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米国の職場にいると、比較的短いサイクルで人との出会いと別れを経験することが多い。米国人は平均して、一生のうち7回転職すると言われている。先日も社歴3年の若い営業社員が、他の会社からもっと良い給料のオファーをもらったと言って、辞めていった。この社員は仕事もできて、日本人の社長は将来の幹部候補として育てていたため、裏切られたと感じたようだ。
ここで日本企業の文化と米国人社員意識との間で温度差が出る。在米といえども、日系企業だと終身雇用の慣習を引きずっており、米国人から見れば気が遠くなるほど長いスパンで物事を見る。
日本企業だと「まずは3年やらせて仕事の何たるかを理解させ、見込みがあればそれからじっくりと指導して、将来は幹部に…」といったところではないか。
米国人の場合、特にステップアップしたいと思う社員は、もっと短いスパンで判断する。会社まかせではなく、自分でキャリア目標を実現するのが当然だと思っているからだ。
米国人はまず、自分が満足できる仕事とそれに見合った給与をもらうことを最優先に考える。自分が好きそうだと思った職を得たら、できるだけ早く2、3ヶ月でマスターし、さらに自分の職務範囲を拡大することで給料もあげてもらいたいと思う。給与は社歴や年齢ではなく、職務内容とのバランスで決まる。「まずは3年やって…」ではなく、「3年以内に昇進が見えないなら、別の職にチャレンジしよう」だ。
このため、年に一度は社員一人ひとりが上司と面談し、職務内容と給与、社員の希望、会社側の期待などを具体的に話し合うのが普通だ。しかし日本人幹部の場合、この話し合いを抽象的にしやすい。「会社は将来のことも考えていますから、とにかく皆と仲良くがんばって」では、米国人社員はがんばらない。
また会社としては人材育成のつもりでも、きちんと説明することなく、給与を調整することもなく新たな職務をどんどん与えていくと、社員は会社に利用されていると感じて不満を持つようになる。
社長は辞めていく社員に対して、冗談まじりに「他の会社で良い給料がもらえるなら辞めるのも一つの考え方だが、5年後にうちに残っていた方がよかったと後悔するよ」と言っていた。昇進するのにさらに5年もかかるなら辞めて正解だったと、彼は確信していることだろう。
(片瀬ケイ)
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