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重苦しい社会に反発 「軽さ志向」メンズにも

2008年11月25日

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写真超軽量のカシミヤシルク製(ロロ・ピアーナ)

写真女物ふうな素材のジャケット。裸のダンサーの映像が軽さを際立たせる(イヴ・サンローラン)

写真写真左:袖や襟がなくパンツも短いスーツ(ラフ・シモンズ)/写真右:ジョン・ガリアーノの極薄ドレス=大原広和氏撮影

写真革や底が薄いビジネスシューズ(トッズ)=大原広和氏撮影

写真トッズのデザイナー、デレク・ラムと新作バッグ

 ファッションの「軽さ志向」が、きわまっている。来春物の新作では素材の重量はもちろん、色・柄やデザインも軽やかさが重視されている。メンズも例外ではない。ここ数年続いた傾向だが、背景には地球温暖化やエコ意識があり、また社会の重苦しさを“照射”している面もありそうだ。(編集委員・高橋牧子)

 「この服なら、トランクいっぱい分でもたったの2キロ。旅行にも最適」。カシミヤで知られるイタリアのロロ・ピアーナの広報担当者は、09年春夏の新作を前に誇らしげだ。ただでさえ軽いカシミヤをさらに細い糸にして、1グラムで長さ570メートルにもなる極細シルク糸と混ぜ、超軽量のブルゾンなどを作った。

 他の多くのブランドも、極細糸を使った羽のように軽いジャケットやコートを発表した。エルメスやボッテガ・ヴェネタは、革を極薄にそいで軽くしたコートやドレス。メンズでも、女性の夏物素材を使ったびっくりするほど軽いジャケットなどが目立つ。

 素材の軽さだけではない。仕立てでも、一重で芯地を省き、スラッシュ(切れ目)を多くして軽量化が徹底された。また、波打つフリルやフリンジのディテール、ふんわりとしたシルエットなどで見た目の軽やかさも強調されている。

 スカート丈はミニ。男性のビジネススーツでも、袖や襟を取って短パンと合わせた形が登場した。

 色は、水色やグレー、ピンクなど淡いトーンが中心。柄も薄くぼやけ、ふわふわ漂う雲や煙の模様などが出ている。

 靴やバッグも、ぐんと軽量になった。イタリアのトッズは「軽さ」をテーマに、革や底を薄くして15%軽くしたビジネスシューズや、極薄のトートバッグを並べた。新作の展示会場には雲の映像が流れていた。

 また、ジュエリーは金属を中空にして軽くした商品が主流に。時計も「デカ厚(あつ)」ブームが去り、サイズダウンと重金属の代わりにチタンやカーボン、セラミックなどを使った軽量化が進んでいる。

 下着では今年秋冬物から、「軽・薄・暖」の競争が激化。ワコールの肌着「スゴ衣」は、ピーマン2個分の重さとのアピール。ユニクロの薄くて暖かい「ヒートテック」は今年、昨年の2千万枚を超す2700万枚の売り上げを国内で見込んでいる。こちらは、値段の「軽さ」も人気の原因のようだ。

 こうした軽さは、着心地や使い勝手の良さの追求の結果であり、エコ意識の反映でもある。大きくて重い物は、輸送などでも資源を多く使う。地球温暖化が進む中で、薄くて軽い服がより求められている。トッズのデザイナー、デレク・ラムは、「軽さは快適さだけではなく、世界状況への自由で楽観的な感覚とも結びついている」と語る。

 世の話題は経済危機一色。また、テロ不安などで「監視社会」化を容認しがちな傾向も進んでいる。自由や浮遊感ともつながる「軽さ」への志向は、そうした社会の重苦しさへの、ささやかな反発なのかもしれない。

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