国土交通省が策定する道路中期計画の基礎となる交通量の新たな将来推計がまとまった。これまで交通量は2020年までは増えると見込んでいたが、人口減少などを背景に今後微減に転じる見通しになった。需要予測が下方修正されたのだから、道路予算は抑制し、経済効果が大きい事業に重点化すべきだ。
国交省が昨年末にまとめた中期計画は、交通量が右肩上がりに伸びる前提で10年間に59兆円もの事業費を見込んでいた。しかし、算定の根拠となるデータが古いことが判明し、将来推計から見直し、中期計画も作り直すことになった。
新たな推計では20年時点の交通量が05年実績よりも1.7%減る。従来の20年段階の予測値と比べると13%減だ。人口が減るうえ、軽自動車の保有者が相対的に増えたことで移動距離が短くなった点が主な要因だ。建設路線を選ぶ基準となる走行時間の短縮効果などについても、従来よりも厳しく算定する。
これまで、東京湾アクアラインのように水膨れした利用予測をもとに巨額の資金を投じる道路が少なからずあった。この点からみても今回推計値を改定したのは当然だ。今後、さらに厳しく見直してほしい。
政府は09年度から道路特定財源の全額を一般財源化する方針を閣議決定している。08年度でみると、5兆4000億円の財源のなかで一般財源は1900億円程度とわずかだ。今後交通量は伸びないのだから道路予算は中長期的に削減し、環境対策や通信インフラの整備、福祉などに大胆に振り向けるべきだろう。
道路予算の内容も吟味してほしい。経済効果からみれば、最優先で整備すべきなのは首都圏など大都市部の環状道路である。地方では全線開通が間近な路線に重点的に配分すれば地域経済への波及効果が大きくなる。老朽化で耐震性に問題がある橋りょうの補修も必要だ。
自民党の道路族の間では、景気対策として道路予算の維持・増額を求める声が出ている。税財政面からの景気てこ入れ策は確かに必要だろうが、バブル経済崩壊時の対策のように、通行量が極端に少ない道路までつくられてはたまらない。
「道路特定財源から1兆円を地方に回す」という麻生太郎首相の発言をきっかけに、政府や自民党内では地方への配分額やその方法を巡る駆け引きも続いている。地方に配るお金は使い道ができるだけ自由な方が望ましいが、まずは国が手がける道路事業を絞り込み、権限と併せて財源を地方に移すことが重要だ。