ペルーの首都リマで開かれていたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が、金融危機の克服や貿易自由化での協力に合意して閉幕した。危機の深刻さを背景に、参加国は結束をうたい上げた。
採択された首脳宣言には「世界貿易機関(WTO)新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)の迅速かつ野心的でバランスの取れた妥結を支持」との文言が盛り込まれた。金融危機が実体経済に悪影響を及ぼしてきただけに、自国の産業を守ろうとする保護主義の台頭が懸念される。市場が閉じられれば、世界経済は活力を失いかねない。韓国の李明博大統領は「奇跡と呼ばれる東アジアの経済成長を生み出したのは、自由貿易と開かれた市場だったことを忘れてはならない」と訴えた。各国首脳が保護主義への誘惑を断ち切り、自由貿易を守る決意を示したことは成果といえよう。
首脳会議はリマ特別声明も採択し、ドーハ・ラウンドの細目合意について「来月に達成することを誓約」と明記した。先の米ワシントンで開催された緊急首脳会合(金融サミット)は宣言で早期合意に向け「努力」としていたが、「誓約」に踏み込むことで強い意志を表現した。盛り上がった交渉機運によって一気に進展を図りたい。
特別声明は、関係閣僚に対して十二月にジュネーブで会合を開くよう指示した。事務レベルの協議を加速し、合意を目指す閣僚会合は十二月中旬にも開催される見通しだ。
問題はこれからだ。ドーハ・ラウンドは、七月の閣僚会合で輸出国と輸入国、先進国と新興国の対立が解けず、決裂して交渉は暗礁に乗り上げていた。特に農産品の大胆な市場開放を求める米国と反発する中国、インドは溝を深めた。状況が変わったわけではない。中国はAPEC首脳会議で早期合意の目標に反対しなかったが、発展途上国の間では保護主義政策は不可避だといった主張は多い。米国と激しく対立したインドはAPECに参加していない。先行きは不透明である。
自由主義貿易をけん引してきた米国も、オバマ次期大統領は北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しを求め、保護主義色を強めようとする。経営難に陥っている自動車最大手ゼネラル・モーターズ(GM)などの救済に力を入れるようなことになれば自由な競争が損なわれると各国の非難が高まろう。
利害調整は難しいが、何としても成果を得る努力が大切だ。再び決裂すれば、世界経済はますます混乱しよう。
北朝鮮の核問題をめぐる六カ国協議が十二月八日から北京で開催される見通しとなった。麻生太郎首相はこれに関連し、北朝鮮の核申告検証枠組みについて年内の文書化を目指す方針で米国、中国、韓国の三カ国と合意したことを明らかにした。
北朝鮮の核申告検証をめぐる六カ国協議の調整は難航しており、非核化実現の見通しは立っていない。今年七月以降、六カ国協議も休眠状態だった。
日本、米国、韓国の首脳会談などで核検証に関する合意の文書化を早期に実現させる方向で一致したことは評価すべきだろう。実効ある検証体制を厳格に進めていくことが大切である。
プルトニウム抽出量などの把握に欠かせない、核施設からのサンプル(試料)採取について、米国は十月の米朝合意で北朝鮮が応じたと説明してきたが、その後、北朝鮮は真っ向から否定する立場を表明。米朝合意の甘さが露呈した形となった。
六カ国協議では、検証方法のほか、経済・エネルギー支援と寧辺の核施設無能力化の今後のスケジュールについて協議が続けられるという。米朝が核計画申告の検証方法で十月に合意したことを文書にまとめ、六カ国が「検証議定書」の形で承認することが目標となる。
文書化を通じ、核施設無能力化などからなる「第二段階」の完了に道筋をつけられるかどうかが最大の焦点だ。しかし、北朝鮮は、サンプル採取を検証議定書で文書化することには拒否する立場を表明している。協議は難航が予想されよう。各国が連携を強化して北朝鮮を粘り強く説得していく必要がある。
六カ国協議の再開が、拉致問題をめぐる日朝協議の進展につながるかどうかは不透明だが、各国と緊密に意思疎通を図っていくことも忘れてはならない。
(2008年11月26日掲載)