エメラルドグリーンの海、生い茂る亜熱帯植物、そして、ゆったりと暮らす人々…。沖縄の光景が目の前に浮かんでくるようでした。十一月三日、倉敷市芸文館で開かれたコンサート「琉球の宴」を堪能しました。
公演したのは、沖縄の島唄の歌い手・玉城貞子さん(61)。玉城さんは沖縄県本部町出身。結婚を機に倉敷市に住み、沖縄の伝統音楽を伝えながら沖縄と岡山の交流を図っておられます。
沖縄といえば、私にとって昔からあこがれの地。中学一年の時、那覇在住の同学年の女子生徒と文通を始めました。当時はまだ日本への返還前で、封筒に張られていたのは米国切手。衝撃でした。そして、大学卒業前に初めて沖縄を訪ねましたが、異国情緒に浸る一方、広大な米軍基地に複雑な感情を抱かざるを得ませんでした。
今回のコンサート前、ちょうど「沖縄イメージを旅する」(多田治著)という本を読んだのです。そこで、沖縄が薩摩藩の支配時代からこれまで、いかに本土側の論理に翻弄(ほんろう)されてきたかを系統立てて知ることができました。沖縄の歴史や旅行の思い出をたどりながらコンサートを聴いていると、とても感慨深いものがありました。
玉城さんには、今後も「沖縄のこころ」を広めていってほしいです。さて、前述の文通相手とは十年余り手紙のやり取りを続け、ついに会いましたが、何となくそれっきり。手紙のイメージと全く違っていたからでしょうか!? というわけで、私は玉城さんのように沖縄と岡山の橋渡し役にはなれませんでした。
(読者室・下谷博志)