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なぜ目覚まし時計の直前に目が覚める?

2006年03月20日

 「明朝、6時に起きないと出張先の会議に間に合わない」「明日はゴルフに行くから、5時に起きなければ」――。緊張しつつ眠りについた翌朝、なぜか目覚まし時計が鳴る5分ほど前にはっと目が覚めた経験はないだろうか。いつもと違う起床時間なのに、どうして正確に目が覚めたのか、疑問に思った人もいるだろう。



 実は、体内のさまざまな代謝にかかわる複数のステロイドホルモンは、起床時間のちょうど1時間前に血液中の濃度がピークを迎えることが知られている。起きなければならない時間がいつもよりずれる場合、一時的にステロイドホルモンの血中濃度のピークもずれる。そして、起きたい時間にきちんと目が覚めるというわけだ。



約24時間周期で生活リズムを調整



 こうしたホルモンの経時的な濃度変化を調節しているのは、われわれの体内に組み込まれた「体内時計」だ。これまでの研究で、体温や血圧、ホルモンの分泌量などが、約24時間の周期で波のように上下していることが明らかになっている。体内時計は、約1日周期で、睡眠、運動、食事といったすべての生活リズムを調節している。



 体内時計のおおもとは、脳の奥にある「視交叉上核」にある。これは、左右の目の後ろから出ている視神経が、頭蓋骨の真ん中あたりで交叉する場所のすぐ上に当たる。この場所には神経細胞が集まっており、昼間は活発に活動し、夜はあまり活動しないという特徴がある。この部分を壊すと、ホルモンの分泌量など、あらゆる日内変動がなくなり、昼と夜の区別も消えてしまうことが知られている。



 この場所にある細胞一つ一つの中で、「時計遺伝子」と呼ばれる特殊な遺伝子の発現量が、時間の変化に伴い、変わっていくことが明らかになった。この遺伝子から作られるタンパク質は、作られた後、その量が増えてくると、逆に自分を作った遺伝子に影響を与え、自分と同じタンパク質が新たに作られるのを抑える方向に働く。タンパク質が一定量以上に増えず、また、減りすぎないよう自らコントロールしながら、リズムを作り出していると考えられている。



 また、研究が進むにつれて、体内時計がわれわれの中に複数あることも明らかになってきた。脳の中にたくさんあることが最初に分かり、続いて、心臓などの臓器の中にもあることが確認された。



 現在は、脳にある“親分”格の体内時計と、その影響を受けつつも別物の“子分”格の体内時計が体中にあると考えられている。親分格の体内時計は、ほぼ24時間で一回りする置時計型をしており、子分格の体内時計は、数十分程度までの短時間のリズムを担う、例えれば砂時計型をしている。脳内で1秒、1分など短時間を予測し、それを信号として伝えるのが主な役割とみられている。



いつもと違う起床には“砂時計型”体内時計が関与



 砂時計型の体内時計は、長期間のリズムは作れないため、置時計型の体内時計の影響を受けている。ただ、置時計型の体内時計は、ずっと真っ暗な部屋にいるなど、時間の経過を分からないようにしても大して変動しないのに対し、砂時計型の体内時計は細かく変動するのが特徴だ。これは、食事の時間に合わせて消化管を動かすなど、臓器別に細かい調整を行うためとみられている。



 毎朝、決まった時間に目が覚めるのは、置時計型の体内時計によるものだが、いつもとは違う時間に起きる場合は、砂時計型の体内時計が大きくかかわってくる。もともと、砂時計型の体内時計は、体内の臓器をいつもの生活リズムに合わせて準備させ、適切に活動させる働きがある。このため、起きなければならない時間の少し前に起床を“予測”して目が覚めると考えられている。



(小又 理恵子=健康サイト編集)



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