2008年 11月 26日
司法判断とネットウヨ |
国籍法改正は悩ましい問題である。これを認めなければ、国内だけでもおおよそ数万人の自分の意思でなく不利益を被る子供が居ると言われている。またこれを認めると人身売買的な犯罪を誘発する恐れがなくもない。このような問題については三権分立の法治国家では裁判所が判断を下す。
わが国の最高裁判所は15人の裁判官のうち9人の賛成意見及び3人のほぼ賛成意見で現在の国籍法は、憲法の法の下の平等に反するとして違憲判決をこの6月4日にした。これに対して世のネットウヨはまるで熱湯ウヨのように国会の国籍法改正に反対の声を上げている。
(まず、応援クリックしていただければ感謝します。)
国会が国籍法を改正しようがしまいが、すでに「父又は母が日本人である子供は、国籍法の精神にしたがって日本人になれる。婚姻関係は不要」とする最高裁の判断が下っているので、父もしくは母が日本人の子供は、裁判所に訴え出れば、だれでも日本国籍が取得できるのである。
いまさら、ネットウヨたちが、何を大騒ぎして反対しているのか不思議に思っていたら、国会議員の中にも結構理解できていないのか、理解してなおかつ反対しているのか分からない面々がいる。憲法が定める三権分立の基本構造からして、憲法に適合しているか否かは最高裁判所が判断することになっている。そこで判断が下ったならば、国家機関及び国民は従わなければならんことになっている。それを否定することが許されるのなら、万人が万人に対する戦争状態になる。それぞれ主義主張が違うからだ。一番力の強いものが勝つすなわち行政軍部による恐怖政治が簡単に実現する。法律判断については最高裁の意思が尊重されなければ近代国家とはいえない。ネットウヨがプレ近代の世界に居ると非難されるのもこの辺りのバカさ加減にある。
最高裁判所の違憲判断が今年の6月に下ったのだから、粛々と国会は国籍法改正の仕事をしなければならないのである。それを否定するのならば、治安維持法なんかもすぐに作れてしまうし、行政による恐怖政治もすぐにできてしまう。国家権力が集中しないように三権分立が近代国家の統治機構の特色になっている。最高裁の違憲判決はこのため抑制的に行使されており、今まで7件しかない。それだけ違憲判決は重いものだと思う。
ネットウヨが好きな産経新聞の福島記者も次のようにブログ「北京・官邸趣聞博客」で書いている。以下、引用させていただく。
■現行法に違憲判決が下された場合、これはサクサク法改正をせねばなりません。現行の国籍法では、外国人女性が日本人男性との間にもうけた子に日本国籍を取得させる場合、①出生前に、父親(日本人男性)が「自分の子」と認知すること。②もし認知する前に子供が生まれた場合は、両親の婚姻関係と出生後認知の両方が日本国籍取得の必須の条件となることが定められています。しかし、この②の両親の婚姻条項が、違憲にあたるとして、改正案ではこの婚姻条項が削除され、父親の認知のみで日本国籍が与えられるようになります。
■しかし、父親の認知だけで日本国籍が取得できるなら、中には日本人男性などに違法に認知料を払って国籍を買おうとする輩もでてきましょう。日本の国籍は末端市場価格で200万~300万円くらいでしょうか。え?国籍って売買できるの、という方。できるそうです。そういう闇マーケットがありブローカーが存在するのは確かです。実は、命も臓器も子供も女性も売買されている。直接潜入取材したことはありませんが、そういう世界が私たちの知らぬところで広がっている、という情報は2段階くらい間接的に聞いています。
■で、うわさ話レベルでもうしわけないですが、伝え聞くところでは、日本の国籍は結構、人気だそうです。それは日本人に対する国際社会からの信用度が高い、ということでもあります。日本人はお人好しで騙しやすく、礼儀正しく、清潔。諸外国の入国審査で一番警戒されないのは日本パスポート所持者、観光客ならノービザで入国できる国も多い。(もっとも、その信用の高さもちょっと昔の話ですがね)。もう一つは、出稼ぎ場所としても魅力的な日本の国籍を子供に取得させることで、外国人の母親も合法的残留資格を得ることができる。
■で、今までは擬装国際結婚という形での国籍売買ビジネス、残留資格売買ビジネスが主流でしたが、これからは擬装認知という形の国籍売買ビジネスが増えるのではないか、というのが、今回の国籍法改正にともなう主な懸念なのです。
■擬装認知に対しては20万円以下の罰金、もしくは懲役1年以下、との罰則がありますが、しかし20万円程度の罰金ならあえて擬装認知をたくらむ人は減らない。実際、前エントリーのコメント欄でご紹介があったように、ドイツではホームレス男性に金を払って外国人女性が出産した子供を認知させ、国籍を取得する擬装認知が横行したことがあるとのこと。
■しかし、こういう懸念をはらみつつ、やはり日本人男性が、途上国女性との間に無責任にもうけた子供にも幸せになる権利を平等に与えてほしい、ということも、人として、女性として思うわけです。私は香港駐在時代はフィリピンが担当地域であったこともあり、日本人男性と婚外子をもうけたフィリピン女性も知っているし取材したこともありますが、フィリピン女性が日本人男性と子供をもうけて期待することはやはり、我が子が日本人の子供としての認知されることでした。それは、日本に出稼ぎに行きたいという下心もあるでしょうが、日本人は賢い、日本は文化的な国で、そういう国の子供になって、そういう国で教育をうけられれば子供も幸せではないか(本当はそうでもないかもしれませんが)と信じている部分もある。
■では、認知の条件にDNA鑑定をいれればよいではないか、科学的根拠で親子関係が証明できれば国籍を与えればいい、という意見もある。
■これは一理あるのですが、そうすると、日本人の家族観、家族法を揺るがせる可能性もあります。生みの親より育ての親、という言葉があるように、日本の家族は血統主義ではありません。血がつながっていなくても、本当の親子のように関係がはぐくまれている場合、当然、家族、親子とみなされます。相手が外国人だとしても、当事者がのぞめば別ですが、政府がDNAで親子関係を証明することを強要することは、へたをすると、プライバシーの侵害や法のもとの平等に反する違憲、と判断されることもあるかもしれません。
■血がつながっていなくとも、日本人男性が外国人女性と道ならぬ恋におち、せめてもの誠意として彼女の子(自分以外の男性が父親だとしても)を息子として認知し国籍を与えたい、ということであれば、それは、一夜の低俗な快楽の末、うっかりできた子供、あるいは女性の方が国籍ほしさに男性を誘惑して作った子供との間にあるDNAで結ばれた親子関係より濃いかもしれません。
■DNA鑑定を条件とすると、国籍ほしさに日本人男性と欲しくもない子供をつくる外国人女性が増える、そうすると望まれない子供、十分に愛情を注がれない子供が増えるという心配もでてきます。そういう子供が、すでに存在する人身売買マーケットに流される可能性も。そうでならなくても、愛情不足で、ぐれて不良になって犯罪に走る?
■私自身は日本がいい国だ、日本文化と日本語を愛し、日本人になりたい、と真に思っている人は日本人になって、日本をよりよい国にするために貢献してほしい。これからの日本がより国際化、グローバル化する過程で日本人の定義も変わってゆくしかないだろう、と思っています。日本人口が減少に転じているなか、そういった新日本人が社会・経済の新たな活力となる可能性もある。なにより、生まれた子供が不当な差別を受けたり、幸福になる権利を奪われたりしないような国であってほしい。
■いずれにしろ、国籍法改正についてはもっと広く国民に問題を提起し、さまざまな角度から議論をおこなった上でするべきだったのですよね。せめて成立するまえに、擬装認知の有効な防止策や、一旦認知された国籍が擬装とわかったときの対応について、国際人権法や諸外国の国籍法などとも比較しながら、追加の法整備ができる可能性を開くための議論を深めてほしいものです。
以上、引用が長くなって申し訳なかったが、右寄りと言われる産経新聞の記者の福島官邸番記者は、ついこの間まで北京に居てそのブログが人気で小生も時々読ませてもらっていたが、さすがにプレ近代のネットウヨより頭脳構造がよほどポスト近代に向かっている。違憲判断が下った法律の改正に何が何でも反対と言うのではない。 中国の57兆円の景気対策のウラを取ろうとされているブログの内容などその真摯な姿勢に頭が下がる。
小生も同様に悩ましい面があるが、社会問題や歴史には100パーセント良いとか悪いとかいうものはあまりない。利害が衝突し矛盾し複雑なものなのである。「日本は悪くないんです」なんてタモガミ氏のように幼稚なことを言ってはいけない。国籍法改正にしてもそうである。矛盾する利害や問題を最終的に決着するのが裁判所である。竹島問題でも国際司法裁判所に提訴しようとネットウヨはよく言っているが、国内問題の国籍法改正については、裁判所のさの字も言わないのがネットウヨのご都合主義である。
←「クリックしていただけると励みになります。お願いします。」
注記:ここで言うネットウヨとは、グローバル化し,複雑化していくポスト近代に乗り遅れ、付いて行けない人々が,そのフラストレーションを陳腐で幼稚な嫌中,嫌韓のトンデモ本などに不満解消を求め、ネット社会において夥しく繁殖し、トンデモ史観を振り回し、欧米アジアからの日本人はプレ近代で偏狭な歴史修正主義であるという反日の契機を与え、結果的に日本国の国益を害する人たちのことを言う。
◆人気ブログランキングへ参加しています◆
クリックしていただければ感謝、感激します。
タイではスワナンプーム国際空港が閉鎖されていると言う。小生は昨年この超近代的な空港ビルに降りて、バンコクからビルマ攻略のために旧日本軍が設営した泰緬鉄道を見にカンチャナブリまで行った。クワイ川に架かる鉄橋を渡る旧泰緬鉄道の旅を数時間楽しんだ。映画にもなった英軍捕虜を酷使して造ったこの鉄路には、景気のいいロシアや中国からの観光客が日本人よりも多いくらいだったが、観光立国のタイも空港を閉鎖されたら、影響が大きいことだろう。





わが国の最高裁判所は15人の裁判官のうち9人の賛成意見及び3人のほぼ賛成意見で現在の国籍法は、憲法の法の下の平等に反するとして違憲判決をこの6月4日にした。これに対して世のネットウヨはまるで熱湯ウヨのように国会の国籍法改正に反対の声を上げている。
(まず、応援クリックしていただければ感謝します。)
国会が国籍法を改正しようがしまいが、すでに「父又は母が日本人である子供は、国籍法の精神にしたがって日本人になれる。婚姻関係は不要」とする最高裁の判断が下っているので、父もしくは母が日本人の子供は、裁判所に訴え出れば、だれでも日本国籍が取得できるのである。
いまさら、ネットウヨたちが、何を大騒ぎして反対しているのか不思議に思っていたら、国会議員の中にも結構理解できていないのか、理解してなおかつ反対しているのか分からない面々がいる。憲法が定める三権分立の基本構造からして、憲法に適合しているか否かは最高裁判所が判断することになっている。そこで判断が下ったならば、国家機関及び国民は従わなければならんことになっている。それを否定することが許されるのなら、万人が万人に対する戦争状態になる。それぞれ主義主張が違うからだ。一番力の強いものが勝つすなわち行政軍部による恐怖政治が簡単に実現する。法律判断については最高裁の意思が尊重されなければ近代国家とはいえない。ネットウヨがプレ近代の世界に居ると非難されるのもこの辺りのバカさ加減にある。
最高裁判所の違憲判断が今年の6月に下ったのだから、粛々と国会は国籍法改正の仕事をしなければならないのである。それを否定するのならば、治安維持法なんかもすぐに作れてしまうし、行政による恐怖政治もすぐにできてしまう。国家権力が集中しないように三権分立が近代国家の統治機構の特色になっている。最高裁の違憲判決はこのため抑制的に行使されており、今まで7件しかない。それだけ違憲判決は重いものだと思う。
ネットウヨが好きな産経新聞の福島記者も次のようにブログ「北京・官邸趣聞博客」で書いている。以下、引用させていただく。
■現行法に違憲判決が下された場合、これはサクサク法改正をせねばなりません。現行の国籍法では、外国人女性が日本人男性との間にもうけた子に日本国籍を取得させる場合、①出生前に、父親(日本人男性)が「自分の子」と認知すること。②もし認知する前に子供が生まれた場合は、両親の婚姻関係と出生後認知の両方が日本国籍取得の必須の条件となることが定められています。しかし、この②の両親の婚姻条項が、違憲にあたるとして、改正案ではこの婚姻条項が削除され、父親の認知のみで日本国籍が与えられるようになります。
■しかし、父親の認知だけで日本国籍が取得できるなら、中には日本人男性などに違法に認知料を払って国籍を買おうとする輩もでてきましょう。日本の国籍は末端市場価格で200万~300万円くらいでしょうか。え?国籍って売買できるの、という方。できるそうです。そういう闇マーケットがありブローカーが存在するのは確かです。実は、命も臓器も子供も女性も売買されている。直接潜入取材したことはありませんが、そういう世界が私たちの知らぬところで広がっている、という情報は2段階くらい間接的に聞いています。
■で、うわさ話レベルでもうしわけないですが、伝え聞くところでは、日本の国籍は結構、人気だそうです。それは日本人に対する国際社会からの信用度が高い、ということでもあります。日本人はお人好しで騙しやすく、礼儀正しく、清潔。諸外国の入国審査で一番警戒されないのは日本パスポート所持者、観光客ならノービザで入国できる国も多い。(もっとも、その信用の高さもちょっと昔の話ですがね)。もう一つは、出稼ぎ場所としても魅力的な日本の国籍を子供に取得させることで、外国人の母親も合法的残留資格を得ることができる。
■で、今までは擬装国際結婚という形での国籍売買ビジネス、残留資格売買ビジネスが主流でしたが、これからは擬装認知という形の国籍売買ビジネスが増えるのではないか、というのが、今回の国籍法改正にともなう主な懸念なのです。
■擬装認知に対しては20万円以下の罰金、もしくは懲役1年以下、との罰則がありますが、しかし20万円程度の罰金ならあえて擬装認知をたくらむ人は減らない。実際、前エントリーのコメント欄でご紹介があったように、ドイツではホームレス男性に金を払って外国人女性が出産した子供を認知させ、国籍を取得する擬装認知が横行したことがあるとのこと。
■しかし、こういう懸念をはらみつつ、やはり日本人男性が、途上国女性との間に無責任にもうけた子供にも幸せになる権利を平等に与えてほしい、ということも、人として、女性として思うわけです。私は香港駐在時代はフィリピンが担当地域であったこともあり、日本人男性と婚外子をもうけたフィリピン女性も知っているし取材したこともありますが、フィリピン女性が日本人男性と子供をもうけて期待することはやはり、我が子が日本人の子供としての認知されることでした。それは、日本に出稼ぎに行きたいという下心もあるでしょうが、日本人は賢い、日本は文化的な国で、そういう国の子供になって、そういう国で教育をうけられれば子供も幸せではないか(本当はそうでもないかもしれませんが)と信じている部分もある。
■では、認知の条件にDNA鑑定をいれればよいではないか、科学的根拠で親子関係が証明できれば国籍を与えればいい、という意見もある。
■これは一理あるのですが、そうすると、日本人の家族観、家族法を揺るがせる可能性もあります。生みの親より育ての親、という言葉があるように、日本の家族は血統主義ではありません。血がつながっていなくても、本当の親子のように関係がはぐくまれている場合、当然、家族、親子とみなされます。相手が外国人だとしても、当事者がのぞめば別ですが、政府がDNAで親子関係を証明することを強要することは、へたをすると、プライバシーの侵害や法のもとの平等に反する違憲、と判断されることもあるかもしれません。
■血がつながっていなくとも、日本人男性が外国人女性と道ならぬ恋におち、せめてもの誠意として彼女の子(自分以外の男性が父親だとしても)を息子として認知し国籍を与えたい、ということであれば、それは、一夜の低俗な快楽の末、うっかりできた子供、あるいは女性の方が国籍ほしさに男性を誘惑して作った子供との間にあるDNAで結ばれた親子関係より濃いかもしれません。
■DNA鑑定を条件とすると、国籍ほしさに日本人男性と欲しくもない子供をつくる外国人女性が増える、そうすると望まれない子供、十分に愛情を注がれない子供が増えるという心配もでてきます。そういう子供が、すでに存在する人身売買マーケットに流される可能性も。そうでならなくても、愛情不足で、ぐれて不良になって犯罪に走る?
■私自身は日本がいい国だ、日本文化と日本語を愛し、日本人になりたい、と真に思っている人は日本人になって、日本をよりよい国にするために貢献してほしい。これからの日本がより国際化、グローバル化する過程で日本人の定義も変わってゆくしかないだろう、と思っています。日本人口が減少に転じているなか、そういった新日本人が社会・経済の新たな活力となる可能性もある。なにより、生まれた子供が不当な差別を受けたり、幸福になる権利を奪われたりしないような国であってほしい。
■いずれにしろ、国籍法改正についてはもっと広く国民に問題を提起し、さまざまな角度から議論をおこなった上でするべきだったのですよね。せめて成立するまえに、擬装認知の有効な防止策や、一旦認知された国籍が擬装とわかったときの対応について、国際人権法や諸外国の国籍法などとも比較しながら、追加の法整備ができる可能性を開くための議論を深めてほしいものです。
以上、引用が長くなって申し訳なかったが、右寄りと言われる産経新聞の記者の福島官邸番記者は、ついこの間まで北京に居てそのブログが人気で小生も時々読ませてもらっていたが、さすがにプレ近代のネットウヨより頭脳構造がよほどポスト近代に向かっている。違憲判断が下った法律の改正に何が何でも反対と言うのではない。 中国の57兆円の景気対策のウラを取ろうとされているブログの内容などその真摯な姿勢に頭が下がる。
小生も同様に悩ましい面があるが、社会問題や歴史には100パーセント良いとか悪いとかいうものはあまりない。利害が衝突し矛盾し複雑なものなのである。「日本は悪くないんです」なんてタモガミ氏のように幼稚なことを言ってはいけない。国籍法改正にしてもそうである。矛盾する利害や問題を最終的に決着するのが裁判所である。竹島問題でも国際司法裁判所に提訴しようとネットウヨはよく言っているが、国内問題の国籍法改正については、裁判所のさの字も言わないのがネットウヨのご都合主義である。
◆人気ブログランキングへ参加しています◆
クリックしていただければ感謝、感激します。
Tags:日本の政治