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【主張】クロマグロ 「魚食文化」を取り戻そう

2008.11.27 03:10
このニュースのトピックス主張

 地中海の入り口に位置するモロッコのマラケシュで8日間にわたって開かれていた「大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT(アイキヤツト))」の特別会合が終わった。

 日本から遠く離れた海域での漁獲枠や資源管理について協議する会議だったが、国内での注目度は高かった。理由は対象魚種が国内で最高級とされるクロマグロであるからだ。

 会合では、東部大西洋と地中海でのクロマグロの漁獲枠を現行からさらに約2割減らすことが決まった。ひとつの前進である。

 ICCAT科学委員会は、約5割減を勧告し、日本と米国はそれを支持していた。結果は理想水準には達しなかったが、削減に難色を示していた欧州連合(EU)や地元の地中海沿岸国も納得しての決定であることを評価したい。

 今回の削減決定で今後、日本の消費者の口に入るクロマグロの値段が少し高くなる可能性もある。しかし、長期的には同海域での資源回復につながる措置であることを忘れてはならない。

 東部大西洋と地中海のクロマグロは、乱獲によって危機的な水準にまで減っているのだ。北太平洋には別の系統のクロマグロが分布する。一本釣りで漁獲する青森県大間の産も有名だ。

 日本を含む北太平洋の資源は、中位の横ばい状態に保たれているのに対し、大西洋の資源は、希少な野生生物を保護するワシントン条約の対象種とされかねないほどの状態だ。

 その過大な漁獲圧のかなりの部分は、世界一のクロマグロ消費国・日本への輸出が関係している。それに加えて近年は、欧米諸国での健康志向の和食ブームを背景としたマグロビジネスの台頭もあり、圧迫の一因となっている。

 ところで、日本国内での魚の食べられ方はどうだろう。若年層を中心に国民が魚を食べなくなっている。魚食文化が世界的な長寿を支えてきたと考えられているだけに、非常に気になる傾向だ。

 魚離れの原因の一つには「調理の面倒さ」もあるようだ。魚食文化が衰退していく中で、マグロが高い人気を保ち続ける理由は何だろう。高級感のある食味としてだけでなく、切り身で売られている手軽さが根強い消費を支えているとしたら、寂しいことである。

 東部大西洋のクロマグロの漁獲枠削減を契機として、賢明な魚介類の消費のあり方を考えたい。

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