政府の財政制度等審議会財政制度分科会が26日、09年度予算編成への建議をまとめ、中川昭一財務相に提出した。辛口で知られる財政審建議だが、今回は、政府・与党の施策への理解が目立つ。なかでも、特別会計の積立金を一般会計の財源に流用することを緊急避難策として容認した点は、問題が残る。
世界は金融・経済危機に直面している。日本も景気が後退局面に入っており、中小企業や家計へのテコ入れが必要なことでは、与野党ともに意見の相違はないはずだ。
そこで、何が重要かといえば、本当に必要な施策を、最も効率的に実施することである。財政規律の維持や財政健全化策の推進は当然の前提である。
すでに行われている個別分野の事業見直しに代表される歳出改革は、継続されなければならない。同時に、歳出改革と言うのであれば、経済社会的ニーズの変化を踏まえた横断的な経費の見直しが欠かせない。
この点で、同建議は従来型の歳出区分で議論している。この枠を破ることなしには、歳入が厳しい中で、真に必要な事業に思い切った予算を割くことは不可能である。財政審は一歩、二歩ではなく、三歩も四歩も前に出なければならない。
その一方で、譲ってはならない一線もある。それは財政再建への取り組みである。いま、政府が進めている財政健全化路線は、06年夏、政府・与党で決定した歳出・歳入一体改革に基づいている。
一体改革では11年度における国・地方を合わせた基礎的財政収支黒字化を目標にしている。さらに、10年代半ばに向け政府部門の債務残高の国内総生産比率を安定させ、債務残高の減少も目指している。
この点で、財政審は最後のとりでの役割を担っている。ところが、国債残高減らしに振り向けられるべき財政投融資特別会計の金利変動準備金を定額給付金の財源にすることを、「あくまで臨時的・特例的な措置」と言い訳して容認した。財投特会などストックの取り崩しは、債務残高の縮減に充てることが政府の基本原則である。
08年度補正に続く09年度、そして、10年度と歳入不足は続く。歳出圧力は総選挙もにらみ尋常ではない。そこで、新規国債の増発額を抑止する手法として、特会の積立金の取り崩し充当が乱用されないようにするためにも、財政審は踏みとどまるべきだった。
税収が大きく落ち込む中での予算編成は、先例にしたがっている限り、行き詰まる。そこで、大胆な路線転換が必要なのだ。道路特定財源の一般財源化が好例だ。ところが、建議は一般論に終わっている。これでは予算は変わらない。定額給付金も追認した形だ。
憎まれ役をやめた財政審に存在意義はない。
毎日新聞 2008年11月27日 東京朝刊