国内で新型インフルエンザの患者が発生し、流行が広がっていく場合、どんな対応を取ればいいのか。感染拡大を防ぐ新しい対策の指針案を、厚生労働省の専門家会議がまとめた。
世界のどこかで発生すれば、国内への侵入は避けられないといわれる新型インフルエンザ。国民全体の四分の一が感染し、入院患者は二百万人、最大六十四万人が死亡すると推計されている。
これまでの国の対策は、早期の封じ込めに主眼が置かれていた。新しい指針案は、流行が広がった場合についても、健康被害や社会・経済への影響を最小限にするための具体策を示している。地域や職場の取り組みにも踏み込んだ点は評価できよう。
なかでも注目されるのは、人から人への感染が明らかになった「国内発生初期」の対応だ。一人でも患者が確認されたら、原則としてその都道府県内にあるすべての学校や幼稚園、保育所を休みにすることを盛り込んでいる。
インフルエンザのウイルスは、せきやくしゃみでまき散らされる。大勢の子どもが一カ所に集まる学校から地域全体へ、感染が広がりやすい。となれば、この段階での一斉閉鎖という異例の措置もやむを得まい。
患者数がさほど多くない「感染拡大期」までは、病状にかかわらず入院を勧告される。
流行が進んだ「まん延期」になると、軽症患者は自宅での療養を勧められる。一部の人は自宅での電話診療の形になる。
対象になるのは慢性疾患などで定期受診している患者。かかりつけ医との電話で感染していると診断されれば、タミフルなど治療薬を処方してもらえる。医療機関に患者が殺到して混乱するのを食い止める狙いもあるようだ。
その一方で、軽症者が入院できなくなることに懸念の声も出ている。重症者への入院治療を最優先するためとはいえ、不安を抱く人も多いに違いない。
第一線の対策を担う自治体の温度差も気に掛かる。国の指針を受けて、地域の体制づくりを進めるのは都道府県だ。島根県のように、いち早く具体的な行動マニュアルを策定して訓練に取り組んでいるところもある。
国の示す行動計画や指針に法的な強制力がないことも、現場での備えがなかなか進まない一因になっているという。迫りくる危機に対して、迅速な対応が取れるようにするためにも、国がリーダーシップをとり、地方と一体となって進めることが求められる。
|