寒さが本格化してきた。経営危機に直面した米自動車大手三社(ビッグスリー)の首脳には、ひときわ寒風が身に染みているに違いない。
ビッグスリーの救済をめぐり、公的資金を投入するかどうかで米議会が揺れている。救済法案の採決は十二月に先送りされ、混迷の度は一段と深まりそうだ。
救済劇の成り行きは世界の注目を集めているが、先日開かれた救済法案を審議する議会の公聴会をテレビで見ていて「おやっ」と思うことがあった。経営難の原因を聞かれた首脳が、事業計画や長期戦略の誤りではなく、今回の金融危機にあると強調していた点だ。
果たしてそうだろうか。三社の不振は今に始まったことではない。数十年も前から燃費の悪さや環境対応の遅れなどが指摘され、客離れが進んでいた。金融危機は駄目押しになっただけだろう。
経営の神様と呼ばれたパナソニック創業者・松下幸之助さんの著書に「経営のコツここなりと気づいた価値は百万両」という本がある。さまざまな経験を踏まえ、行き詰まりの原因はほぼ百パーセント自分にあり、外部にあるものではないと指摘する。
松下さんは「好況よし、不況さらによし」とも説く。不況は自らを戒め、商売の本道を歩む好機だとする。ビッグスリーの首脳に読ませたい本である。