福岡市西区の市立小学校で担任の男性教諭(51)から「アメリカ人の血が混ざっている。汚れている」などの差別的発言や暴力、自殺の強要などを受けて心的外傷後ストレス障害(PTSD)になったとして、当時の4年生の男子(14)=現在は中学3年=と両親が市に約5800万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が25日、福岡高裁であった。石井宏治裁判長は、市に220万円の支払いを命じた一審福岡地裁判決を変更し、賠償額を330万円に増額した。
控訴審はPTSDの発症と自殺を強要したかどうかが再び争点となり、男子への尋問も初めて行われた。
判決で石井裁判長は、教諭が男子に耳を引っ張るなどの体罰やいじめ行為をしたと認定したが「PTSDを発症させるような外傷体験にあたるとはいえない」と発症を否定。自殺強要の事実についても認めなかった。
一審判決は、教諭が2003年5‐6月、男子の曾祖父が米国人だと聞き、男子に対して「アメリカ人」「髪が赤い」と発言したり、男子の耳を数回引っ張ったことなどを認定。「原告に対する体罰、いじめであり、許容されない違法な行為」として市の賠償責任を認めた。
一方でPTSDの発症や自殺の強要などについては否定。一審では教諭も被告となっていたが、地裁は「公務員の不法行為の責任は地方公共団体が負う」として請求を棄却。双方が控訴した。
控訴審では、原告側が教諭への訴えを取り下げたため、教諭は市側の補助参加人として訴訟に関与、いじめはなかったと主張していた。高裁は今年2月、和解案を提示したが、成立しなかった。
=2008/11/25付 西日本新聞夕刊=