専門学校辞めてから、一年ぐらいはメジャーでアレンジの仕事をやったりとか、自分のバンドのCDをインディーで出してみたりとか。で、ようやく、96年にメジャーデビューアルバムが出たんですね。27歳、もういい大人ですよね。そろそろあきらめろよ、って年齢なんですけど(笑)。そのぐらいでなんとか一枚目出せて良かったですよね。30歳になった人がやってるロックやポップスには興味が無いよって20代のころは思ってましたから。
そのころはフルタイムミュージシャンでした。「どんなに暇でも音楽しかやらない」って言ってましたね。なんかバイトが嫌いなんです。働くことが嫌いなわけじゃないんですが、時間の切り売りという感覚が嫌なんですね。たぶん怠け者の言い訳なんですけども。まあ基本社会人になってからはもうお小遣いはもらわないことにしたので(笑)、経済的に苦しい時期もあるんですけど、もう自分でやっていくしかない。それでもなんとなく音楽の仕事で食っていけたんですね。ちょっと雑誌にレコ評を書いたりとか、ライターみたいな事もやりましたけどね。
それから30歳過ぎて役者になるまでは一定のペースで曲を作っていたし、20代が大変だという思いはなかったですね。僕はお気楽な気質だと言いましたけど、たいがいのことは幸せに思えるんですよ。で、それはとっても重要だと思ってるんですね。
なぜなら、あらゆるマイナスな気持ち、諍い事とか人を懲らしめてやろうとか殺めてやろうとか、そういう気持ちは自分が不幸せだと感じるところから始まるじゃないですか。だから、誤解でも良いから現状は幸せだと感じることが重要じゃないかと僕は思ってます。「誤解でも良いから」ってことは、そう思って無いフシもあるってことなんですけどね。それも全部ひっくるめて、どっか隙間に「楽しむ」ってことを無理して詰め込んでやる。それが人生を楽しむコツだという気がするんですよ。ある意味で非常にペシミスティックなのかもしれないけれども、無理して楽しむぐらいの気概でないと楽しめないよという風に思いますね。
仕事にしても簡単にいくものはひとつもない。どっちにしろ大変なんですよ。朝早くて眠いとか、飲み過ぎて二日酔いで辛いとか、明日までにやらなきゃいけない、そういうことっていうのはどっちにしろ大変なわけじゃないですか。それを大変だと思ってやってたらつまんないので、それも楽しいという風に誤解していくのが良いんじゃないですかね。
僕は子供のときからずっとボーイスカウトやっているんです。活動にはほぼ参加できてないんですが、今でも横浜31団ボーイ隊に毎年登録し続けてるんですよ。そこに帰属しているっていう意識はずっとありますね。それは自分を律する上では非常に重要なんだろうなと思ってます。僕は、どんなことをやってても居場所は必ずあると思うんです。そういう社会でなければいけないと思うし、仲間を作るとかそういう形で居場所は作らないといけないのかもしれません。自分の居場所が確保されていると安心できる。それがあると、いけるような気がするんだよなぁ。
それに僕は、よく完全文化系みたいに見られるんですけど、ボーイスカウトでは野外でワイルドな活動をずっとやってきたし、上下関係も厳しい組織ですから、メンタルは結構体育会系なんだと思うんですよね。そのへんは自分のバランスを保つうえで重要だったんだろうな。家にこもってるだけじゃないっていう。
そこで大変なことと言えばですね、ボーイスカウトの隊長をやっていたとき、バンドをやってた20代のころでもあるんですが、前歯が欠けてた時期があるんですね。それで、親御さんに、「息子さん、最近来ないですね。何かありましたか」みたいなマジメな話をするときに、まあ説得力がない(笑)。「隊長って音楽やってるらしいよ」「歯がないよ」とかそんなんで、それが大変だったんです。そんなもんかな、大変だったっていうのは。