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【主張】財政再建 国民に安心与える道筋を
来年度予算編成に関する財政制度等審議会の建議(意見書)がまとまった。先の「生活対策」の財源問題に懸念を示すとともに、財政再建に向けた税制「中期プログラム」の具体化と実行を求めている。
定額給付金2兆円を含めた「生活対策」の財政措置5兆円は今年度第2次補正予算案に盛り込まれる。建議が補正に言及するのは異例で、それだけこの財源問題に強い懸念があるのだろう。
麻生太郎政権は財源について赤字国債に頼らないとし、財政投融資特別会計の積立剰余金を使うという。だが、これは法的に国債償還に充てる財源であり、実質的に赤字国債発行と同じになる。建議が「臨時・特例的」とくぎを刺したのは当然である。
こうした財政規律の緩みは地方対策や社会保障などあらゆる分野に及んでいる。とくに「骨太の方針2006」で示した財政再建目標の揺らぎは深刻である。
歳出・歳入一体改革による2011年度の基礎的財政収支黒字化目標を達成するには、今夏の試算で最大の歳出削減を行っても3・9兆円の増税が必要だった。米金融危機の影響による税収減に総選挙に向けた歳出圧力が加わると、大増税が不可避となる。
こうしたことから、与党内には目標先送り論まで出ている。建議がこの目標維持を求めると同時に、2010年代半ばの債務残高対GDP(国内総生産)比引き下げという第2段階の目標と密接にからむ「中期プログラム」に言及したことに注目したい。
「生活対策」に盛られた中期プログラムは、年末までに策定する社会保障の安定財源を確保するための消費税を含む税制抜本改革の道筋のことだが、どこまで具体化されるのか不透明だ。建議も求めたように、確かな道筋策定と実行の担保は極めて重要である。
また、道路族や地方が財源分捕り合戦を展開している道路特定財源の一般財源化でも、あくまで国の財政健全化に沿うべきだとし、巨額の積立金を有する雇用保険では税負担削減を提言している。もはやこうした既得権益が許されないことは言うまでもない。
麻生政権にとって大事なのは目先の景気対策だけにとらわれず、社会保障の安定財源確保と財政再建の道筋をどう具体化するかだ。それが国民の安心と成長を支えることを忘れてはならない。