時代劇で盗っ人が武家屋敷の表札を下見する場面がよくある。屋敷の主を確認する筋書きだが、実際の武家屋敷に戸々の表札はなかったといわれる 屋敷の規模や周辺の模様で当主を推測するだけだった。元厚生次官ら連続殺傷事件容疑者が「図書館の職員録で住所を調べて下見をしたが、表札の変わっていた家もあった」と供述しているので思い出した話である 昨今の風潮からいえば「表札」は決定的な個人情報だ。何が標的になるか分からない凶行が続くと、表札を外す家も出てくるのではなかろうか。藩政期の武家より警備強固な、番地だけの街にならないように祈る 図書館で調べた職員録も話題になっている。官庁職員録は時がたてば歴史資料になる。悪用されたのを理由に非公開となれば影響は大きい。図書館の役割を変えることにもなりかねない 個人情報が秘匿される一方、おぞましい犯行声明は堂々とメールで広がる。人のつながりを拒絶する者が自分の言いたいことは押しつける。住みにくい社会を増幅させる犯罪を心から憎み、身勝手な犯行に振り回されない覚悟と余裕を持ちたい。
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