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【社説】

韓国と北朝鮮 李政権は腰を据えて

2008年11月26日

 北朝鮮は、南北関係でも揺さぶり戦術を強めている。これまでの一方的な支援・交流を正すために、韓国の李明博政権は腰を据えて、公約に掲げた「相互主義」を貫いてほしい。

 南北の往来が大幅に制限されることになりそうだ。

 北朝鮮軍部は、十二月から開城観光の受け入れと南北間の貨物列車の運行を中断すると通告した。

 先には、南北軍事境界線をまたぐ通行制限の通告や南北赤十字連絡事務所の閉鎖、直通電話の遮断を行った。

 南北関係の悪化は望ましくないが、北朝鮮のいいなりに進んできた関係は、北朝鮮の独裁体制の維持強化に利用されるだけだ。

 李政権は二月の発足時から、北が核放棄をすれば経済立て直しに全面協力する「非核・開放3000」構想を掲げ、「相互主義」「双務性」を求めている。この基本方針を崩してはならない。

 北朝鮮の強硬姿勢の原因はいくつかある。“引き金”になったのは、韓国の民間団体が風船に付けて北へ散布するビラだ。

 独裁体制批判や金正日総書記の病気などが記され、北の住民に動揺を与えているといわれ、かねて韓国政府にビラ散布をやめさせるよう求めていた。

 その背景には、李政権の対北政策への反発がある。金大中・盧武鉉政権による十年間の「太陽政策」のように、無償の食料や肥料支援が受けられないからだ。

 また、米国では来年一月、対北融和策のオバマ氏が大統領に就任する。米朝関係改善を見越して、韓国に政策転換を迫り、韓国内の親北勢力を勢いづけ、李政権を揺さぶる思惑もありそうだ。

 「私は強硬派ではない。真っすぐ向き合おうとしているだけだ」

 李大統領は、先の米韓首脳会談で対北政策をこう説明した。

 金・盧政権の融和策は片道の支援・交流に偏り、結果として核実験やミサイル開発を許した。一方で、人権問題の改善や拉致問題にはほとんど言及しなかった。

 これが、北朝鮮の高圧的な対応や揺さぶり外交に自信を与えたのではないか。核や拉致問題をそのままにして、北東アジアの不安定要因であり続けている。

 李政権にとって、ここは我慢の時である。なし崩しに対北政策を手直しすれば、軍事優先の独裁体制強化に手を貸すことになる。

 また、せっかく目指した南北間に「普通の関係」を築く出直しの機会を失うことになる。

 

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