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徳洲新聞2008年(平成20年)12/1 月曜日 NO.649  

修復腎移植禁止の犠牲者

昨年7月、厚生労働省は臓器移植法ガイドラインを変更、修復腎移植(いわゆる病腎移植)に対し「臨床研究として行う以外は原則禁止」とした。以来、国内での同移植は実質的に禁止されている。

そんな中、11月17日、重い腎臓病と闘っていた下西由美さん(広島県呉市在住)が48歳という若さで亡くなられた。死因は腎不全由来の不整脈。下西さんは、11年前にお父さんから提供された腎臓の移植を受けたが、3年前に機能廃絶となった。その後、腹膜透析を行いながら仕事を続けていたが、次第に病状が悪化し血液透析へと移行。日常的な貧血やかゆみなどに苦しみ再度の移植を希望していた。

しかし、生体腎、死体腎ともに提供を受ける希望はほとんどなく、修復腎移植なら助かるかもしれないと一縷の望みをかけていた。そこへきての修復腎移植の禁止だった。

これまでに修復腎移植6例を実施した広島県呉市の元主治医の光畑直喜医師(呉共済病院)は、「下西さんはこの半年、症状がどんどん悪化していた。ご本人も私も修復腎移植に最後の望みをかけていただけに、残念でならない」と語る。

下西さんは、日本移植学会の幹部などを相手取った損害賠償請求の原告団に加わる意向を示していたが、訴訟前に修復腎移植原則禁止の犠牲者となった形だ。

同じように苦しみ、救いを求める腎不全患者さんを尻目に、今も治療のために摘出された多くの腎臓が捨てられ続けている。なお下西さんの遺志で、角膜はドナーバンクへ提供されたが、そこには彼女の最期のメッセージが込められている。