荒尾市は26日、累積赤字が県内の公営病院では最多の41億円に膨らんでいる同市民病院の改革計画を発表した。市が特例債を発行するなどして、累積赤字のうち、金融機関から借り換えを繰り返している「不良債務」21億円を7年間かけて解消する。
特例債は本年度中に14億円分を発行し、2009年度に同病院事業会計に補てん。「不良債務」の残り7億円は2013‐15年度、収益改善で生み出した利益で解消する。
国は本年度に限り、市町村の特例債発行を認めており、市は「病院が赤字経営を続ける中で改革に踏み切る資金として必要だった」と説明する。
同時に市から事業管理者に権限の一部を移す「地方公営企業法の全部適用」を同病院に適用。市から人事権と予算権を同病院に移し、コスト意識の向上などを図る。
同病院は小児科など17の診療科があり、病床は274床。
今回の改革について、市は「診療態勢の縮小など利用者に迷惑をかけることは考えていない」(吉永一夫・副市長)としている。
■乏しい財源の裏付け
【解説】荒尾市が示した市民病院の改革計画は、財政面の裏付けに乏しく、医師不足で収益が減った病院の“処方せん”となるか疑問が残る。一般会計からの繰り入れが続けば、市民生活への影響は避けられない情勢だ。
特例債は通常の市債より、国の交付金で補てんされる割合が高いとはいえ、市は2009‐15年度、毎年3億円以上の新たな財政負担を抱える。市の貯金に当たる基金(約14億円)は単純計算で13年度には底をつく。
市民病院の累積赤字が膨らんだのは常勤医が不足し、入院患者が減少したのが原因。市は医師を4人程度増やし、収益改善につなげたい考えだが、全国的に医師は不足しており「確保できるかは微妙」(市幹部)だ。
特例債が累積赤字の“先送り”に終われば「病院の独立行政法人化などの検討も必要」(総務省地域企業経営企画室)となる。地域医療はどうあるべきか。経営改革の一方で、市にはこの本質的な命題が突きつけられている。 (荒尾支局・首藤厚之)
=2008/11/27付 西日本新聞朝刊=