言論フラット化 取材現場の様子も、自らの取材対応もブログで叩かれる
ネットユーザーたちが暴き始めた「客観報道」というまやかし=佐々木俊尚
2008年11月25日(火)0時0分配信 SAPIO
掲載: SAPIO 2008年11月12日号
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ネットを見下している限りマスメディアに未来はない
このように、現在のマスメディアは、取材現場やプロセスがネットという公の空間で可視化されるという危機に晒されている。さらに危機的なのは、マスメディア自身がその危機に極めて鈍感であることだ。
これも毎日新聞の例だが、英文サイト「毎日デイリーニューズ」上のコラム「WaiWai」が長年にわたって低俗記事を配信し続けた問題では、JCASTニュース、PJニュースといったネット上のニュース媒体が毎日新聞に取材を申し込んだ。ところが、毎日新聞はなおざりな対応をしたばかりか、社長室の広報担当が「ネット媒体の取材は受けません」などと言って取材を断わった。
こうした一連の対応もそのままネット媒体で報道された。JCASTなどはYAHOO!ニュースにもリンクされているので、莫大な数のページビューがある。
マスメディアは不祥事を起こした一般企業を厳しく追及し、法令遵守と説明責任を強く求める。ところが、いざ自分が不祥事を起こすと、それとは正反対の態度を取る。その実態がネットという公の空間で公開されるようになったのである。
同様に、ネットユーザーが、マスメディアの報道内容や報道姿勢に疑問を持ち、マスメディアに問い合わせ、それに対する返答をそのままネット上で報告するケースはいくらでもある。
マスメディアの側はネットの言論をいまだに「フリーターやニートが適当なことを書いている」と見下している。
しかし、その影響力はマスメディアが想像するよりもはるかに大きい。実際、WaiWai問題では、多くのネットユーザーが毎日のサイトに広告を出稿している企業に抗議電話をかけた結果、一時はネットの広告が全てストップし、本紙の広告にも影響が出た。リアルの世界に対するネットユーザーの影響力はここまで高まっているのである。
ネットの登場、普及により、マスメディアの言論とネットの言論が等価値になり、言論のあり方がフラット化した。読者、視聴者のメディアリテラシーも格段に向上した。
だが、長年「自分たちだけが報道する権利を持つ」という特権意識にあぐらをかいてきたマスメディアは、こうした時代の変化や問題の本質を理解できないでいる。ネットユーザーを見下し、恐怖し、憎悪しているだけでは、マスメディアはますますネットユーザーから不信感を抱かれ、批判を浴びるのは当然だ。
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