものがあったということでしょうか。
丸井:ええ、すぐに法律などできませんから、占領したらこういう方針でいこうと、かなり前から準備していたと思います。
江本:大麻だけが取り締まられたんですか? 他の麻薬は?
丸井:普通、麻薬と言われているのは、医療用のケシからつくるモルヒネのことです。モルヒネは使いだすと、その量は増えていき、習慣性がありますし、止めると禁断症状がでる。それを麻薬といいます。モルヒネは明治時代ごろから世界的に規制が始まっています。確かにアヘンには問題がありますけれど、大麻もそれと混同されて、同じように規制されたという傾向がありますね。
これからの食糧を考えるうえで、大麻が1 つのカギとなる
江本:今の時代は、すべてがオープンというわけでもありませんから、そっちの方向からのアプローチは他の方々に任せるとして、一般的に大麻を世に認めさせるのは、パルプとか食油とか、いろいろな使い道を、声を大にして言っていくことなんでしょうね。
丸井:やはり、分かりやすいのは「食べておいしい」「着て気持ちがいい」というところだと思うんです。大麻は害があるかないか、という抽象論で議論するよりも、食べ物、衣料における麻の価値を認識してもらうのが、まず初めだと思います。
麻刈 作者、年月日不明 |
私も最初は、吸った場合の影響はどうかということを中心に議論していたものですから、食べ物としての大麻の有用性にはあまり関心がありませんでした。種が七味唐辛子に入ってるな、ぐらいでね(笑)。
ところが、現代病といわれる最近のアレルギー症状などは、食生活が原因だと言われ、そこで、欧米では大麻の実が注目され始めたんです。大麻の実は吸収されやすい上質のタンパク質を多く含んでいますし、青魚に含まれる必須脂肪酸も入っているといいます。私もそういう情報を耳にしてから、これを何とか上手く活用できないかと思うようになりました。
江本:麻の実を穀物としてですね。
丸井:主食に準じた扱いをすることで、日本の食糧の自給率を上げることにも貢献できるし、農家で栽培することによって農家の収入源にもなる。昔は栽培していたのですから、これが日本の農業を活性化させる1 つの軸になるのではないかと思っています。
江本:ええ、実際食べてみて「麻の実うどん」はおいしかったですしね。
おいしいということは、習慣的に食べるためには大切な条件です。
狂牛病やら、魚介類の環境ホルモン問題やら言われています。私たちは、タンパク源となる食べ物のことを真剣に考えるべきときだと思いますね。
⇒次回に続く
丸井 英弘 弁護士 1944年愛知県名古屋市生まれ。国際キリスト教大学および、東京教育大学卒業。人権の保障と環境問題に対して、法的側面から貢献したいという思いから弁護士となる。75年から現在まで多くの大麻取締法違反事件を担当し、一貫して、大麻を刑事罰で規制することの不合理性を訴えてきた。自然生態系に沿った自給自足型の社会が本来の日本社会であり、伝統的な麻産業を現代的に復活させることにより、石油や木材を輸入する必要性もなくなり、自然環境も急速に回復するとの考えから、大麻取締法の廃止が弁護士としての基本的な任務だと確信するに至る。大麻についての誤解や偏見をあたえる情報を是正し、大麻すなわち麻の有効利用を促進するための正確な情報提供を行なうために精力的に活動している。また、尺八と弓道を嗜み、伝統文化のすばらしさを再認識している。 連絡先:武蔵野共同法律事務所 Tel.042-325-1224 |
「聖なる植物」大麻を復活させよう!! 丸井弁護士のお名前は、大麻の特集を前回、行なったときから知っていました。そしてお会いしたいとも思っていましが、その時はチャンスがなく、現在にいたっていました。しかし、縁というものは面白いものです。なんと、私が最近親しくお付き合いをさせていただくようになったエハン・デラヴィさんと丸井先生が、家族ぐるみのお付き合いをしている仲であったのです。さっそく私はエハンさんのご紹介の下に、丸井先生の事務所を訪れたというわけですが、それは偶然ではなく、私がちょうど再び大麻のことについて思いを馳せ、大麻の秘密について、ある閃きを持ったすぐ後のことでもありました。 私は読者の方々が良くご存知のように、5、6年前から南阿蘇にある日本最古の神社といわれる幣立神宮とのご縁をいただいております。そして幣立とは、まさしく「へい」である「麻」を立て、神々に御降臨を願うという儀式であることを、137代目の宮司である春木伸哉宮司からお聞きしているのです。ここにおいて、またまた、いろいろな出会いが単なる偶然ではなかったことを体験したのです。 |
大麻についてのインフォメーション
●麻の実普及協会(武蔵野共同法律事務所内)
〒185−0021 東京都国分寺市南町3−26−10−503
TEL. 042−325−1224 FAX. 042−325−1271 E-mail:hempseed@mac.com
●大麻のホームページ http://www.asahi-net.or.jp/~is2h-mri/
*竹の家さんは現在移転計画中のため、連絡先はあらためてお知らせします。
*ホームページ内の絵は、丸井英弘氏監修のCD-ROM「大麻とは何か?大麻取締法を問う」より転載させていただきました。
麻の実は、栄養バランスの金メダル!!
麻の実は必須脂肪酸(特にリノレン酸)をバランス良く含むほか、消化吸収に優れた良質なタンパク質、食物繊維、ビタミン類が豊富に含まれており、植物界で最も優れた栄養バランスとされています。 また、昔から漢方薬として使われている麻の実の属性は中庸で、腸の働きを円滑にし、血行をよくする働きがあります。 生活習慣病が問われる中、「体にやさしい」麻の実を、毎日の食生活に取り入れていきたいですね。
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スープの具に。 ハンバーグや餃子に混ぜて。手打ちパスタやうどんに。とってもおいしいですよ。 アレルギー体質の方やお子様にもお勧めです。