女性棋界に、また新たな歴史が刻まれた。倉敷市で行われた「第十六期大山名人杯倉敷藤花戦」第二局で、十六歳の里見香奈女流二段が清水市代倉敷藤花を破り、連勝で初の公式タイトルに輝いた。
倉敷藤花では史上最年少、他の公式タイトルを含めても過去三番目の若さだ。里見さんは島根県出雲市に住む高校二年生。六歳から将棋を始め中学一年で女流プロに。終盤の攻めの鋭さから「出雲のイナズマ」の異名をとる期待の星だ。
「楽しんで平常心で指してきます」。里見さんは対局を前に自身のブログにこう記していた。その言葉通り、初の公式タイトル戦や公開対局にも動じることなく積極的な攻めで追撃をかわした。
「あこがれの存在」を下しての勝利に、里見さんの喜びもひとしおだろう。清水さんも「頼もしい後輩」と若い力の台頭に女性棋界発展の期待を寄せる。
通算十回制し、倉敷藤花の顔ともいえる清水さんは倉敷を「心の古里」と呼ぶ。「ただいま」「お帰り」の関係がうれしい心休まる場だそうだ。「来年また帰ってきます」との言葉が頼もしい。
熱戦を繰り広げる女性棋士と地元やファンがともに歩み、高めてきた倉敷藤花がはぐくんだ果実でもある。棋士人生の記念すべき地は、里見さんの心にも新たな古里を描くことだろう。