2006年11月24日
大学を卒業してサン・マイクロシステムズに入社してすぐにわかったことは、Java を生み出した会社でソフトウェア開発をやろうと思って入社したのに、日本サンはソフトはほとんどやっておらず、ほぼ100%ハードウェアを販売するための会社だったということだった。
野菜を売りたくて八百屋に入ったつもりなのに、間違えて肉屋に入ってしまった。このようなときにどのように行動すればよいか?
私の同期でも同じように、ソフト開発を期待してサンに入って、入ってからハードを売る会社だと気付いてさてどうすべきかと考えている人は何人もいて、間違えて肉屋に入ってしまった私たちの反応は、主に次の3パターンに分類することができた。
1. 肉屋に入ったのだから、とりあえず肉屋を目指す
2. 八百屋への転職活動を開始する
3. 肉屋の中で野菜についての No.1 を目指す
一番多いのはパターン1の人で、入社の直前直後は熱くソフトウェア開発を語り合った同期の多くは、今ではハードウェアのスペシャリストへの道を目指している。
ラストマン戦略とは、ある所属組織内で自分が一番(最後に立っている人 = ラストマン)になれそうなポイントを見つけて、実際にラストマンになったら対象となる組織自体を大きくしていく、という自分戦略である。
例えば高校生であれば、英語を伸ばそうと思ったら、まず仲間内の何人かの中でのトップを目指す。これが実現できたら、次はクラスでトップを目指す。クラスでトップになったら市町村で、その次は都道府県で、さらにその次は国内で、といった要領で、段階的に広い範囲の中でのトップを目指していく。もし仲間内でもトップになれそうになかったら、今度は「英語」ではなく、「英語の読解」や「英語のヒヤリング」といった形で、対象分野をもっと細かく分解して目標を再設定してみる。それでもダメそうなら英語はあきらめて数学でトップを目指すことを検討してみる。
このような自分戦略に立った場合、上記の3パターンのうちまず検討してみるのはパターン3の「肉屋の中で野菜についての No.1 を目指す」になる。何せ野菜を売ろうしていたくらいなので、少なくとも野菜については肉屋より詳しかったり情熱があったりするわけだから、肉屋の中で「野菜について何か聞きたければこいつに聞け」と言われる立場まで持っていくことは比較的簡単なはずだ。
とはいえ、あくまでも「比較的」簡単なだけであって、所属組織の中で何かしらの分野でトップになるのはそれなりに困難である。私の場合には、「肉屋の中の八百屋」を目指してみてわかったのは、肉屋の中にも野菜に詳しい人がかなりたくさんいたということであった。そうなると次にやるべきことは、「野菜についてのラストマン」ではなく、「白菜についてのラストマン」あるいは「京人参についてのラストマン」と言った、より細分化された範囲でのラストマンを検討することだ。私のサンのケースでは、ソフトウェアとか、その中での Java という専門分野ではサンの中ですぐにラストマンになるのは難しそうだったので、大学時代から野村総研のバイトでかなり使い込んでいた XML でラストマンを目指すことにした。
もともと私はシリコンバレーで仕事がしたくてサンに入ったところもあったのだが、約半年後、上司や環境に恵まれたこともあり、白菜のスペシャリスト - XML に詳しいエンジニア - ということで US 本社での開発チームに配属してもらうことができた。
ラストマン戦略は仕事だけでなく様々な事柄に適用していくことができる。例えばブログを書くこと一つとってみても、いきなり有名ブログを目指してもかなり高い確率で挫折してしまうので、友達との間でブックマーク数でトップを目指すとか、会社の同僚の間での RSS 被登録数 No.1 を目指すとか、そういった段階的な目標の中で自分に自信をつけながら成長させていく。
1. 目標が低いので実現できそうだという実感が持てる
2. 低い目標でさえ実現できない場合には早めに方針転換できる
3. 目標が段階的に高くなっていくため、自信をつけながらストレスが少ない形で成長していくことができる
という3つの点がラストマン戦略の良いところだ。
もしあなたが高すぎる目標に思い悩んでいたり、八百屋に入りたかったのに間違えて肉屋に入ってしまったりしていたら、上のようなラストマン戦略が自分に当てはまらないかを考えてみよう。
肉屋で野菜のスペシャリストが活躍することで、野菜も肉も売るスーパーマーケットという新しい業態が生まれるかもしれないのだから。
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