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インタビュー:「普通にできたらええねん」 「らき☆すた」「かんなぎ」のアニメ監督・山本寛さん

山本監督が直感的なものを感じたという「かんなぎ」。10月から放送予定 (c)武梨えり/一迅社・アニプレックス
山本監督が直感的なものを感じたという「かんなぎ」。10月から放送予定 (c)武梨えり/一迅社・アニプレックス

 「涼宮ハルヒの憂鬱」などの大ヒットアニメを演出した山本寛監督。「らき☆すた」放送時の07年5月、「監督の域に達していない」と突如降板して注目を集めたが、武梨えりさんの人気マンガをアニメ化する「かんなぎ」の監督に決まった。美術部員の掘った木像が美少女になって動き出し、自らを「神」と名乗って学園生活を送るというラブコメディーだ。山本監督に新作への意気込みを聞いた。【聞き手・黒瀬陽平、構成・編集部】

--「かんなぎ」の監督を引き受けたのは

山本 07年の5月にフリーになってしまい、とにかく次の仕事がないという危機意識から、旧知の水島努監督(「撲殺天使ドクロちゃん」など)に相談したところ、「おおきく振りかぶって」を手伝うことになりまして、その時に制作の「A-1ピクチャーズ」の落越友則プロデューサーを紹介してもらいました。その縁で07年夏に落越プロデューサーから改めて、会いたいので大阪まで行きますと連絡をもらったんです。東京の方が地方の会社に発注する際って電話一本だったり、東京に来て下さいとか言われることが多いんですけど、行きますと言ってくれて。まあ、来てくれるんだったら会わないと失礼だよなと思って、梅田の喫茶店で会ったんです。そうしたら、いきなり、これ読んでみて下さいって原作の1巻を渡されたんですね。

--そこで原作に出会ったわけですね

山本 もちろん、即答はできないですし、お話はうれしかったんですけど、飛びつくのも僕の主義じゃない。すみません、これは合わないんですっていう作品もあるとは思うんで、とりあえず預かりますと。でまあ、読んでみたら、パッと開いた瞬間に、なんか直感的なものを感じたんです。「ハルヒ」のときも「らき☆すた」のときもそうだったんですけど、僕、パッと開いた瞬間のファーストインプレッションで決めちゃうタイプなんです。もちろん後から精読して、戦略を練るんですけど、最初の印象だけで行けるかどうかを決めるんですよ。こういうのはもう、縁ですよね。会った瞬間、あ、なんか付き合えそうだなと。そんな感じでお返事をして、そこから始まりました。

--原作を読んでみて、どういう作品にしようと考えましたか

山本 僕は常に前の作品とは違うものをやりたいと思っています。それは「ハルヒ」から「らき☆すた」へ移行するときもそうでした。野球に例えるなら、「ハルヒ」は肩がダメになるような魔球ばかり投げていたのに対し、「らきすた」はちょっと緩めの球を投げるイメージでした。ただ、「らき☆すた」は、自分が監督を降板して、外から見てみると、緩い球のつもりが、「ハルヒ」のようなアクロバティックな魔球ばかり投げてるよなって、反省も含めて思いました。

--ちょっとやり過ぎてしまったということですか。

山本 やっぱり「ハルヒ」「らき☆すた」がヒットして、それを追うわけではないんでしょうけど、ネタを散りばめとけばなんとかなるだろう、みたいな作品が増えたように見えるんです。ギミックを用意しないと、ヒットが見込めないという状況になっている。作った自分が言うのもなんですが、そういう状況に異を唱えないといけないと思ったんですね。センセーショナルなやり方で、ワーっと引っ張るような作り方では、次第にお客様のニーズに応えることができなくなるのではないかという気がすごくしたんです。その一方で、例えば細田守さんが「時をかける少女」を作ったり、原恵一さんが「河童のクゥと夏休み」を作ったりして、やっぱりシンプルなものづくりをしていこうという流れもあるんだなって思ったんです

--ドラマ作りに回帰しているということですか。

山本 それは、宮崎駿さんが「ハウルの動く城」の前からもうずっと言ってることなんですけどね。シンプルにするんだ、と。シンプルな物語をまず作り手が求めてるし、受け手もやがてついて来てくれるんじゃないかという予感はしてるんです。それと「かんなぎ」は見事に合致した作品だと思います。これを今作れと、“アニメの神様”が言ってる。もちろん、ふたを開けてみたらそんな単純なわけはないんですけど。

--面白くなるなと感じたところは

山本 ストーリーとしてはシンプルな「同居もの」です。僕は、打ち合わせの時に必ず、テレビドラマの「ママはアイドル」と「パパはニュースキャスター」を見てねって言ってます。この二本によく似てるなって思ったんですよ。あとは「翔んだカップル」かな。80年代によくあった、知らないうちに一つ屋根の下に暮らしている、その中でのドキドキ感を描くという、すごくシンプルな構造をやりたいです。萌えじゃなくてラブコメです。あとはふとももです。主人公のナギをはじめとする女性のふとももが素晴らしいですね。でもだからといって、萌えアニメとはちょっと違うんですよね。

--今回は直球勝負ですね

山本 僕は普通の演出家です。だから、普通じゃないかって言われるのがうれしいんですよ。普通ができたらええねんって本当に思います。過不足なく、ストーリーがわかって、キャラの心情が分かって、言動に矛盾がなくてという、当たり前のことを当たり前のようにやる、これだけです。

プロフィル

やまもと・ゆたか=74年9月、大阪生まれ。京都大から京都アニメーションに入社し、「AIR」や「フルメタル・パニック! ふもっふ」などの演出を担当。現在、独立し制作会社「Ordet(オース)」代表。

※アニメ「かんなぎ」は10月放送開始予定

2008年7月12日

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