塩分摂取が慢性腎臓病に与える分子メカニズムを、東大医学部附属病院の藤田敏郎教授(腎臓・内分泌内科)らのグループが、マウスを使った実験などで解明した。腎臓病の新治療薬開発につながると期待されており、成果は24日未明、米医学系学術誌「Nature Medicine」のオンライン版で発表された。
日本国内の慢性腎臓病患者は現在、およそ400万人。このうち約27万人が透析治療を受けており、透析治療患者は毎年約1万人ずつ増えている。人工透析に掛かる医療費は、年間の医療費総額の約5%(約1兆3500億円)に達しているという。塩分の過剰摂取が高血圧を引き起こしたり、心臓や腎臓の機能に障害を与えたりすることは知られているが、その原因やプロセスについては、不明な点が多かった。
同グループはマウスを使った実験で、塩分の過剰摂取がRac1とMRを活性化させ、腎臓障害を発生しやすくすることを突き止めた。マウスにRac1の活性を阻害する薬品を投与したところ、腎障害の改善が見られた。藤田教授は「Rac1を阻害する薬は慢性腎臓病に有効だ」として、新治療薬開発に期待を寄せている。
特にメタボリック症候群の人は体内に塩分をため込みやすく、心臓や腎臓などの障害が発生しやすい傾向があるという。藤田教授は「減量するときは、カロリー制限と運動だけでなく、減塩も実行してほしい」と呼び掛けている。
【Rac1】
細胞内シグナル分子。細胞の移動、骨格形成、核内受容体の活性化などの機能を持つ。
【MR】
ミネラロコルチコイド受容体。アルドステロンの受容体であり、細胞内に存在する。
【関連記事】
・
腎臓病の早期治療を
・
溶血性尿毒症症候群、生肉に注意
・
第一三共が「生活習慣病予防サイト」開設
・
進まぬ腎移植、予防にシフト?
・
「ゲノム医学の将来」で公開シンポ