株式会社ワールドビジョンに対する行政処分の概要
1.事業者の概要
@ 名称:株式会社ワールドビジョン
A 代表者:代表取締役 今 西 博 章(いまにし ひろふみ)
B 所在地:大阪府大阪市北区中之島二丁目2番2号
C 資本金:5,000万円
D 設立:平成19年7月31日
E 取引形態:連鎖販売取引(取引集中型、販売あっせん)
F 商品:充電器(ハッピーチャージャー)
G 売上高:約6億円(平成19年7月〜平成20年3月)
H 主な事業内容:充電器の販売(購入代金525,000円(税込))
I 代理店数:約5千人(平成20年6月現在)
2.取引の概要
同社は、ワールドビジョン・アソシエイト・メンバー(以下「WAM」という。)と称する代理店の登録と一体として本件商品の販売を行い、本件商品の売買契約を締結した者(以下「代理店」という。)が、別の消費者に本件物品の販売のあっせんをして新たに代理店にすれば、「ボーナス」と称する特定利益を収受し得ることをもって誘引し、その者と本件物品の購入代金等の特定負担を伴う取引を行っている。
同社は当該連鎖販売取引を行うに当たり、WAMの昇格条件や報酬の仕組み等を考案し、契約状況、報酬、WAMのランク等の情報を一元管理しているほか、当該連鎖販売契約の締結の勧誘に関する説明会等を開催するなど、当該連鎖販売業を統括しており、その統括のもとに同社の勧誘者は勧誘を行っている。
WAMの7割以上(平成20年6月現在)は、同社設立当初に株式会社MMSの代理店が移行手続きをし、WAMに登録した者であった。
3.行政処分の内容と期間
(1)取引停止命令関係
平成20年11月15日から平成21年2月14日までの間(3か月間)、特定商取引法第33条第1項に規定する連鎖販売取引のうち、次の行為を停止すること。
@連鎖販売取引について勧誘を行い、又は勧誘者に勧誘を行わせること。
A連鎖販売取引についての契約の申込みを受けること。
B連鎖販売取引についての契約を締結すること。
(2)指示関係
平成20年11月15日から平成21年2月14日までの間(3か月間)、連鎖販売業に係る事業の全部又は一部を他の事業者に譲渡又は貸与しないこと。
4.取引停止命令等の原因となる事実
(1)勧誘目的等の不明示(法第33条の2)
同社の勧誘者は、その連鎖販売業に係る連鎖販売契約について、喫茶店や勧誘者の自宅等に呼び出して勧誘を行おうとする際、その相手方に対して、勧誘に先立って、「遊ぼや。」、「今始めているビジネスの話を聞いてみない。今日、午後7時からセミナーがあるから、よろしければ、会場を覗いてみない。」などと告げたのみで、連鎖販売取引の勧誘に先立って、相手方に対し同社の名称、特定負担を伴う取引についての契約の締結について勧誘する目的である旨及び当該勧誘に係る商品の種類を明らかにせずに、勧誘を行っていた。
(2)契約解除に関する事項の不実告知(法第34条第1項第3号)
同社は、契約から1年未満で充電器の引渡しを受けておらず、充電器の再販売や設置(使用)もしていない消費者からの商品販売契約解除及び返金の申出に対し、特定商取引法第40条の2第2項に従い商品販売契約を解除できるにもかかわらず、「商品を引き取ってくれ。」などと連鎖販売取引についての契約の解除を妨げるため、契約解除に関する事項について不実のことを告げていた。
また、勧誘者は、契約から1年未満で充電器の引渡しを受けておらず、充電器の再販売や設置(使用)もしていない消費者からの契約解除の申出に対し、本来は、特定商取引法第40条の2第2項に従い、商品販売契約が解除された場合は、特定商取引法第40条の2第4項に従い損害賠償等の額の上限は当該商品の販売価格の10分の1に相当する額であると告げなければならないところ、「支払ったお金は宣伝費や広告費に20万円ほどかかっているので、もし返金出来るとしても残りの30万円しか返金出来ません。」と、連鎖販売取引についての契約の解除を妨げるため、契約解除に関する事項について不実のことを告げていた。
5.勧誘事例
【事例1】
|
平成19年9月中旬、勧誘者Pは友人Aに電話をかけ、「遊ぼや。」と誘い、喫茶店へ連れて行った。 Aは喫茶店へいったところ「遊びじゃないやん。」という感じであった。喫茶店には、勧誘者Qが待っており、AとPはQと一緒のテーブルに座った。Aは、Qから書面を見せられ、ワールドビジョンが充電器の事業をやっていることや人を紹介すればお金が入るということ、充電器の利用収入からの配当金の話しを聞かされた。その間、Pから「やれ。やれ。」としきりにワールドビジョンとの契約を勧められたが、Aは、お金もやる気もなかったので契約しなかった。 その2、3日後、再びPはAを喫茶店へ誘った。喫茶店には、勧誘者が数人おり、Aは、その人たちから入れ替わり立ち替わり先日と同じように同社との契約を勧められた。Aは、Pの手前帰ることもできずうんざりしていたが、勧誘は続き、前に座った勧誘者から、申込書にサインをして下さいと言われた。さらに、Pから「お金用意しとるけん。契約せえ。」、「新しいメンバーを入れろ。とか言わないし、いちいち勧誘で動いたりするとかはないけん。そんなことはせんでええけん。一応入ってくれや。」などと言われ、Aは、しかたなく契約することにした。 |
【事例2】
|
平成19年9月、勧誘者Rは、ワールドビジョンの充電器の代理店をしないかと友人Bを誘った。Rは、商品を売るのではなくオーナーになって充電器を置かせてもらい権利収入を得ることや、自分の下に更に代理店を作ると、紹介台数に応じてワールドビジョンからお金が振り込まれることなどを説明し、Bを説明会に誘い出した。説明会で話を聞いたBは、契約してもいいかなと思い、数日後のRからの契約意思を確認する電話で、Bは契約することを了承した。 10月になり、同社と契約したことが不安になったBは、Rに電話をかけ「クーリング・オフをしたい。」と言った。しかし、BはRからクーリング・オフを思いとどまるよう説得された。10月下旬、RはBを喫茶店に呼び出した。喫茶店には、RとRの上位の勧誘者Sがおり、Bは「やっぱりやめたい。」と言ったが、Sから「もうクーリング・オフは出来ません。支払ったお金は宣伝費や広告費に20万円ほどかかっているので、もし返金出来るとしても残りの30万円しか返金出来ません。」と告げられた。 なお、Bが解除を申し出た時点では、商品は手元に届いていなかった。 |
【事例3】
|
平成19年9月、勧誘者Tは知り合いになった営業員Cに「すごく良いビッグビジネスに、今、私は経営者として参加しているんですよ。」などと告げ、説明会に誘い、説明会会場のホテルで待ち合わせをした。 Cは、説明会へ行くまでワールドビジョンの会社名や、ビジネスに参加するのにお金がかかることを聞いていなかった。 Tはその後も何度もCを説明会に誘い、結局、Cは10月上旬に契約した。契約してから、ワールドビジョンに不信を抱いたCは、契約後2か月経った頃、同社に解約通知を出した。Cは、充電器代金の90%返還を求め交渉したが、同社は、充電器を設置するために初期化等をしてしまったので、「商品を引き取ってくれ。」などと告げ、充電器の契約解除に応じなかった。Cは、再度、文書にてお金を返すよう求めたが、同社からは「充電器を返却とメンバー登録の抹消を提案する」との内容の文書が届いた。 その後、Cはワールドビジョンと話し合った際、同社から「本社で計算できるような端末の処理があり、それをしてしまっているんですよ。」と言われ、使ったことになるので、お金を返さず、商品を返す、と言うようなことを告げられた。 なお、Cは「充電器購入及びWAM登録申込書」において「商品を直接受領せず、株式会社ワールドビジョンに一時保管(3カ月間)することを希望する」にチェックを入れており、解除を申し出た時点では、商品は手元に届いていなかった。 |
【事例4】
|
平成19年12月、喫茶店で勧誘者Wは知人Dにビジネスを始めたことを話し、「もしよかったら、今始めているビジネスの話を聞いてみない。今日、午後7時からセミナーがあるから、よろしければ、会場を覗いてみない。」とセミナーに誘い、連れて行った。Wからは、ビジネスについて具体的な話はなく、会社名、充電器の話などは一切なかった。 Dは、セミナーに行き、講師からワールドビジョンや充電器の話を聞いた。セミナーの後、WはDを喫茶店に連れて行った。喫茶店にはセミナー会場にいたほとんどの人が移動してきており、喫茶店は貸し切り状態で、そこからは出にくい雰囲気であった。Dは、Wや他の勧誘者に囲まれる形でテーブルに座らされ、いきなり申込書を突きつけられた。Dは内容もよくわからないので簡単にサインも出来ず、ずっとサインを渋っていた。Wからは、充電器を購入して誰か知り合いを紹介し、その人が契約するとお金が入ることなど書類をみせながら説明された。他の勧誘者からも何度もサインをせがまれた。Dは、「興味はあるけれど、その機械を50万円を出して買うとなると、持ち帰って考えたい。」と言ったが、他の勧誘者から、「まず、サインをしてから考れば。後でクーリング・オフできるから。」などと言われた。 Dは、紹介してメンバーを増やすことが嫌なこともあり、サインを渋っていたが、別のテーブルから来た勧誘者から「一緒に仕事をやっていきましょう。」、「とにかくサインをして。そのあと、大阪に本社があり、有名なビルの中に入っているので、会社の雰囲気を見に行って。」などと勧誘が続いた。Dは、Wの手前断りづらく、結局契約してしまった。 |
【事例5】
|
勧誘者Lは、インターネット上で知り合いになった消費者Fとインターネット上のやりとりをし、「ロケーションビジネスの話をするから。」と、ホテルのラウンジで会う約束をした。Lは、Fと会うまでに、ロケーションビジネスの内容について、充電器に関することだという以外、会社名や、金銭的な負担があるということ等、業務内容の具体的なことは、一切インターネット上に書き込んでいなかった。 平成20年5月上旬、Fは、待ち合わせをしたホテルのラウンジで、Lから、ワールドビジョンの「会社案内」、「商品パンフレット」、その他新聞記事などを見せてもらいながら、同社のロケーションビジネスの話を聞いた。途中、勧誘者Mがパソコンを持って来て、パソコンを使ってもう少し詳しい説明を始めた。Fは、Mが来ることは事前に聞いていなかった。この日Fは、翌日会う約束をして帰ることにした。 翌日、FはファミリーレストランでLから、人を誘うとお金が入ることの具体的な話を聞いた。さらにLから、締め日が近づいているらしく、「その間に入れば、インセンティブがかなり高いパーセンテージで保証される。」、明日までに書類を書けば「ぎりぎり間に合う。」などと言われ、Fは、その日に契約することにした。契約後、Fは、LやLのグループの人たちから、紹介者を誘い出す場合について、「基本的に話すな。」と、アポだけセッティングするよう言われ、そのような内容を記載したマニュアルも手渡された。 |