PROFILE
堀切園健太郎
ほりきりぞの・けんたろう
平成6年入局。制作局第2制作センター(ドラマ番組)専任ディレクター。「ちゅらさん」「しあわせ色写真館」「デュアルライフ」、テレビ放送開始50年記念ドラマ「川、いつか海へ」「ハゲタカ」(イタリア賞、放送文化基金賞受賞)などテレビドラマの演出のほか、FMシアター「スモーキングタイム」(ギャラクシー賞受賞)などラジオドラマの演出も手がける。タイトルバックでは、「ハゲタカ」「川、いつか海へ」「もっと恋セヨ乙女」などを担当。
ドラマのオープニングを彩るタイトルバック。
美しい映像とドラマチックな音楽が織り成す世界は、
大河ドラマの楽しみの1つと言えるだろう。
そこで今回は、篤姫の人生を象徴する
タイトルバックの世界へご案内!
制作を担当したディレクターの解説で、
そこに描かれた“篤姫の一本道”を紹介しよう。
大河ドラマ「篤姫」(全50回)
[放送日]
毎週(日)
総合 後8:00〜8:45
BS hi 後6:00〜6:45
BS2 後10:00〜10:45
[再放送]
毎週(土)
総合 後1:05〜1:50
シルエットの篤姫も実写映像を処理したもので、収録は1日がかり。宮﨑あおいは、実際の衣装とメークで収録に臨んだ。
篤姫の人生が凝縮された世界
「コンセプトは、ドラマのキャッチコピーにもなっている“女の道は一本道”。後ろを振り返らずに前へ前へと進んでいった篤姫の人生を表現しています」
そう語るのは、タイトルバックを担当した堀切園健太郎ディレクター。
制作にあたっては、2つのことを意識して彼女の人生を2分45秒に凝縮させたという。1つは、金色を使って華やかな世界を作り出すこと。篤姫(宮﨑あおい)が徳川13代将軍・家定(堺雅人)の正室として取りしきることになる、豪華絢爛な江戸城大奥のイメージだ。堀切園ディレクターはこう続ける。
「モチーフにしているのはグスタフ・クリムトの絵画です。実はクリムトって、まさに幕末のころに生まれた人なんですよね。一説によると、彼はパリ万博に出展された日本の屏風や絵画などからも影響を受けていたそうなんですよ。それは面白いということで、クリムト調に〈篤姫〉の世界を表現できないかなと思ったんです」
金の細工がほどこされたまばゆい着物をまとい、喜びや悲しみの表情を浮かべる篤姫。それは、あるがままの思いに従っておのれの道を突き進んだ彼女の生き方そのものなのだ。
ドラマの内容が進むにつれて
見る人の印象を変えていく
そしてもう1つが、その波乱に満ちた人生をいかに抽象的に見せるかということだ。実写ではなくCG(コンピューター・グラフィックス)をベースとし、篤姫の姿をシルエットにとどめているのもそのためだという。
「全50回ですから、一度見たら何もかも具体的にわかるものではつまらないと思ったんです。シルエットだけだと想像の余地があるじゃないですか。どんな表情をしているのか、回によって違った印象に見えるかもしれない。物語がどんどん進んでいくに従って、タイトルバックの見え方が変わってきたらいいなと思っています」(堀切園)
こまやかな工夫により、見るたびに新たな印象を生む「篤姫」のタイトルバック。その世界をじっくりと味わってほしい。
タイトルバックに
こめられた思いと演出を
堀切園ディレクターが解説!
1題字「篤姫」は、「クローズアップ現代」や木曜時代劇「風の果て」のタイトルロゴも手がけた書家・菊池錦子によるもの。「女性らしいしなやかさと、篤姫のしんのある力強さ。その両方をあわせもつイメージです」と堀切園ディレクター。
2画面に奥行きを与えているゆらめく布は、染色家・吉岡幸雄の作品。「多少の加工はしていますが、基本的には本物の色。天井からつるした黄色やオレンジ、赤、紫など何色もの布に風を送り、色の重なりも生かして撮影しました」
3幼い於一(おかつ)がふと振り返ると、そこには成長して篤姫と名を変えた自分自身の姿が。「篤姫が子どものころには戻れないと思っているのかもしれないし、子どものころの彼女が未来の自分に大丈夫だよとエールをおくっているのかもしれないですね」
4篤姫の着物には、CGによりまるで金ぱくのような処理がほどこされている。これは「接吻」や「ユディトI」などで知られるオーストリアの画家、グスタフ・クリムト(1862〜1918年)の絵画をモチーフにしたもの。
5あどけない笑顔を見せる幼き日の篤姫。「ドラマの後半、御台所としての立場が彼女の足かせになっていきます。ドラマでも薩摩時代を厚く描きますが、タイトルバックでも、のびのびしていたころの篤姫を忘れないようにしたかったんです」
6「いかに抽象的に見せていくかということも1つのテーマだったので、この桜もわざと2次元で描いています」と堀切園ディレクター。篤姫が桜の舞い散る中を歩いていくこのシーンも、そのねらいを体現する一場面。
7何があったのか、篤姫の瞳から、はらりと涙がこぼれる。脚本を手がける田渕久美子が「私の篤姫は、あるがままに生きた女性」と語るように、タイトルバックでも、悲しみや喜びなど、彼女の感情がほとばしる瞬間が切り取られていく。
8幽玄でやわらかな輝きを放つのは、ドラマ前半の舞台、鹿児島にゆかりの深い薩摩切子(きりこ)。篤姫の養父となる島津斉彬が、殖産事業として作り始めた伝統工芸品だ。これを上から撮影することで、幻想的な世界を演出。
9蝶(ちょう)は篤姫であり、彼女が追い求めていたものでもある。「1つの時代が終わる幕末の退廃したイメージを表現しました」。よく見ていると、画面には異国の脅威を象徴する世界地図が出現。ドライフラワーの花びらで埋め尽くされていく。
10史書を手に、花畑にたたずむ篤姫。篤姫の読書好きは、原作である宮尾登美子著『天璋院篤姫』にも、ドラマにも描かれるエピソード。斉彬に見いだされるきっかけの1つになった。
11格子は閉ざされた空間、江戸城大奥の象徴。格子がなくなって自由の身となったとき、篤姫は一瞬桜島を振り返るが、再び前を向いて歩きだす。最後まで嫁ぎ先の徳川家存続に力を注いだ篤姫の一本道そのものだ。