◎金沢港の利用促進 輸出企業のスクラムに期待
金沢港大水深岸壁の供用開始に伴い、コマツが旗振り役となって県内の輸出企業などに
港の利用を促す取り組みを始めたことは、民主導の港湾活用策として心強い動きである。世界的な景気後退で金沢港のコンテナ取扱量の伸びも鈍化しているが、輸出戦略の変更を迫られる今は、金沢港に背を向け、太平洋側の港に製品を運んでいた地元企業に見直しを求める好機でもある。県も民間のスクラムを後押しするような支援策を講じてほしい。
コマツは大水深岸壁をはじめ、金沢港整備の恩恵を最も受ける企業の一つであり、港湾
活用型企業のリーダーとして港の利用促進へ汗をかくのは自然なことである。金沢港の限られた船便に出荷時期を合わせるには、納期など輸出先との調整も伴うだろうが、この地域の企業が金沢港を「地元港」として使いこなす意識が広がっていかないと国際航路の維持や拡充は容易ではない。各企業が輸出計画のデータを出し合い、共同出荷の可能性を真剣に探ってほしい。
コマツは社内で金沢港活用促進プロジェクトチームを設置し、自社製品の金沢港の利用
率を高めるとともに、北陸の輸出企業に対しても連携を呼びかける取り組みを始めた。協力を求められた企業の中には前向きに検討するところもある。受注生産が中心であれば出荷調整は難しいかもしれないが、地元企業がまず輸出情報を持ち寄り、同じテーブルに着くことに意味がある。
県内に生産拠点を持つ企業が輸出の際に金沢港を積み出し港とする割合は三割に満たな
いというデータもある。名古屋や神戸など太平洋側の大型港を利用する企業にすれば、船便が安定していることや長年の取引慣行もあるとみられる。だが、輸出企業にとって国内の物流コスト削減は経営課題の一つであり、条件がそろえば金沢港を使いたいという潜在的な需要は少なくないだろう。
輸出企業の経営は不透明感を増し、金沢港の貨物需要も当面は厳しい状況が続くとみら
れるが、民間の中から出てきた「港湾経営」の発想はしぼませたくはない。行政、業界団体も一丸となって大きな取り組みに育てていきたい。
◎内閣人事局先送り 公務員改革の後退が心配
福田政権下の今年六月に施行された国家公務員制度改革基本法で一年以内に法制上の措
置を講ずると定められている「内閣人事局」の設置が来年度ではなく、一年先送りされることが濃厚になった。
各省庁の人事の一元化など、公務員改革の根幹となるのが人事局である。省庁間の調整
や自民党内の取りまとめの時間が足りないからだとされているが、縦割り行政を維持しようとする各省庁や、これと結びついて利権を守ろうとする族議員の反対が強いのが実態だろう。福田政権から引き継いだ麻生政権が放置してきたこともあり、公務員改革も後退するのではないか心配だ。
今月内に甘利明行革担当相が首相に報告、了承を求める。先送りの代わりに「改革の行
程表」を閣議決定し、改革全体を一年程度前倒しするとの考えを同相は明らかにしているが、先送りで抵抗がますます強くなるのではないか。
公務員改革基本法は今年の通常国会の終盤で自民、民主両党の妥協によって成立した。
制度設計を担う改革推進本部の有識者会議の基本的な考えでは、人事を抜本的に見直し「総合職」「一般職」「専門職」に分け、一括採用し、配属や昇進については各省庁と協議することになっている。
要するにキャリア制度の廃止、能力本位の幹部への起用のほか、定年まで勤めてもらう
ことで天下りをなくし、民間からも優秀な人材を求める。官僚と政治家との接触を制限する等々で各省庁の割拠主義を崩していく。明治時代から連綿と続いてきた制度に対する画期的な改革だ。
実現すれば、無駄遣いする天下り法人にも改革のメスが入り、はやい話が「母屋ではお
かゆをすすっているのに、離れではすき焼きを食べている」というようなことがなくなる。公務員改革基本法関係の整備に三年、改革全体に五年が見込まれているが、それくらいかかったとしても、真の意味での議院内閣制ができ、無駄が一掃され、増税なしで社会福祉に回すお金も出てくる可能性もある。後退させてはならぬ改革だ。