ホーム > きょうの社説


2008年11月28日

◎新幹線の大宮発着 経済効果が低下しかねない

 金沢発の北陸新幹線に飛び乗ったら、行き先は東京ではなくて大宮だった。こんなこと が現実に起こるかもしれない。JR東日本が、北陸新幹線の金沢開業後には大宮発着便の運行を検討する方針を示した。北陸、上越、東北の三新幹線が共用する大宮―東京は、現在でも時間帯によっては限界に近い状態であり、金沢開業に伴う運行本数の増加には対応しきれないためという。

 北陸新幹線がすべて大宮発着になることは考えにくいとはいえ、そうした便が多くなれ ばなるほど、せっかく整備した新幹線の利便性が損なわれ、経済効果が低下しかねない。ことはいわゆる整備新幹線だけでなく、上越、東北新幹線にもかかわるのだから、整備新幹線とは別枠で対策を研究できないだろうか。

 JR東は「ハード面の整備は困難」との認識を示しているが、大宮―東京の混雑解消策 については、過去にも自民党内で大宮―新宿を地下ルートで結ぶ案が取りざたされたことがある。地下工事は費用がかさむため、大宮―新宿地下ルートも「夢物語」のように語られることが多いものの、そもそも上越新幹線の計画上の起点は東京ではなく新宿となっており、新宿の地下には必要な施設を建設するための空間も確保されていると言われる。

 もちろん、大宮―東京のボトルネックを解消するための手だてはこれだけではあるまい 。二〇一〇年度に東北新幹線が新青森まで延伸し、一四年度の北陸新幹線金沢開業に続いて一五年度には北海道新幹線新青森―新函館も完成すれば、大宮―東京の状況はますますひっ迫することが予想される。そろそろ本気で対策を考えなければならない時だろう。

 北陸新幹線の効果を最大限に引き出すという観点で言えば、これも「二〇一四年」対策 の一環なのではないか。「大宮止まり」になることによるマイナスは決して小さくないはずだ。県などは「開業まで間がある」と悠長なことは考えず、同じように影響を受ける可能性がある上越、東北、北海道新幹線の沿線道県とも連携して声を上げてほしい。

◎インド同時テロ 暴力の拡散に衝撃と怒り

 東京で言えば、帝国ホテルクラスの高級ホテル群と東京駅で同時テロがあったようなも のだろう。急速な経済成長を遂げるインドで、日本人一人を含む百人以上が犠牲になった。犯人グループの一部はホテル内に立てこもっており、日本人を含む宿泊客が脱出できないでいるという。

 犯行声明などから、欧米人を狙ったイスラム過激派の犯行とみられるが、テロの拡散が 現実になったことに大きな衝撃と憤りを覚える。多くの国々が悲しみと怒りを共有し、テロの根絶に粘り強く取り組む決意を新たにするとともに、これ以上犠牲者が増えないよう祈りたい。

 インドの商業都市ムンバイで起きたテロで、犯人グループはホテル内で米国と英国のパ スポートを持つ者を探していたという。犯行声明を出した「デカン・ムジャヒディン」の、ムジャヒディンとは「イスラム聖戦士」の意味であり、米英両国に対する敵意の強さから見て、イスラム過激派の犯行との見方が有力である。

 ただ、その一方で、日本人二人が死傷し、チャトラパティ・シバジ駅でのテロでは、乗 降客に対して無差別に銃撃が加えられている。米英両国だけを狙ったテロとは言い難い側面もあり、イスラムとヒンズー教徒の宗教対立、カースト制度や貧富の差の拡大に対する反発といったインド社会特有の事情も複雑な影を落としているようにも思える。

 ムンバイでは二〇〇六年に列車が爆破され、約二百人が死亡する大規模テロが起きた。 アフガニスタンの治安悪化が隣国パキスタンの政情不安を加速させ、さらにインドへと波及しているのだとすると、事態は深刻だ。ムンバイでの同時テロの後、アフガニスタンの首都カブールの米大使館近くで、自爆テロがあった点も気になる。

 オバマ次期米大統領は、ゲーツ国防長官を留任させ、アフガニスタンでの対テロ戦争を 超党派で戦い抜くとみられる。日本も国際社会の一員として、この戦いから逃げるわけにはいかないだろう。新テロ対策特別措置法改正案の成立がますます重要になってきた。


ホームへ